表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/18

どいつもこいつも勝手ばかり

●●この小説は読者参加型です●●

あなたは自分が何科だと思いますか?

何科の人物に登場してほしいですか?

感想に書いていただければ、できる限り登場させてみます。

四つ葉(ヨツバ)先輩。あなたの幸運は、仲間の不運に上に成り立っているんじゃないですか?」


 四つ葉先輩の笑顔がこわばった。俺はここぞとばかりに盾で連撃をくり出す。技が外れるたびに、チームメイトに異変が起きた。隼人ハヤト先輩はすっ転び、マコト先輩がメガネを落っことし、晴生ハレオ先輩はハチの群れに追いかけられる。


「ね、ねえ、優人ユウトくん……もうやめてよ……」

「女神なんて図々しい。幸運を吸い取る悪魔も同然じゃないですか」


 俺は手をゆるめない。四つ葉先輩は悲鳴を上げている。背後から高速回転の音が聞こえた。ブーメランが戻ってきたのだ。俺はすばやく後ろに飛びのいた。軌道上には、四つ葉先輩の頭がある。


 ガツン!


 ブーメランがぶつかったのは、巨大なバズーカの側面だった。隼人先輩の武器だ。四つ葉先輩をかばい、敢然と立っている。


「隼人、無茶はやめて! 英雄は生き残らなきゃ——」

「何言ってんだ、四つ葉。俺たちはみんな英雄だろ」


 隼人先輩がにかっと笑い、いかついバズーカを担ぎ直す。普通なら持ち上げるだけで腰を痛めるだろう。このあたり一帯の木々を焼き払ったのは、あのバズーカに違いない。

 そして俺と妹奈マイナを振り返った。


「さあ、二年生! 俺たちにとっては最後の体育祭だ。全力でぶつかり合おうぜ!」


 なんだよ、その求心力。俺にはできない。

 ……いや、できなくたっていい。俺はただ〝優しさ〟に特化すべきなのだから。羨ましく感じる必要はない。

 

 しかし絶体絶命であることに変わりはなかった。ゴールドチームは、三年生の聖人(セイジン)四人。対する赤チームは、うじうじ凡人(ボンジン)娘と、ついこの間まで小学生だった、にわか聖人。だめだ、勝ち目がない。そのとき——


 ニャア。


 ジャングルに似つかわしくない、愛らしい鳴き声が響いた。全員が空耳かと首をかしげる。


 ニャア。ニャア。


優男(やさお)くん、無事かー」


 がさがさと草をかき分けて現れたのは、チームメイトで気まま科の天馬(テンマ)だった。こいつ、生きていたのか。木の葉まみれの、泥だらけ。ジャージはびりびりに破れている。


「えっと、五十年くらい、ジャングル生活していたのかな?」

「おかげさまで、自由に探検できたぜー」


 探検する競技じゃねーよ。

 しかも、天馬の腕や肩、頭の上には、しま模様の小さな動物が何匹もまとわりついている。どうやら「ニャア」の正体はこれのようだ。


「おや。かわいらしい子猫ですね」


 〝真面目科〟の誠先輩が、きびきびと歩み寄る。猫好きなのか。天馬がのんびりと忠告した。


「急に近づかない方が」

「わたくし、動物愛護には賛成ですので」


 誠先輩が手を伸ばした。


 ガサガサッ。天馬の背後の茂みから、一頭の巨大なトラが歩み出た。威嚇(いかく)の目を光らせ、牙を剥き出している。誠先輩はぴたりと固まった。頬が引きつる。


「ほ、ほう。あなたはこの子たちのお母さんですか? 安心してください。わたくし、悪さなどしませんので」


 なだめながら後ずさるが、もう遅い。トラは軽々と天馬を飛び越え、誠先輩に突進した。追いかけっこが始まる。


「気まま科は、なーんか動物と通じ合う部分があるんだよなー」


 天馬は子トラを撫でながら、ひょうひょうと見守っている。確かにこいつは、人間社会よりも野生動物の群れにいる方が自然だ。三学年が死闘をくり広げている間に、すっかりジャングルの住人になったらしい。


「あはは! あれ、捕まったら食いちぎられるよな。絶対に痛そうだ」


 楽天科の晴生先輩が、あっけらかんと笑う。そのとき、茂みの奥から別の声が届いた。

 

「おたくのお兄さんって、人でなしなのお?」


 〝あざとさ科〟の杏咲(アズサ)だ。天馬に拾われ、一緒に追いついたらしい。

 妹奈がぷるぷると首を横に振った。


「お兄ちゃんは人でなしじゃないよ……究極のポジティブなの……」

「それって、時に、人でなしよりも不謹慎ねえ。お葬式とか出ない方がいいと思うわよう」


 晴生先輩が、うーんと伸びをする。その顔の真横をパチンコ玉がすり抜けていった。


「あん、外しちゃったあ」


 杏咲のジャージの袖からパチンコがのぞいていた。泣きべそ顔で妹奈を振り返る。


「妹奈ちゃん。あずのこと、嫌いにならないでえ。あずだって、お兄さんを攻撃したくてしているんじゃないんだからあ……」

「あ、まったく問題ないよ」


 妹奈の口調は、これまでで一番カラッとしていた。兄の脱落を心から願っているらしい。


 俺と隼人先輩の視線がぶつかった。隼人先輩がバズーカをかまえる。


「これで四対四。思いっ切り、ぶっ放してもいいよな」


 バズーカの砲口の奥で、イデア粒子が真っ赤に収束していく。俺は迷わずチームメイトの前に飛び出した。ここだ! 優しさを見せつける最大のチャンス。最前線で盾をかまえる。


「俺たちは負けません!」


 〝ヒーロー目・優しさ科〟にふさわしいセリフを吐く。盾の面積がぐっと広がった。


「これで終わりだ!」


 隼人先輩もまた、〝ヒーロー目・勇敢科〟らしい雄叫(おたけ)びを上げた。お互いの武器が強化され、周りを照らすほどまばゆく輝く。


 不意に、妹奈が顔を上げた。


「みんな。風下から離れて」

「へ?」


 振り向けば、背後の木々はどんどん燃え広がっていた。植物の焦げる不快な臭いが、風に乗って届く。


「あの不気味な色の花……絶対に毒があるよ……」


 風で前髪が揺れ、初めて妹奈の目が見えた。恐怖の色だ。ジャングルのいたるところに咲く花々を思い出した。鮮血のような赤、毒蛾のような紫。その花びらが灰となり、押し寄せる。


 とっさにジャージの袖で鼻と口を覆い、一人で逆方向へ駆け出した。天馬は子トラたちを抱え、杏咲と妹奈を母トラの背中にまたがらせてる。この状況で他人にかまうなんて、バカかよ!


 ゴールドチームはどうだ。俺たちのかなり後ろを必死に走っている。じきに毒に飲まれるだろう。


 どいつもこいつも放っておけ。これはチーム戦だ。先輩たちが脱落し、俺だけでも生き残れば、赤チームの優勝。俺があいつらを置いていくのは、他でもない、あいつらのためなんだ。

両チームの行く末は?

感想、応援などいただければ励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ