勝ったのは
●●この小説は読者参加型です●●
あなたは自分が何科だと思いますか?
何科の人物に登場してほしいですか?
感想に書いていただければ、できる限り登場させてみます。
天馬、杏咲、妹奈の左胸の校章バッジが輝いた。光はそれぞれの手の中へ集まり、紙飛行機、魔法少女のようなステッキ、傘が現れる。
「もしかして、これ、あずの武器い?」
杏咲がハート型のステッキをまじまじと見つめる。
「ということは……私たち、聖人になれたの……?」
妹奈が震える手で傘を握りしめる。
「えー。俺、武器なんていらないのになー」
天馬が窓に向かって紙飛行機を投げた。紙飛行機はひらりと風に乗り、校庭の上を悠々と旋回する。
「でも、俺らしい、良い武器だなー。優人、ありがとう」
天馬がのんきな笑みを浮かべた。杏咲と妹奈も口々に礼を言う。
体育祭は、この上なく理想的な形で幕を閉じた。聖人が三人も増えた。みんなの絆も深まった。最高のクラスを作るための第一歩としては満点だろう。俺の計画は順調に進んでいる。
周囲からも歓声が上がった。
「チームメイトが三人も聖人になるなんて、優人、すごすぎ!」
「マジで性格良いよな……」
「全部、優人のおかげだよ」
ああ、称賛されている。憧れられている。存在を肯定されている。これ以上ない達成感だ。二年生はお祭り騒ぎだった。
ふと、人だかりの向こうに視線を向ける。三年生だ。隼人先輩のベッドの周りに集まり、静かに泣いている。隼人先輩は困ったように笑い、クラスメイトたちを励ましていた。
「葬式みたいな顔をするなよ。まだまだみんなで思い出を作ろうぜ」
それでも、その瞳は少しだけうるんでいた。
俺はこぶしを握る。
——なんだよ。勝ったのは俺たちだ。最後まで立っていたのは俺だ。それなのに、どうしてあっちが〝勝者〟のように見えるんだ。
心臓がどくんと脈打つ。前世の記憶がよみがえる。教室の隅。向けられる視線。池に沈んだゲーム機。味方なんて一人もいなかった。
俺は一度、底まで落ちた。だからこそ正解を知っている。どうすれば〝良いクラス〟ができあがるのかも。全員で泣くなんて間違っている。
それなのに、どうしてあれが美しく見えるのだろう。
・・・・・・・・・・
保健室のネネ先生は、生徒たちをすぐには解放してくれなかった。次々とベッドへ転がされ、瞳孔、反射、脳波らしきものまで検査される。最後までジャングルに残っていた俺の順番が回ってきたのは、かなり後だった。
「今日はゆっくり休んでね」
「いえ! 優勝したので元気いっぱいです!」
「休まないなら、ここで寝かせるわよ」
「ちゃんと休みます!」
保健室を出た頃には、廊下の窓を夕焼けが赤く照らしていた。閑とまつりは寮の食堂だろうか。足早に進んでいると、話し声が聞こえた。
「——猛獣に噛み殺されかけたり、毒死したり。こんなの野蛮すぎるわ」
俺は曲がり角の陰に隠れ、こっそりとのぞき見た。三年生の担任教師の女性か。長い髪がつやつやと波打ち、モデルのようなスタイルだ。
憤りをぶつける相手は、億劫そうにタバコをふかしている。遥先生だ。
「誰かがフィールドの難易度を上げたか。でも、イデアリウムを管理できるのは教師だけのはずです。正義ちゃんは教師の指示しか聞きませんから」
「子どもたちを窮地に追い込みたい大人なんて、正義高校にいるかしら?」
「きみじゃないですよね? 桃実先生」
「あら、嫌だ。わたしが殺したいのはあなただけですよ。学年一位の遥センセ」
「相変わらず凶暴だなあ」
遥先生が口元をひくつかせる。そういえば、三学年の担任教師は、正義高校のかつてのクラスメイトなんだっけ。それぞれの肩に妖精がとまっているが、俺には見分けがつかない。
「で。日向先生は、何かおかしな点に気づきましたか?」
もう一人の教師が、「ふえ?」ととぼけた声を出した。一年生の担任だ。小柄な体が、まるで立ったまま眠っているかのように左右に揺れている。
「むにゃ……ぼくも今日の夕食は、猛獣のスペアリブがいいと思います」
「日向センセ。よく立ったまま眠れますね」
「むにゃ……猛獣を倒すには、寝首をかくのが一番です。ぐう」
日向先生が寝息を立てた。嘘だろ、マジで寝ているのか。遥先生と桃実先生はそろって大きくため息をついた。
「教師のミスだとすれば一大事ですね。イデアリウムの故障なら、さらに大変だ。仕方ないから調べてみます」
遥先生は桃実先生の肩をぽんと叩き、その場を後にした。日向先生は目を閉じたまま、ゆらゆらと揺れ続けている。
桃実先生は、ジャングルの面影が消え、すっかり元の姿に戻った校庭を見下ろしていた。体育祭を終えた生徒たちが笑い合い、砂を踏みならしていく。
……ミスでも何でもいいけれど、俺の優勝にケチはつけないでほしい。
体育祭編、終了です。
桃実先生と日向先生が何科かは、まだ内緒です。




