第74話 「陽炎vs隠顕・陰顕」
ステーノを擁する陽炎が、鬼頭領達と激突する
デミヒューマン族最強と名高い、鬼族の実力とは……
「ふぁぁぁ。誰もいなぁい」
ステーノが目を擦りながら呟く。
「あたいらとは違い、ステーノ様は、相変わらず余裕ですね」
「ミー達とは、強さが桁違いだからニャ」
ハルペーとセウスは、眠たそうなステーノに変わり、周囲の警戒を行っていた。陽炎は、リュビアが医療班ということで、三人態勢で参加している、回復役がいないパーティーである。
「それにしても、三つ蛇頭の樹海って凄いですね。地元のあたいらですら迷いそうです」
ハルペーは、半分寝落ちしているステーノに、肩を貸しながら歩いていた。
「ニャ!?やっと、お客さんが来たみたいだニャ」
「ステーノ様!起き……」
セウスが気付くよりも、ハルペーが声を掛けるよりも早く、ステーノは覚醒し、既に戦闘態勢に入っていた。
「お前達、殺気が尋常じゃないよ」
ステーノが口を開く。三人の目の前に顕れたのは、身の丈3m程になるだろう、鬼の兄弟であった。
「その成り、鬼の隠顕と陰顕か」
ハルペーが、曲刀『パジャール』を抜き、身構える。
「おや?お前達は、新吉原の……、忘れたんだな」
「いちいち、雑魚の名前など覚えていられないに」
陽炎の三人と二匹の鬼が睨み合う。辺りの空気が一気に張りつめる。
「名前など、不要なんだな。これから、殺される者にはな」
「強者なら或いは、覚えてもいいに」
「強者しか、興味無しね。鬼神修羅の子分らしい」
言うと同時に、ステーノが仕掛ける。
魔法『融合・ミストイードル』
嵐が発生した。強風で身体の自由を奪い、打ち付ける水しぶきで視界を奪う。
そして、ステーノの魔法発動と共に、ハルペーが愛刀パジャールで切りかかった。
「こざかしいんだなッ!」
隠顕が、金棒を一振りする。ステーノの魔法は掻き消され、ハルペーの愛刀は、鬼達に届くことなく跳ね返された。
「ハルペー大丈夫?」
セウスが身を案じる。
「ハルペー、セウス。本気でいかないと、僕達はここで消されるよ。気合い入れて」
「本気じゃなかったのかに?お前達に、そんな余裕与えた覚えはないに」
「修羅様は、弱き者を許さない。それを排除できなかったら俺達が消されるんだな」
隠顕の不敵な笑みが、ステーノ達の身体に最大限の身の危険を知らせる。
次の瞬間。ステーノとセウスとハルペーは同時にスキルを発動した。
スキル『ガイアドーム』
スキル『描鬼』
スキル『豹鬼』
隠顕と陰顕は、ガイアドームに閉じ込められ全属性の魔法攻撃を受ける。そして、セウスの『猫鬼』は、猫の霊体を作り出し、三人に憑依させ、俊敏さをアップさせた。さらに、ハルペーの『豹鬼』は、彼女をバーサーカー状態へと変貌させ、攻撃力を限界まで特化する。
ガイアドームの効果が切れた、その刹那。ハルペーが隠顕、陰顕に襲い掛かった。ハルペーの攻撃は、今度こそ、二匹の鬼に届いた。
だが、
ガッ、キーン!!!
愛刀を振るったハルペーの手に届いた感触、もとい衝撃は、およそ生き物を切ったそれではなかった。
立ち上る霧の中から、笑みを浮かべた二匹の鬼が姿を顕す。
「これが、お前達の最高の攻撃かに?」
「お前達は、修羅様の前に立つ資格はないんだな」
隠顕と陰顕は無傷でそこに立っていた。
「だが、俺達を『金剛化』させたことだけは褒めてやるに」
「これからの成長を加味して、ギリギリ合格なんだな」
ステーノ達は、立ち尽くす。自分たちの今できる最高の攻撃ですら、鬼達には通じなかった。攻撃を仕掛けた方が敗北したのだ。これ以上無い程の敗北の仕方に、彼女達の心は完全に折られた。
「そんな青ざめる必要ないに。この結果は始めから決まっていたことだに」
「ギリギリ合格だから、命だけは取らないでおくんだな。殺したら、後で修羅様に消されるんだな」
『陽炎vs隠顕・陰顕』、決着!
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