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Part.26 不和の原因


個室に到着すると机と椅子を全員で並べ、壁際にアイと祖父の席を作った。


場が整ったところで祖父は壁際の席に座り、話し合いを始めるよう促す。


「ここは他の個室より壁を厚く作っておるで大声を出そうと他のもんには聞かれやせん。思う存分言い合えば良いさ」


後はそちらの番だと掌を見せて冒険者達が話し出すのを待つ。


騎士と修道士が顔を見合わせ頷き合うと、修道士は兎少年を見つめて口を開いた。


「話し合う前にまずしなくてはならないことがあると思うんだが…分かるな」

「……………うん、分かる」


兎少年は椅子から立ち上がると狩人の女性の横に立った。


「イヌチヨさん、その…あの………」


自分の服を握ったり放したりしながらも言葉を続けていこうとするが、罪悪感から先に進ませられない。


イヌチヨと呼ばれた狩人は兎少年に身体を向けて優しく微笑む。


その表情を見た兎少年は涙を浮かべて勢い良く頭を下げた。


「ハーフなんて言ってごめんなさい!」


普段は元気良く立てているであろう兎耳を力なく垂らして謝罪する姿を見せる。


イヌチヨは隣の修道士を見て頷くと、彼もそれ以上言うつもりはないのか目を伏せて了承の意を伝えた。


彼女は少年の肩に両手で触れて上半身を起き上がらせると椅子から立ち上がり兎少年を抱き締める。


「ちゃんと謝れて偉いね。気にしてくれてありがとう」


抱き締めたまま頭を撫でると彼女の身体に手が回され、兎少年がめそめそと泣き始めた。


その状況を面白く無さそうにする修道士と、仲直りが出来てよかったと喜ぶ騎士と踊り子。


ハーフについて詳しく知らないアイはその状況についていけず、祖父にどういうことなのかと視線を送ると小声で教えてくれた。




ハーフとは4つの種族のうち両親がそれぞれ違うことで生まれてくる可能性のある人々のことである。


一般的にはどちらかの種族として生まれるため非常に珍しい。


数百年前にギルドという機関が正式に設立され、共に危機を乗り越える機会が増えたことで種族の垣根を越えて結婚まで到達する若者が増えたことで、生まれてくる子供の中にどちらの特徴も受け継いだ子供が現れ始めた。


しかし種族間についての交流は認めるものの子供を設けるなんて理解できないという層も一定数存在しており、その中でも口がさのない者がハーフと呼んで忌み嫌っていることを教えられた。


アイには伝えられなかったが、ギルド設立の前からごく少数ではあるが異種族間で生まれてくる子供は居た。

多くは両親のどちらかに偏るため、連れ子として誤魔化していたのである。


絶対数が少ないことでハーフが生まれても隔離されていたので周知されていなかったのである。




気持ちを落ち着けた兎少年が恥ずかしそうにイヌチヨから離れると元の席に座ってアイの方をちらりと盗み見る。


背丈が似てることから同じぐらいの年齢かと考えた彼が同世代の女の子に恥ずかしい姿を見られたことを気にしたのだった。


祖父の話しに集中していたアイは気が付くことができず、聞き終えた頃には兎少年も居住まいを正して他の冒険者達に顔を向けていた。


場が馴染んだことで騎士が兎少年に問いかける。


「メリスが昨日の失敗を取り戻そうと一生懸命なのは分かるよ。ただそれは、どうしても独りで動かなくてはならないことかい」

「ウインさん、でもオレは…オレも冒険者になりたいんだ。あのくらいの失敗を取り戻すぐらいは独りでやらなくちゃいけないんだ!」

「…そう、考えてしまったのか」


メリスが落ち着いて言葉を返せたことに彼は喜ぶ。

しかし、内容については自身にも身に覚えがあることゆえある程度分かっていたものの落胆の色は隠しきれない。


理解を示してくれないと感じたメリスはまた憤りを感じて立ち上がろうとするが、壁際で同世代の女の子が聞いていることを思い出して身を乗り出すのを我慢する。


彼が次の行動を取る前に、これまで話しに入ろうとしていなかった踊り子が割り込んだ。


「良い機会だからしっかり話しましょうよ。冒険者になるために何が大事かってやつをさ。あの翁も聞いてくれてるんだし、そちらのお嬢さんも………気になるでしょう?」


踊り子はアイと祖父の方にも視線を流し、最後にこれまで見せたことのない獲物を狩る目をメリスに向けていた。




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