第54話 「タイパン病院/シークレットミッション」
店が次々と出来上がり、賑わいをみせる新吉原。
だが、鈴空の野望は、それだけで留まらない。
3カ月が経ち、月華、陽炎共に、実力は格段に向上していた。そして、新吉原では、次々と新たな店が立ち並び、賑わいを見せていた。新吉原と元ゴルゴーン国が交流を持ったことで、お互いの知識や技術のみならず、経済面でも大きな成長を遂げた新吉原。さらには、ギルドを作ったことで、近隣の街や村から冒険者もくるようになり、依頼も徐々に増え、同時にこの世界の情報も流入するようになっていた。まさに、良い事ずくめである。
「さて、そろそろ次の段階に進むぞ。次の段階、それは。交通網を作る!」
交通網の整備は、近隣の街や村のみならず、他国との貿易や人々の流入をさらに加速させるだろう。
「先立って造るものを言うぞ!道路と線路だ。道路は、コンクリートで固める。線路は、現在開発中の蒸気機関車が走る道だ!造り方は、後ほど書面で配布する。では、早速取り掛かってくれ」
本日の僕は、リュアレと共に、病院の見学へ出向く予定もあり、朝から大忙しだ。そして、夜も………。ともあれ、造り方を記した書面をリアに託し、あとの采配を任せ、僕は、病院へと向かった。
「リュアレ。ゴルゴーン国にあった医療技術、医療機械は全てこちらの病院にも流用したな?」
「はい。抜かりなく整っています」
僕は、早速、病院に入る。1階は、外来、ICU、手術室が完備され、2階以上は病棟となっている。エレベーターの代わりに、スキル分岐器を応用したポルタ―ドで、2階より上へ移動する。
「すばらしい!理想通りの出来栄えだ」
「気に入っていただけて良かったです」
リュアレは、この3か月間、本当に良く頑張ってくれた。病院がここまで形になったのは、彼女の力があってこそだ。
「リュアレ。ご苦労だったな。少し、休暇を取ってもらって構わないぞ。自宅に戻って休むも良し。旅行に出掛けるも良し。自由にしてくれ」
「それでは、私は今しばらく、ここで医療に携わらせていただたいと思います。医療チームもまだ出来たばかり。ここは、私にとっての戦場です。鈴空様や妹達が訓練に明け暮れ、この国を守るための軍事力を養っているのと同じように、私もここの医療技術を向上させたい。それが私の望みです」
真面目、いや違うか。彼女は医療が好きなのだ。だからこその望み。なら、それに答えるのが、僕の役目だな。
「わかった。だが、無理はするなよ。身体が資本だからな」
「はい!心得ております」
「うん。それから、この病院の名前を思い付いたぞ」
「どのような名前ですか?」
「『タイパン病院』ってのはどうだ?」
リュアレは、僕の提案した病院名を聞くと、目に涙を浮かべ、零れ落ちないように顔を上に向けた。
「だから、このタイパン病院は、リュアレ、お前に任せる。お前を院長として、この病院を世界一の医療施設にしてくれ」
リュアレは、目に溜まった涙を拭い、僕の方を真っ直ぐと見詰め、
「はい!ありがとうございます!精一杯頑張ります!兄の名を汚さない為、鈴空様のお気持ちを裏切らない為、世界最高の病院にしてみせます」
リュアレの表情は、まだ出会って間もない仲だが、今まで接してきた時間の中で、一番の笑顔だった。そんなリュアレを見て、僕も安堵し、安心してタイパン病院を後にした。
その後、僕は夕飯を済ませ、皆が寝静まったのを確認して、国の中心街から少しはずれにある、古びた小屋へと向かった。
コンコン、ココ、コン(ドアをノックする音)
「新吉原は夢の国。竜宮城で宴会だ」
「王様、よく来てくれました!ささ、入ってくだせぇ」
僕が合言葉を唱えると、扉を開き、元ゴルゴーン国の男衆が迎えてくれた。人数は、10人程度。僕の呼びかけに賛同し、集まってくれた有志達だ。
「皆、ご苦労!それで、あの話の進捗状況はどうだ?」
「へい。順調に進んでいます。あと、2、3日で着工できるかと」
「そうか。この『竜宮城計画』は、超超超極秘任務だ。よろしく頼むぞ」
「へい。承知しておりやす」
「それで出店する場所は決まったのか?」
「へい。中心街から少し離れたところに、池を見つけやした。そこにしようと思っていやす」
中心街から離れたところにある池って、僕が紗月と魔法の属性を試しに行ったところか。
「わかった。そこで始めるとするか。次、お前達と会うのは、最終調整の段階になると思うが、ちゃんと俺の意図を汲めている。そう信じて待っていて良いんだな?」
「はい。王様の夢の一端。われらにお任せください」
「うむ。期待しているぞ」
僕は、男衆との秘密の会談を済ますと、意気揚々と自宅への帰路に着いた。
この計画は、絶対に成功させなくてはならない。ただし、内密に。が大原則だ。いずれ、この世界を僕のものとするためにも………。
翌朝、僕はシューレの自宅を訪れていた。
コンコン、ココ、コン(ドアをノックする音)
「竜宮への扉は開かれた。我、供物を欲するものなり」
ゆっくりと扉は開かれ、中からシューレが顔出した。
「は、早く、入って」
シューレは、僕を家に招き入れると、急いでカギを閉めた。
「す、鈴空。こっちだよ」
シューレは、タンスの扉を開け、ハンガーに掛けられた服をかき分ける。すると、その奥にもう1つ扉が現れた。シューレは、その扉を開き、中に入っていく。そして僕も続く。
「そ、それで、何をご所望かな?」
「スキル分岐器だ。ポルタ―ドを民間用に応用して作った機械。アレをもう1台融通してほしい」
「そ、それは、竜宮城の為かい?」
「Yes!」
「了解した。明日には、届けさせるよ」
シューレはもちろん、今回の有志の1人である。僕を含めた12人の有志達は、他の国民にバレないように、粛々と『竜宮城計画』を実行に移していた。
そして、3日後------
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