表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/18

気持ちよすぎる

●●この小説は読者参加型です●●

あなたは自分が何科だと思いますか?

何科の人物に登場してほしいですか?

感想に書いていただければ、できる限り登場させてみます。

 どうやって戦闘中に優しさを見せればいいんだよ。情けなどかけたら、怪人(カイジン)に勝てないじゃないか!


 まつりがため息をつく。


優人(ユウト)ってば、本当に具合が悪いみたい。あたしたちで倒すよ、(シズカ)っ!」

「……待て、まつり。怪人の特性を見極めろ」


 閑の制止も聞かず、まつりが巨大トンカチを振り上げながら走る。標識怪人が右腕をかかげた。〝通行止め〟の文字が瞳に映った瞬間、まつりの体がぴたりと静止する。勢いだけが残ったトンカチが、そのまま振り子のように戻ってきた。


「うぎゃあああっ!?」


 自分で自分を吹き飛ばす。商業ビルへ突っ込み、ガラスが派手に割れた。俺は慌てて声をかける。


「まつり! 大丈夫か?」

「へ、平気……っ!」


 がれきの中から親指が出た。おてんばだな。

 すると、まつりのトンカチが輝き、頭が一回り大きくなった。なるほど、〝人間性が発揮されるほど強度を増す〟とはこういうことか。


「あの怪人、交通ルールを物理的に()いてくるね。思ったよりも厄介かも」


 かれきの下でじたばたしながら、まつりがわめく。


 次に動いたのは、閑だ。指輪から音もなくワイヤーが伸び、交差点に張りめぐらされる。一本が怪人の右腕に絡みついた。


「……捕まえた」


 閑が指を引く。右腕がねじ切れ、光の粒子となって散った。怪人が絶叫する。


「閑、ナイス!」


 俺は叫んだ。しかしそのとき、ワイヤーの軌道上に幼い女の子が飛び出してきた。信号無視だ。このままでは体が真っ二つに切断される——


 そのとき、ひらめいた。これが優しさを見せるチャンスじゃないか?


「危ない!」


 俺は前へ出た。盾でワイヤーをなぎ払い、女の子を抱き止めて地面を転がる。思った通り、盾が輝き、厚みが増した。たった今、俺は女の子をかばう優しさを見せたから強化されたのだ。

 

「大丈夫?」

「うん……お、お兄ちゃん、ありがとう!」


 女の子が涙目でうなずいた。喝采(かっさい)が起きる。


「すごい。あれはきっと〝優しさ科〟の聖人(セイジン)だ!」

「初めて見た! かっこいいなあ」


 ふう。待て待て待て。この世界、気持ちよすぎないか? うわべの優しさを見せておけば、もてはやされ、おまけに武器まで強くなるなんて。


「よっしゃー! まつりちゃん、復活っ!」


 がれきの山をぶち破り、まつりが戻ってきた。体中にガラスが刺さり、血だらけだ。通行人たちがドン引きしている。しかしまつりは高笑いをした。


「次こそぶっ飛ばすよ!」


 怪我を物ともしないおてんばっぷりに呼応し、トンカチが光り輝いた。硬度が上がったのだ。


 怪人が左腕の標識を上げる。〝一方通行〟の文字めがけて、俺たちの体は一直線に引きずられた。


「わっ!」


 俺とまつりは思わず叫んだが、閑は無言だった。その寡黙科らしい振る舞いに、ワイヤーが輝き、張力が跳ね上がる。怪人の足をクモの巣のように固定した。

 しかし〝一方通行〟に伴う加速は止まらない。


「だったら、あんたのルールを利用してやる!」


 まつりが前のめりに跳んだ。足裏が地面から離れる。スーパーマンのように滑空し、勢いのままにトンカチを叩き込む。怪人の胴体がくの字にひしゃげた。だがまだ倒れない。


 老婆の頭が歪み、〝落石注意〟の標識に変わった。交差点の中央に岩が降り注ぐ。

 俺は閑とまつりの元に飛び出した。命がけで仲間を守る! ——そう見えるように。すると盾はまぶしいほどに輝き、傘三つ分ほどの大きさにまで広がった。


 すべての岩をはね返すと、俺は立ち上がり、巨大化した盾を振るった。体が覚えている。これは守るだけの盾ではない。そう、普通に、怪人をぶん殴るのだ。


「ギャアァァァァ!!!!!」


 断末魔とともに、標識怪人の体が粒子となって空へ溶けていく。やった。初めての怪人退治、成功だ!

 交差点に大歓声と拍手が弾けた。


「いやあ、どうもどうもっ」


 トンカチを肩に担いだまつりが手を振る。興奮で頬が真っ赤だ。


「……」


 閑のワイヤーが指輪に巻き戻されていく。女性たちが黄色い声を上げた。


「あー、疲れた。怪我しちゃったから、保健室に行かなきゃ。早く帰ろっ」


 まつりが血をペッと吐き出す。こんなときの正解はこれじゃないか?


「待って。怪我人がいないか確認してから帰ろう」


 まつりが俺を見て、にやりと笑う。


「やっと本調子に戻ったね、優人。それでこそ優しさ科だよ」


 オッケー。この世界の攻略法、完全に把握した。


 閑は生粋(きっすい)のポーカーフェイス。まつりは根っからのじゃじゃ馬娘。そういう細胞を持って生まれた。


 俺には腹黒ならではの演技力がある。嘘で塗り固められた優しさに、上っ面の人間性。うまくやればバレやしない。勝ち抜ける。

 

 通行人の安否を確認していると、あの女の子の母親が駆け寄ってきた。


「先ほどはありがとうございました! すみません、うちの子が飛び出してしまって……」

「いえいえ。正義(マサヨシ)高校の生徒として、当然のことをしたまでです」


 俺は女の子と目線を合わせ、頭を撫でる。


「もう信号無視はするなよ」


 完璧な笑顔を作り上げた。女の子からの憧れのまなざしに、恍惚の身震いが止まらない。


 前世では、四方八方に気を遣わなければハブられ、いじめ殺された。ここでなら俺は、クラスの、学校の、街の、いや——世界の中心人物になれる!

初回投稿はここまでです。

感想、応援などいただければ励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ