ミレディア、暗殺者を送りこまれる。
この日も女王としての職務を終え、私はソフィアと共に自室で遅めの夕食をとっていた。
近頃は外交の接見などが続いてやや忙しい日々が続いている。そろそろソフィアに休暇をあげたいし、私自身にも休みが必要かもしれない。
などと考えを巡らせていて、不意に胸騒ぎが。
「ミレディア様、どうかしましたか?」
「うーむ、これはそろそろかもしれない……」
「休暇がでしょうか?」
「それもだが、私が女王に就いて結構経つ。この辺りで襲撃にくるはずだ」
ソフィアがまだ不思議そうな顔をしているので、分かりやすく説明することにした。
私の〈全体強化〉によって全ての国民の能力が上昇している。それは運動機能だけでなく、頭の回転速度や記憶力など、あらゆる面で上がることを意味した。
この現象は他国にとっては脅威以外の何ものでもない。
ヴェルセ王国と関係の悪い国も良い国も、何が何でも阻止に出てくるはずだった。
「一番手っ取り早いのが、魔法の根源を絶つことだ」
「つまりそれは……」
「私の暗殺だ」
こう述べた次の瞬間、部屋の外から慌ただしい音が。この騒々しさは暗殺者などではない。奴だ。
「ミレディア様、大変です! お城の中を不審な人がうろついていたそうですよ!」
オルセラが扉を開けると同時に叫んでいた。それから、モップを握り締めながら詰め寄ってくる。
「何が来ても私がお守りするので安心してください!」
と宣言している合間に、先ほどオルセラが開け放った扉の隙間から黒い影が部屋の中に。
……このバカ従姉、暗殺者を案内してきたか。
「しししし心配しないでください! 絶対に私がお守り……!」
私の前に立ってモップを構えるオルセラ。
そのメイド服を引っ張って強制的に下がらせ、困った従姉をソフィアの腕に預けた。
「そこでおとなしくしていろ。ここは私が対処する」
「い、今の、幼児とは思えない怪力……。でも対処するってどうやって!」
下がっても賑やかなオルセラに対し、ソフィアが冷静な口調で。
「大丈夫ですよ、オルセラ様。レベルが違いますから」
そうこうしている間に、侵入してきた暗殺者は両手に何本ものナイフを取り出していた。私に向けてまとめて投げ放つ。
見ていたオルセラが「すごい使い手だ!」と。
確かに器用ではあるが、魔力はさほど込められてはいない。刺客としては中の下といったところか。
下位魔法の盾で充分だろう、〈プラスシールド〉。
私の目の前に半透明の板が出現し、飛んでくるナイフを全て弾き返した。
さらに、間髪置かずに私は暗殺者に向けて手をかざす。
「後でどこに雇われたのか吐いてもらう。しばらく凍っていろ、〈アイスレイⅡ〉」
私の放った冷気が暗殺者を覆い、首から上だけを残して体を氷漬けにした。
まあ、多少は魔力を扱えるようだから凍死はしないだろう。
前世の私は何百回、いや、何千回と命を狙われ、その全てを生き延びてきた。もう暗殺者の対処など朝の歯磨き並に手慣れたものだ。
「……ミレディア様、どうしてそんなに強いんですか?」
呆然とオルセラが尋ねてきた。
「ソフィアが言った通り、クラスレベルが違うからだ」
私の〈全体強化〉には大きな利点があった。それは全ての強化対象から経験値を得られるということ。つまり、国民一人一人の強化に対する経験値が私に入ってくる。
その総量は膨大なものとなり、私はすでに【ルーラー】レベル41になっていた。一般にレベル20で熟練の域と言われ、〈識別〉の魔法で確認すると氷漬けの暗殺者は【シューター】レベル9だった。まあ、私の脅威ではない。
話を聞いたオルセラがしょんぼりしながらぽつりと。
「私、まだ【メイド】レベル1のままなのに……」
あのポンコツぶりで経験値が溜まるわけないだろう……。
お読みいただき、有難うございました。
最後に評価を付けていただけると次への励みになります。
ミレディアとオルセラの続きの物語も書いています。
この下にリンクを設置しました。こちらもよろしければ。




