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賞味期限切れなんて誰が決めるんです?私の未来を勝手に決めるなんて許しません!  作者: はるくうきなこ


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20/35

20今やりたいこと(テオドール)


 俺たちはその日のうちに王都を出発した。

 「殿下、いくら何でも今王都を出れば夜は野宿ですよ。危険すぎます」

 護衛が言った。

 「野宿なんかどうでもいい!メートランド辺境に用があるんだ!」

 15歳でキルナート国に呼び戻されてから、最初に思ったのは国王には逆らってはいけないと言う気持ちだった。

 暗殺未遂から家をたらいまわしにされ国王は自分を必要としていないと思った。それがいきなり王太子として連れ戻されたのだ、ここで国王の機嫌を損なってはいけないと本能的に思った。

 それでも王太子となった俺は、もてはやされ大人たちのいいように扱われた。

 貴族令嬢たちがこぞって俺に愛想を振りまき身体を摺り寄せ甘い言葉をかけて来た。

 俺は戸惑うばかりだったがそのうち見透かされた人の心がわかるようになった。

 上辺だけの言葉、心ない中傷。信じれるものと信じてはいけないもの。

 リンズベル侯爵やメートランド辺境伯に教えられたと言うより肌で感じたもの。

 王宮に俺の心をさらけだせる相手はいなかった。

 本当の気持ちは心の奥深くに沈め上辺を取り繕う日々。

 何度か婚約の話があったが、結婚となるとどうしても決断が出来ずはぐらかして来てすでに26歳になっていた。

 そしてある日デヴェーラ国の王女との婚姻が決まったと言うより決められた。父から逆らうことはできないと言われた。

 それも自分の置かれ場立場なら仕方のない事だと受け入れる事にしたが、結果は散々だった。

 わがままで暴力的、壊滅的な女だった。その気にもなれなかった。


 結果。猫にされ街を彷徨い食べる事にも困り人からは蔑まれ汚いと蹴り飛ばされ命の危機にさらされた。

 どうしてここまでされなきゃならないんだ?もういっそ死んだほうがましじゃ?

 そんなあの日、古い家の庭先でそれでもまだ命を繋ごうと本能は庭先の葉を口に運んだ。

 女がいた。俺を見た。迷子かと近づいて来た。

 「それは毒じゃない?」といきなり抱き上げられて俺は逃げようと体をひねった。その瞬間口が彼女の唇に触れた。

 ボワン!

 魔法が解けた。

 俺は人間に戻っていた。彼女はカトレーヌとは離縁していると教えてくれた。信じられない。とにかく王宮に帰らなければと思った。あんなひどい所なのになぜか彼女が言った事は信じれる気がした。

 急いで王宮に帰れば本当にカトレーヌと離縁していた。

 だが、国王の怒りはすごかった。まあ、無理もないが、でも、このままでいいのかと思った。

 王宮の腐敗。見て見ぬふり。カトレーヌと離縁出来た事で俺の心の奥にあったずっと抑え込んで来たわだかまりのようなものが動き始めた。

 キルナート国に来た。

 そしてジュリアーナが不幸にあえいでいると知った。

 もう止まらなかった。

 彼女を助けたい。

 その先に何があるのかなんてどうでもよかった。

 今はただそれだけを思っていたい。


 馬を飛ばして2日でメートランド辺境領についた。

 俺は懐かしくもあるメートランド辺境伯邸を訪れた。

 「失礼ですがどちらさまで?」

 年取った老執事らしき男。

 「ロナウドか?俺だ。テオドール。いや、セバスチャンだ。なつかしいな。元気だったか?」

 ロナウドの顔がぐしゃっとなった。

 「ああ、セバスチャン。覚えておりますとも、こんなに立派になられて今は確かキルナート国の王太子テオドール殿下でしたね。これは失礼をいたしました」

 ロナウドは改めて腰を深く曲げて礼をした。


 「ロナウド、畏まらなくていい。それよりルーカスおじさんはいるか?王命で妻を娶ったと聞いたが‥その女性はどうしている」

 失礼だとはわかってはいるがどうにも言葉が止まらない。

 ロナウドが目を見張る。次にはおろおろと瞳が彷徨う。

 「殿下がどうしてそれをご存知なのです?それにどうして奥様の事をお尋ねになるのです?」

 「それは‥実はカトレーヌ王女と婚姻していた。彼女は勝手に離縁をして国に帰りバルハン公爵の元妻を王命でこんな所に送った聞いた。いや、すまん、こんな所などと、だが、ルーカスおじさんの噂はキルナート国にも届いていてな。犠牲となった女性が心配で」

 

 そこにルーカスが現れた。

 相変わらず大きな男だ。髪を振り乱し顔は赤い。昼間から酒を飲んでいるのか?

 俺は素直に再開を喜べる気分ではなかったがそれを顔には出さずに言った。

 「おじさん。お元気ですか?お久しぶりです。いきなりの訪問申し訳ありません」

 ルーカスがきょとんとした顔でこちらを見たがすぐに俺だと気づいたらしい。

 「お前。セバスチャンか?おい、どうしてた?元気だったか?あれから何年になる?会いたかったぞ!!」

 髭ずらの男が俺の身体をぎゅっと抱きしめた。うれしかったが胸の中は複雑な気分だった。

 「おじさん。お元気そうで何よりです」

 とは言ったものの取っ掛かりはどうする?

 「とにかく中に入れ。ゆっくりできるんだろう?今夜は泊っていけ。いいな。おい、ロナウド酒だ。それからヴィクトリアンに言って何かつまみになるようなものを用意させろ!ガハハハッ」

 相変わらず豪快な男だった。

 

 とりあえず客間に通されソファーに座る。

 ワイングラスで乾杯をして意を決するようにグラスのワインを一気に飲み干した。

 「おっ!お前相当いける口か?遠慮はいらん。もっと飲め!」

 ルーカスが俺のグラスにどぼどぼワインを注ぐ。

 

 俺は早く本題に入りたくて息を吸い込んだ。そして。

 「おじさん。実はカトレーヌと離縁したんだ」

 「ああ、知ってる。お前があの王女を解き放ったせいでバルハン夫人は俺と婚姻する羽目になった」

 ルーカスの声が少し強張った。これは彼が悪い事をしたと思っている時の癖だ。

 おい、まさかもう無理やり?ジュリアーナの身に何が起こったのか充分想像はついた。こんな大男が力ずくになればどうにでもなる事だ。でも、おじさんはジュリアーナを子供の頃から知っている。だから、まさかだよな。

 とにかくジュリアーナの事を知りたい。

 「そんなつもりじゃなかった。俺はあいつに嵌められたんだ。この国の人を巻き込むつもりなんてなかった。それでそのバルハン夫人は今どこに?」

 ルーカスが驚いた顔をした。

 「何でお前がそんな心配する?」

 まるで自分のやらかしたことをほじくり返されたくないみたいな声で。

 「いや、俺にも責任があると思って、おじさんだって王命で無理やりだったんだろう?彼女を妻として迎えて夫婦としてやっていくつもりはないんだろう?」

 半ば希望的観測ってやつだ。

 「当たり前だ。俺の妻はニーナしかいない。他の女など!でも、男にはそう言う相手も必要だ。妻がいれば不自由はしない。だろう?」

 俺が知っているルーカスは愛妻家だった。いつも彼女のそばにいて微笑んでいた頃の記憶が蘇る。愛する妻がいなくなった寂しさを紛らわせている事も分からなくはない。がそれとこれは話が別だ。

 「じゃあ、彼女がそう言う解消をするためにここに置くつもりなのか?言っておくが国王と話をした。この王命は取り消すと言ってくれた。とにかく一度ジュリアーナに合わせて欲しい!」

 ルーカスがぎゅっと眉根を寄せて困った顔をした。


 ロナウドが口を開いた。

 「旦那様、本当のことを話した方がいいのでは?」

 「はぁ~、王命が取り消されるのは本当か?」

 「ええ、この婚姻はすべてカトレーヌのわがままが原因の婚姻と国王も認められたので」

 「逃げられた‥」

 声は小さかった。

 「はい?」

 「だから、逃げられたんだ。最初の夜に無理やり迫ったらひどい目に合って、明け方にはもういなくなっていた」

 「無理やりって‥ったく。それで彼女は恐くなって逃げ出したんですか?」

 「ああ」

 投げやりな返事だった。

 ウソだろ!ジュリアーナと知ってそんな事を?腹の奥底で怒りがぐるぐる渦巻く。

 俺は立ちあがっておじさんのシャツを鷲づかみにした。

 「おじさん。ジュリアーナがスタールクス侯爵の令嬢だって知ってそんな事をしたんですか?彼女は!」

 おっさん、いい加減にしろよ。ジュリアーナをどこにやった?

 「なんだって?あの女がジュリアーナだと?そんなバカな‥ロナウドどうして言わなかった?」

 叔父さんが慌ててロナウドを見る。

 「旦那様、最初に申し上げたはずです。ですが、旦那様は聞く耳もなく聞かれませんでした」

 「そんな事!ったく」

 「それでジュリアーナはどこに行ったんです?!」

 「知るか!騎士から国境を越えたと知らせはあった。送り届けた護衛騎士たちが一緒にキルナート国に入ったらしい。後はお前の国の問題だろう?俺はもう知らん。王命が取り消されればもう婚姻もなしだ。後はうまくやってくれ」

 はぁぁぁぁ?いい加減な言葉にさらにのぼせ揚がる。

 俺は声を上ずらせながら尋ねる。

 「仮にも妻でしょう?」

 「ジュリアーナはまだサインしていなかった。だから夫婦ではない!」

 「ちょっと待って下さい。夫婦でもないのに無理やり?」

 おい、気は確かか?これじゃっただの色ボケじじいだろう!

 「だからジュリアーナだとしらなかったんだ!ほら、この辺境には若い女がいない。だろ?つい魔がさした。けど、あいつがあんな護身術を身に着けているとは思わなかったからな。手ひどくやられた。見てみろ、ほら、ここ。まだ青痣が‥」

 髪を上げて額を見せられた。ほんの少し薄くなった痣があった。

 「そんなの当然じゃないですか」

 俺は大きなため息をついた。そしてジュリアーナがさらに好きになった。













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