第53話 「ステーノの実力」
新吉原の軍事力強化に乗り出した鈴空。
合流した、ステーノ達の部隊と合同合宿に入るのだが………
「龍じい、始めてくれ」
「それでは、これから、国王直属の部隊の合同強化合宿を始める!でおじゃる」
うんうん。合宿ね。良い良い。合宿って聞くと心が躍る。しかも、僕とカイザと龍じい以外は、皆、女子!ハーレム状態だ!
「の、前に、国王直属部隊という呼称では、締まりがないでおじゃる。そこで、鈴空に国王として、部隊名を決めてもらうでおじゃる」
え?急!突然、そんなこと言われても。うーん………
「そ、そうだな………。カイザ達の部隊は『月華』、ステーノ達の部隊は『陽炎』でどうだ?」
ちょっと、カッコつけすぎたか?
「意味はわかりませんが、カッコいいっス!」
カイザが眼を輝かせて反応した。
「んー、いいんじゃないぃぃ」
ステーノは相変わらず、眠たそうだ。
「では、月華、陽炎の諸君!始めるでおじゃる!」
そして、龍じいの厳しい指導が始まった。
「やっと休憩か。龍じいのやつ飛ばしすぎじゃないか?」
「きっと、これでも足りないくらいじゃろう。身を持って、鬼神修羅の力を体験した龍じいが一番わかっているはずじゃ」
紗月と楽しくおしゃべりをしていると、メデューが傍に寄ってきた。
「ちょっと………。私は、どっちの部隊に入ればいいのよ?」
メデューに役割を与えることをすっかり忘れていた。リュアレにも一応、頼まれているしな。
「メデュー。お前はどちらの部隊に入りたい?」
面倒だから、本人の意見を尊重しよう。どうせ、僕の提案には、ブーブー文句をつけてくるだろうしな。
「じゃあ、月華」
「え?」
メデューは、僕の予想外の返答をしてきた。てっきり、元ゴルゴーン国の出身だからとか、ステーノと一緒が良いとか言って、陽炎を選択すると思ったんだが………。
「なによ?ダメなの?」
「い、いや、メデューがそれで良いなら月華に入ってもらって構わない」
「全く、あんたは男なんだから、はっきりと言いなさいよね!」
自分で選ばせても、文句は言うのか。
「龍じい!メデューは月華に入る。面倒見てやってくれ」
「よかろう。蛇の娘よ。わしは厳しいでおじゃるよ」
「望むところよ!ベーッだ」
ったく、あいつは減らず口だな。ところで、陽炎のほうはどうだろう?
「ん?」
あそこで鼻提灯膨らませているのは、まさか………。
「ステーノ。お前は、ここで何をしている?」
「今日は、天気が良いからお昼寝だよぉぉ。鈴空様も一緒にどぉぉ?」
こいつ、本当に良く寝るな。これが、本当にリュアレやメデューより強いのか?疑わしさ満点だな。
「なぁ、ステーノ。お前本当に強いのか?」
「んー?どうだろうぉぉ。やる気次第かなぁぁ」
やる気ね………。ちょっとこの辺で、僕が一発ヤキ入れといてやるか!
「ステーノ!お前の強さを見たい。俺と戦え」
「えぇ、面倒くさいなぁぁぁ」
どこまでも怠け者だな。でも、実質、あの二つ蛇頭の次に強いと言われているからには、相当な実力があるのは確かだろう。
「ステーノ!戦ってあげなさい!あんたの強さを知れば、こいつも納得するでしょ」
どうゆう風の吹きまわしか、メデューが僕側についた。
「ま、あんたじゃ、ステーノには敵わないだろうけどね」
そうゆうことね。どうしても僕を蔑みたいと。いいでしょう!僕も漢だ!
「ステーノ、行くぞ!構えろ!」
「ふあぁぁ。全く、しょうがないなぁ。怪我しても文句言わないでよぉぉ」
先手必勝!僕は、眠たそうに構えているステーノに向かって切りかかった!
魔法『アース・ラール』
ステーノは、土魔法を唱えた。地面が揺れる。足場が奪われる。
だが、
「その魔法は、以前の戦闘の時に見たよ。対処できる。あんまり、俺をなめるな」
花龍式『唐花』
僕は、ステーノの魔法で揺れ動く、地面に向かって剣技を放つ。魔法が付与されていない紗月は、錆びたままだが、ステーノの土魔法を防ぐのには、十分だった。土魔法の効果が切れたのを確認し、僕は再度切りかかる。
魔法『融合・ミストイードル』
ステーノが再度魔法を詠唱した。次の瞬間、僕は、嵐で身動きが取れなくなった。強風で動きが鈍り、打ち付ける水しぶきは視界を奪う。
魔法『融合・アース・ミスト』
ステーノは続けざまに、もう1つ魔法をかぶせてきた。今度は、砂嵐。僕は、身動きだけでなく、口の中に入り込んだ砂で、満足に息もできなくなった。
スキル『ガイアドー
「ステーノ!そこまでよッ!もう止めなさい!」
ステーノが、トドメとばかりに、スキルを発動させようとした瞬間!メデューが止めに入った。
「ゴホッ、ゴホッ」
僕は、その場に膝を付き、口に入ってきた土を吐き出しながらムセかえっていた。
「折角、もう少しで決着がついたのにぃ。あー、もういいやぁ。ふぁぁぁ、寝よぉぉ」
ステーノは、止めを刺しきれなかったことに不満を漏らしつつ、また横になり、夢の中へと戻って行った。
「鈴空。あんた大丈夫?私が止めなきゃ、あんた死んでたわよ………」
メデューが、僕の元へ駆け寄り、言葉を投げかけた。
「あぁ。ありがとう。ゴホッ」
まだ、口の中がじゃりじゃりする。髪はボサボサになり、服はびしょ濡れだ。
「ふむ。ステーノか。あやつ強いでおじゃるな。しかも、最後に使おうとした、あのスキル。どんな技かは見れんかったが、嫌な感じがしたでおじゃる」
龍じいは、ステーノの強さを認めていた。だが、身を持ってその強さを体験した僕は尚更だった。
「怠け者でも、実力は本物だな」
今の僕じゃ、とても敵いそうにない。
「メデュー。最後にステーノが使おうとしていたスキル。あれは? 」
「あれは、『ガイアドーム』。球体の中に敵を閉じ込め、融合した全属性魔法を放つ。魔法融合も強いけど、あのスキルがあるから、ステーノは、ゴルゴーン国で3本の指に入る武力を誇れたのよ」
魔法が融合して使えること自体、始めて知った僕には、途方もない技のように思え、同時に身震いした。
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