第75話 「樹海のおとぎ話」
方角も定かではない樹海を行く月華一同。
メデューから語られる「おとぎ話」。
彼女達の前に現れた敵は……
やたら、歩きづらいわねッ!」
苛立ちを隠せず、文句言って歩いているのは、メデュー。月華の面々は、北東へ向け移動していた。
「さっさと旗を見付けて帰りましょう!ったく鈴空のヤツー。戻ったら覚えてなさいッ!」
北東方面と言いながらも、実際は、正確な方向すらもわからないまま、歩む樹海。その環境は、メデューのみならず、他のメンバーにもストレスを与えていた。
そんな空気を少しでも緩和しようと、火中に足を踏み入れたのはネメアだった。
「あ、あのぉ、陽炎と別れる前に、メデューさんが言いかけたことってなんですか?」
「私が言いかけたこと?あぁ、アレのこと?アレのことは忘れて。ただのおとぎ話だから」
「おとぎ話……。興味ある」
何事にも無機質な癒華が、珍しく目を輝かせた。
「聞きたいっス。教えてください」
先頭を歩いていたカイザも話に入ってきた。
「ったく、しょーがないわね。リュアレ姉様が、私が子供の時、寝る前に良く話してくれた『蛇の王様』っていうおとぎ話よ。折角話すんだから、しっかり聞きなさいよッ!」
そうゆうと、メデューは、カイザとネメア、癒華に都市伝説のような、夢物語を語った。
「ちょ、ちょっと待ってください。もし、それが本当ならこの樹海にその蛇の王がいると?」
「まぁ、ホントならね。言ったでしょ?この話は、おとぎ話だって」
聞いた話は、信じる信じないにしても、記憶には残る。しかも、今いるのはその話の舞台となった樹海。忘れように忘れられない。記憶がそれを想起させてしまう。
だが、それは結果として、ストレスフルになっていたメンバーに再度緊張感を持たせた。ネメアがあえて火中に踏み入れた足は、蛇足ではなかった。
草木が生い茂り、光の入らない暗い湿地帯をさらに奥へと進んで行く、月華一同。リーダーのメデューが敵の気配に気付く。メデューは予め、彼女の使い蛇であるヴァナライアを放ち、周辺を探らせていたのだ。
「ヴァナライアが、敵を見付けたわ。正面400m先」
月華メンバーは、戦闘態勢に入る。だが、それをメデューが制する。
「一旦、身を隠しましょう。正面切って戦いを挑むなんて馬鹿のすることだわ。利はこっちにある。待ち伏せして奇襲をかけるわよ!」
メデューに従い、身を隠す。
「い、今のうちに防御力を付与します」
スキル「防楯」
ネメアがスキルを唱え、全員に付与した。
「さぁ、来るわよ!」
樹海の奥から歩いてきたのは、三龍騎達だった。
「この辺りで生き物の気配を感じたと思ったのだが……」
三龍騎達は周囲を警戒している。
「行くなら今ね。私、カイザ、癒華で一人ずつ仕留める。行くわよ!」
『ヴァナライア!』
花龍式『唐花』
魔法『イードル・ネロー』
メデューの使い蛇とカイザの神速の抜刀術、癒華の水魔法が三龍騎を襲う。
その時。
月龍式『望月』
突如、三龍騎の前に現れた、四人目の剣技に三人の技は吹き飛ばされた。
「やはり、奇襲してきたでござるか」
そこに現れた四人目は、龍人族長のアウラールだった。
「しかし、小僧。今、花龍式と聞こえたが、拙者の聞き違いでござるか?彼の剣技を口走るには、あまりにお粗末」
アウラールは、自分の剣技で吹き飛ばしたカイザを見下ろし、鼻であしらう。
「よくも私達をハメたわね!覚悟はできてんでしょうねッ!?」
メデューが殺気立つ。プライドの高いメデューには、相当効果の高い、まさに会心の一撃のような、アウラールの奇襲回避だった。
月華とアウラール率いる三龍騎の戦闘が幕を開けた。
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