気持ちよすぎる
●●この小説は読者参加型です●●
あなたは自分が何科だと思いますか?
何科の人物に登場してほしいですか?
感想に書いていただければ、できる限り登場させてみます。
どうやって戦闘中に優しさを見せればいいんだよ。情けなどかけたら、怪人に勝てないじゃないか!
まつりがため息をつく。
「優人ってば、本当に具合が悪いみたい。あたしたちで倒すよ、閑っ!」
「……待て、まつり。怪人の特性を見極めろ」
閑の制止も聞かず、まつりが巨大トンカチを振り上げながら走る。標識怪人が右腕をかかげた。〝通行止め〟の文字が瞳に映った瞬間、まつりの体がぴたりと静止する。勢いだけが残ったトンカチが、そのまま振り子のように戻ってきた。
「うぎゃあああっ!?」
自分で自分を吹き飛ばす。商業ビルへ突っ込み、ガラスが派手に割れた。俺は慌てて声をかける。
「まつり! 大丈夫か?」
「へ、平気……っ!」
がれきの中から親指が出た。おてんばだな。
すると、まつりのトンカチが輝き、頭が一回り大きくなった。なるほど、〝人間性が発揮されるほど強度を増す〟とはこういうことか。
「あの怪人、交通ルールを物理的に強いてくるね。思ったよりも厄介かも」
かれきの下でじたばたしながら、まつりがわめく。
次に動いたのは、閑だ。指輪から音もなくワイヤーが伸び、交差点に張りめぐらされる。一本が怪人の右腕に絡みついた。
「……捕まえた」
閑が指を引く。右腕がねじ切れ、光の粒子となって散った。怪人が絶叫する。
「閑、ナイス!」
俺は叫んだ。しかしそのとき、ワイヤーの軌道上に幼い女の子が飛び出してきた。信号無視だ。このままでは体が真っ二つに切断される——
そのとき、ひらめいた。これが優しさを見せるチャンスじゃないか?
「危ない!」
俺は前へ出た。盾でワイヤーをなぎ払い、女の子を抱き止めて地面を転がる。思った通り、盾が輝き、厚みが増した。たった今、俺は女の子をかばう優しさを見せたから強化されたのだ。
「大丈夫?」
「うん……お、お兄ちゃん、ありがとう!」
女の子が涙目でうなずいた。喝采が起きる。
「すごい。あれはきっと〝優しさ科〟の聖人だ!」
「初めて見た! かっこいいなあ」
ふう。待て待て待て。この世界、気持ちよすぎないか? うわべの優しさを見せておけば、もてはやされ、おまけに武器まで強くなるなんて。
「よっしゃー! まつりちゃん、復活っ!」
がれきの山をぶち破り、まつりが戻ってきた。体中にガラスが刺さり、血だらけだ。通行人たちがドン引きしている。しかしまつりは高笑いをした。
「次こそぶっ飛ばすよ!」
怪我を物ともしないおてんばっぷりに呼応し、トンカチが光り輝いた。硬度が上がったのだ。
怪人が左腕の標識を上げる。〝一方通行〟の文字めがけて、俺たちの体は一直線に引きずられた。
「わっ!」
俺とまつりは思わず叫んだが、閑は無言だった。その寡黙科らしい振る舞いに、ワイヤーが輝き、張力が跳ね上がる。怪人の足をクモの巣のように固定した。
しかし〝一方通行〟に伴う加速は止まらない。
「だったら、あんたのルールを利用してやる!」
まつりが前のめりに跳んだ。足裏が地面から離れる。スーパーマンのように滑空し、勢いのままにトンカチを叩き込む。怪人の胴体がくの字にひしゃげた。だがまだ倒れない。
老婆の頭が歪み、〝落石注意〟の標識に変わった。交差点の中央に岩が降り注ぐ。
俺は閑とまつりの元に飛び出した。命がけで仲間を守る! ——そう見えるように。すると盾はまぶしいほどに輝き、傘三つ分ほどの大きさにまで広がった。
すべての岩をはね返すと、俺は立ち上がり、巨大化した盾を振るった。体が覚えている。これは守るだけの盾ではない。そう、普通に、怪人をぶん殴るのだ。
「ギャアァァァァ!!!!!」
断末魔とともに、標識怪人の体が粒子となって空へ溶けていく。やった。初めての怪人退治、成功だ!
交差点に大歓声と拍手が弾けた。
「いやあ、どうもどうもっ」
トンカチを肩に担いだまつりが手を振る。興奮で頬が真っ赤だ。
「……」
閑のワイヤーが指輪に巻き戻されていく。女性たちが黄色い声を上げた。
「あー、疲れた。怪我しちゃったから、保健室に行かなきゃ。早く帰ろっ」
まつりが血をペッと吐き出す。こんなときの正解はこれじゃないか?
「待って。怪我人がいないか確認してから帰ろう」
まつりが俺を見て、にやりと笑う。
「やっと本調子に戻ったね、優人。それでこそ優しさ科だよ」
オッケー。この世界の攻略法、完全に把握した。
閑は生粋のポーカーフェイス。まつりは根っからのじゃじゃ馬娘。そういう細胞を持って生まれた。
俺には腹黒ならではの演技力がある。嘘で塗り固められた優しさに、上っ面の人間性。うまくやればバレやしない。勝ち抜ける。
通行人の安否を確認していると、あの女の子の母親が駆け寄ってきた。
「先ほどはありがとうございました! すみません、うちの子が飛び出してしまって……」
「いえいえ。正義高校の生徒として、当然のことをしたまでです」
俺は女の子と目線を合わせ、頭を撫でる。
「もう信号無視はするなよ」
完璧な笑顔を作り上げた。女の子からの憧れのまなざしに、恍惚の身震いが止まらない。
前世では、四方八方に気を遣わなければハブられ、いじめ殺された。ここでなら俺は、クラスの、学校の、街の、いや——世界の中心人物になれる!
初回投稿はここまでです。
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