ズルとかバグとか
●●この小説は読者参加型です●●
あなたは自分が何科だと思いますか?
何科の人物に登場してほしいですか?
感想に書いていただければ、できる限り登場させてみます。
「残り三チーム、残り三チーム」
正義ちゃんのアナウンスに驚いた。十五チームもいたのに……
ここまで来たら、もはや隠れてはいられない。俺は勝ち抜く。チームメイトがネックだが、問題ない。はなから連携に期待しなければいい。俺一人の力で、チーム全員を引き上げてやればいいんだ。
「こんなに残れるはずがない……絶対に罠よ……」
湿った落ち葉を踏みしめながら、妹奈がつぶやく。
俺は、足を引きずる杏咲に肩を貸していた。膝のところがジャージよりも濃い赤に染まっている。転んだのは嘘ではなかったようだ。
鼻が、ひくっと動いた。焦げ臭い。声も聞こえる。人数が多い。すぐさま杏咲を木の幹に寄りかかるように座らせた。足手まといだからだ。
「杏咲はここで休んでいて」
「だめよお、優人くん。三人で隠れましょう」
「これが決戦になると思う。絶対に赤チームを勝たせるから、任せろ」
「……ごめんね。ありがとお」
杏咲がうなずく。わかっているよな。おまえの仕事は、よく回るそのお口で、俺の高潔な精神を学校中に言いふらすことだぞ。
妹奈を連れ、音のする方角へ駆け出した。木々が燃えている。その根元に、青ジャージの二年生が四人、倒れていた。
「閑、大丈夫か!」
煙を突っ切り、閑の隣へ飛び込む。うつぶせに伏せる閑は、横目でこちらを見上げた。整った顔が傷だらけだ。
「……優人、遅い」
閑がつぶやく。そして青チーム全員の体は分散していった。
「残り二チーム、残り二チーム」
無情なアナウンス。誰だ。聖人の閑も含め、二年生をまとめて吹き飛ばしたのは——
「あれ? 優人じゃん」
金色のジャージの男子生徒に声をかけられた。不良のような金髪。前世の俺なら絶対に近寄らないタイプ。それなのに、なぜか引き寄せられるような、焦がれるような熱がわき出る。
妹奈が、この世の終わりのような声を漏らした。
「隼人先輩……絶対にあの人が残っていると思っていた……」
「隼人先輩?」
「三年生の学級委員長……〝ヒーロー目・勇敢科〟の聖人……」
妹奈は震え上がっている。
「人間退治は、隼人先輩の率いるチームが二連覇中……去年も一人で大半の生徒を倒した……まさに三年生の英雄だよね……」
俺は、胸のざわめきの正体に気づいた。同じヒーロー目の格上だからだ。前世の俺は、誰にも憧れたことがない。尊敬もしたことがない。けれど、もしそんな感情があるとしたら——向かう先は、きっとこの人しかいない。
ゴールドチームは全員が生き残っている。そのメンバーを見るなり、妹奈はますます青ざめた。
「あのチーム、強すぎる……四人とも聖人だよ……」
「は!? 全員?」
「だって三年生だもん……二年生よりも聖人が多いのは当然だよ……」
吐き気がしてきた。妹奈の説明を頼りに、敵チームの人間性を確かめる。
「この三人と組めるなんて、私って本当にラッキーだなあ。えへへ」
はにかみ笑いをするのは、〝ユニーク目・幸運科〟の四つ葉先輩。緑色の髪を編み、四つの輪っかにしている。異名は〝幸運の女神〟。何をしたってツイているらしい。
メガネをくいっと押し上げたのは、〝インテリジェンス目・真面目科〟の誠先輩。競技中も、七三分けの前髪は一ミリたりとも乱れていない。
「隼人さん、ジャングルを燃やしてはいけません。森林破壊により大気中の二酸化炭素濃度は上昇し、気流や雨量が乱れる異常気象となり、野生動物はすみかを脅かされ、食物連鎖は崩れ——」
「真面目かっ!」
「いつものツッコミ、誠にありがとうございます」
真面目科の誠先輩が、九十度の角度でお辞儀をする。
ヒュウと口笛を吹いた四人目は、〝パワフル目・楽天科〟の晴生先輩だ。
「おやおや、妹奈。まさか、いや絶対にここでぶつかるような気はしていたよ。血は争えないな!」
まさかなのか絶対なのかよくわからない。妹奈がうめく。
「お兄ちゃん……明るすぎて無理……」
「お兄ちゃん!?」
「うん……私の一歳上のお兄ちゃん……」
晴生先輩の人間性は、明らかに妹とは真逆だ。どういう遺伝子の事故でこうなったのだろう。
「照れるな、照れるな! 兄妹ハグでもしておくか?」
「絶対に嫌……」
妹奈が俺の後ろに隠れる。誠先輩が再びメガネを押し上げた。するとレンズが青白く輝く。
「優人くんの武器は盾。優しさによりかなり強化されていますが、実質、赤チームの戦力は彼一人です。妹奈さんには攻撃の意思がなく、仮の武器すら出していません」
誠先輩の武器は、あのメガネか。戦況を読むことができるらしい。ズルっ。
しかし妹奈と同じく、四つ葉先輩も武器を持っていないことに気づいた。のんびりとほほ笑んでいる。隙のあるやつから潰すしかない。突っ走り、その腹めがけて盾を突き出した——
しかし外れる。四つ葉先輩はほとんど動かない。ほんの少し肩をずらしたり、首をかたむけたりするだけなのに、攻撃は紙一重で命中しない。
「えへへ、当たらないわよ。私は運が良いから」
四つ葉先輩の頬はバラ色だ。そうか。武器を手放したのではない。女神には最初から必要ないんだ。くそっ、世界のバグみたいな人間性だな!
「おー、四つ葉を狙うとは。おまえ、絶対にセンスがないなあ」
晴生先輩が茶々を入れた。観戦に夢中なあまり、足元の石につまずき、バタンと倒れる。立ち上がったときには鼻血が出ていた。それでも豪快に笑う。何が起きてもへこたれない。その楽天家っぷりに、武器のブーメランの先がひときわ鋭く尖る。
「晴生、優人を攻撃するな。さすがに四対一は卑怯だ」
隼人先輩がたしなめるが、晴生先輩はすでにブーメランを大きく振りかぶっていた。
「優人くん、よけて!」
妹奈が小さく叫ぶ。まずい。攻撃の当たらない四つ葉先輩へ意識を集中させ、その隙に背後を取る。これがこのチームの勝ち筋だ。
そのとき、晴生先輩の頭上で、木の枝が不自然にきしんだ。見上げた額のど真ん中に、折れた枝が直撃。晴生先輩が白目をむき、ブーメランはあらぬ方向へ飛んでいく。
四つ葉先輩が目をぱちぱちとしばたかせた。
「あら、優人くん。あなたもラッキーボーイね」
「俺はラッキーじゃない」
たまらず言い返した。運なんて知るか。俺は実力でのし上がる。運などに頼れば、冷静な判断ができない。そうだ、落ち着いて分析しろ——
そして気づいた。
「四つ葉先輩。あなたの幸運は、仲間の不運の上に成り立っているんじゃないですか?」
人間性まとめ
ヒーロー目・勇敢科/隼人
ユニーク目・幸運科/四つ葉
パワフル目・楽天科/晴生
インテリジェンス目・真面目科/誠
ゴールデンチームを相手に、どう戦う?




