どいつもこいつも勝手ばかり
●●この小説は読者参加型です●●
あなたは自分が何科だと思いますか?
何科の人物に登場してほしいですか?
感想に書いていただければ、できる限り登場させてみます。
「四つ葉先輩。あなたの幸運は、仲間の不運に上に成り立っているんじゃないですか?」
四つ葉先輩の笑顔がこわばった。俺はここぞとばかりに盾で連撃をくり出す。技が外れるたびに、チームメイトに異変が起きた。隼人先輩はすっ転び、誠先輩がメガネを落っことし、晴生先輩はハチの群れに追いかけられる。
「ね、ねえ、優人くん……もうやめてよ……」
「女神なんて図々しい。幸運を吸い取る悪魔も同然じゃないですか」
俺は手をゆるめない。四つ葉先輩は悲鳴を上げている。背後から高速回転の音が聞こえた。ブーメランが戻ってきたのだ。俺はすばやく後ろに飛びのいた。軌道上には、四つ葉先輩の頭がある。
ガツン!
ブーメランがぶつかったのは、巨大なバズーカの側面だった。隼人先輩の武器だ。四つ葉先輩をかばい、敢然と立っている。
「隼人、無茶はやめて! 英雄は生き残らなきゃ——」
「何言ってんだ、四つ葉。俺たちはみんな英雄だろ」
隼人先輩がにかっと笑い、いかついバズーカを担ぎ直す。普通なら持ち上げるだけで腰を痛めるだろう。このあたり一帯の木々を焼き払ったのは、あのバズーカに違いない。
そして俺と妹奈を振り返った。
「さあ、二年生! 俺たちにとっては最後の体育祭だ。全力でぶつかり合おうぜ!」
なんだよ、その求心力。俺にはできない。
……いや、できなくたっていい。俺はただ〝優しさ〟に特化すべきなのだから。羨ましく感じる必要はない。
しかし絶体絶命であることに変わりはなかった。ゴールドチームは、三年生の聖人四人。対する赤チームは、うじうじ凡人娘と、ついこの間まで小学生だった、にわか聖人。だめだ、勝ち目がない。そのとき——
ニャア。
ジャングルに似つかわしくない、愛らしい鳴き声が響いた。全員が空耳かと首をかしげる。
ニャア。ニャア。
「優男くん、無事かー」
がさがさと草をかき分けて現れたのは、チームメイトで気まま科の天馬だった。こいつ、生きていたのか。木の葉まみれの、泥だらけ。ジャージはびりびりに破れている。
「えっと、五十年くらい、ジャングル生活していたのかな?」
「おかげさまで、自由に探検できたぜー」
探検する競技じゃねーよ。
しかも、天馬の腕や肩、頭の上には、しま模様の小さな動物が何匹もまとわりついている。どうやら「ニャア」の正体はこれのようだ。
「おや。かわいらしい子猫ですね」
〝真面目科〟の誠先輩が、きびきびと歩み寄る。猫好きなのか。天馬がのんびりと忠告した。
「急に近づかない方が」
「わたくし、動物愛護には賛成ですので」
誠先輩が手を伸ばした。
ガサガサッ。天馬の背後の茂みから、一頭の巨大なトラが歩み出た。威嚇の目を光らせ、牙を剥き出している。誠先輩はぴたりと固まった。頬が引きつる。
「ほ、ほう。あなたはこの子たちのお母さんですか? 安心してください。わたくし、悪さなどしませんので」
なだめながら後ずさるが、もう遅い。トラは軽々と天馬を飛び越え、誠先輩に突進した。追いかけっこが始まる。
「気まま科は、なーんか動物と通じ合う部分があるんだよなー」
天馬は子トラを撫でながら、ひょうひょうと見守っている。確かにこいつは、人間社会よりも野生動物の群れにいる方が自然だ。三学年が死闘をくり広げている間に、すっかりジャングルの住人になったらしい。
「あはは! あれ、捕まったら食いちぎられるよな。絶対に痛そうだ」
楽天科の晴生先輩が、あっけらかんと笑う。そのとき、茂みの奥から別の声が届いた。
「おたくのお兄さんって、人でなしなのお?」
〝あざとさ科〟の杏咲だ。天馬に拾われ、一緒に追いついたらしい。
妹奈がぷるぷると首を横に振った。
「お兄ちゃんは人でなしじゃないよ……究極のポジティブなの……」
「それって、時に、人でなしよりも不謹慎ねえ。お葬式とか出ない方がいいと思うわよう」
晴生先輩が、うーんと伸びをする。その顔の真横をパチンコ玉がすり抜けていった。
「あん、外しちゃったあ」
杏咲のジャージの袖からパチンコがのぞいていた。泣きべそ顔で妹奈を振り返る。
「妹奈ちゃん。あずのこと、嫌いにならないでえ。あずだって、お兄さんを攻撃したくてしているんじゃないんだからあ……」
「あ、まったく問題ないよ」
妹奈の口調は、これまでで一番カラッとしていた。兄の脱落を心から願っているらしい。
俺と隼人先輩の視線がぶつかった。隼人先輩がバズーカをかまえる。
「これで四対四。思いっ切り、ぶっ放してもいいよな」
バズーカの砲口の奥で、イデア粒子が真っ赤に収束していく。俺は迷わずチームメイトの前に飛び出した。ここだ! 優しさを見せつける最大のチャンス。最前線で盾をかまえる。
「俺たちは負けません!」
〝ヒーロー目・優しさ科〟にふさわしいセリフを吐く。盾の面積がぐっと広がった。
「これで終わりだ!」
隼人先輩もまた、〝ヒーロー目・勇敢科〟らしい雄叫びを上げた。お互いの武器が強化され、周りを照らすほどまばゆく輝く。
不意に、妹奈が顔を上げた。
「みんな。風下から離れて」
「へ?」
振り向けば、背後の木々はどんどん燃え広がっていた。植物の焦げる不快な臭いが、風に乗って届く。
「あの不気味な色の花……絶対に毒があるよ……」
風で前髪が揺れ、初めて妹奈の目が見えた。恐怖の色だ。ジャングルのいたるところに咲く花々を思い出した。鮮血のような赤、毒蛾のような紫。その花びらが灰となり、押し寄せる。
とっさにジャージの袖で鼻と口を覆い、一人で逆方向へ駆け出した。天馬は子トラたちを抱え、杏咲と妹奈を母トラの背中にまたがらせてる。この状況で他人にかまうなんて、バカかよ!
ゴールドチームはどうだ。俺たちのかなり後ろを必死に走っている。じきに毒に飲まれるだろう。
どいつもこいつも放っておけ。これはチーム戦だ。先輩たちが脱落し、俺だけでも生き残れば、赤チームの優勝。俺があいつらを置いていくのは、他でもない、あいつらのためなんだ。
両チームの行く末は?
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