31私はカトレーヌじゃありません!
「おい、お前らそこを動くな!」
いきなり現れたのはテオドールだった。
彼は騎士を十数人引き連れて剣を抜いてこちらに走って来る。
「ジュリアーナ!大丈夫か?お前ら許さん!!」
騎士が男たちを取り囲みすぐに男たちは取り押さえられ私は彼らから引き離された。
テオドールはジュリアーナ(中身はカトレーヌ)に向かって一目散に駆け込んで行きマントの男に剣を突きつけた。
「お前は魔術師のゾル?どうしてお前がここに、捕まったはずじゃ‥」
「おっと、殿下、俺は魔術師だ。本物と偽物を入れ替えるくらい朝飯前だ。用は済んだ。俺は引き上げるからな」
ボワンを煙が沸き起こり周りの視界が見えなくなる。
煙がなくなるとゾルの姿は消えていた。
「クッソ、ゾルの奴逃げたか‥それより、ジュリアーナ大丈夫か。すぐに縄を解くからな」
テオドールは椅子に縛られていたジュリアーナ(カトレーヌ)の拘束をほどいて行く。
縄を解かれたジュリアーナ(カトレーヌ)にテオドールが優しく手をさし伸ばす。
その手をぎゅっと握ってジュリアーナ(カトレーヌ)が頬に摺り寄せた。
「テオ~、恐かった。わたし、わたしあなたがきっと来てくれるってぇ信じてたわぁ」
ジュリアーナ(カトレーヌ)は彼の手に何度も頬ずりする。
「遅くなってすまない。でも、ジュリアーナ、君が無事で良かった」
テオドールはジュリアーナ(カトレーヌ)を抱き寄せて胸の中に閉じ込める。
ジュリアーナ(カトレーヌ)は、私を見つけるとすっと目を細めてニヤリと微笑み「テオ~、もっと抱きしめて、すごく恐いの。ほら、まだこんなに震えて‥」
小刻みに肩を震わせて見せる姿に内心吐き気を催す。それにテオドールもテオドールだわ。あれが私だって思うなんて!
私は大きなため息を吐きながら立ちすくんだままだった。
「国王代理、こちらは?」
騎士がすっと私に手を伸ばして私の腕を拘束した。
「カトレーヌ?どうして君がここに?今回の騒ぎはお前が仕組んだ事なのか?ジュリアーナを攫ってどうするつもりだった?まさか、ジュリアーナに嫉妬して?わがままなお前のことだ。寝取った彼女の夫とうまく行かなかったのか?元夫はジュリアーナの方が良かったとか何とか言ったんだろう?どうせそんな事だ。はっ、それでジュリアーナを妬んだのか?お前と言う女はとんでもない女だ。おい、すぐにこの女をデヴェーラ国に送り届けろ!今すぐにだ。ったく。ジュリアーナ(カトレーヌ)もう二度とあの女を君に近づけないと誓う。恐かっただろう?それに一度王宮に来てくれないか、宮廷医の診察を受けて欲しい。万が一にも君に何かあってはいけない。だろう?」
「もう、テオったらぁ、優しい。私、あなたが大好きよ」
ジュリアーナ(カトレーヌ)が甘えた声でテオドールにすり寄る。
「ジュ、ジュリアーナ、それって、俺も君が好きだ。どうやって告白したらいいか考えていたんだ。デートに誘ってそれからゆっくり距離を縮めて行こうって、でも、君も俺と同じ気持ちだったなんてすごくうれしいよ。さあ、行こうか。お前たち後は頼んだぞ!」
テオドールは赤い顔をしながら騎士に命令をした。
ふん、ばかじゃない?あんな女に騙されるなんて!最低!!
もう、テオドールなんか大っ嫌いなんだから。
なのに、胸の奥は苦しくて悲しくて辛くてたまらない。
私ってテオドールの事好きだったんだ。
こんなのって、カトレーヌと入れ替わって本物じゃない私にテオドールが愛を囁いていて私はここなのに。
「テオドール、彼女はジュリアーナじゃないわ。本物は私。私なの。そいつは偽物よ!」
「カトレーヌ、いい加減にしろ!いつまでそうやって自分勝手ばかりする気なんだ?さっさと連れて行け!」
「本当よ。私がジュリアーナなの‥」
テオドールは汚い者でも見るような目で私を一瞥するとジュリアーナ(カトレーヌ)をさっと抱き上げて行ってしまった。
やっと自分の気持ちに気づいたのに、そんなの全然伝わらなくて‥ほんと、好きならそれくらい気づきなさいよ!




