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Part.22 男の過去(10)

※一人称視点が入ります。


送り出してくれた親友を救えず、護りたかった仲間を護れなかった。


結果を言ってしまえばオレは失敗して、オレが仲間を殺したんだ。






ユウキが教えてくれた貴族に会いに行った後はとんとん拍子に話が進んでいった。

やはり治療魔法というのは珍しいものだったのだろう。


交換条件に初級魔法を教えて貰い1週間掛からずに会得ができた。

そこから5日掛けて治療魔法を研究し分かったことがあった。



ユウキを助けられないことが、分かってしまった。



彼を助けるためには傷を塞ぐ前にジロウが新しく開発した消毒を行う必要があった。

ジロウの記憶の中には最初からあれの症状への対処法はあったのだ。


ユウキは破傷風という病気だった。


治療を施すための時期は過ぎてしまった。

まして手術なんて専門知識をジロウは持ってない。


だから、帰ろうと思った。


だけど、帰しては貰えなかった。


貴族という悪魔を彼らは正確に認識できていなかったのだ。

漫画や小説という記憶の中では貴族は馬鹿だったし幾らでも出し抜けていた。


けれど実際は違う。


恐ろしく自尊心が高く卑怯で狡猾、自分の利になるものは情まで利用して最後まで搾り取る。

それがこの《世界》の貴族達だった。


最初はジロウを懐柔しようとしたのだろう。

貴族は次女を当てが負うとしたが、次女は失敗し幽閉された。


長男は自分より能力が高い孤児に劣等感を抱き、さらに当主に気に入られているように見えて我慢ができず、殺そうとしたところを見つけられ、当主の怒りを買い遠方に幽閉された。

その日から次期当主を作るためなのか、夜になると顔を青くした夫人が当主の部屋に入っていった。


それだけジロウの持つ魔法の意味は大きかった。


逃げようとしたがアイリ達のことも調べ上げていた貴族に脅されて断念せざるを得なかった。

しかし月に1度だけアイリ達の誰か1人と会わせて貰うこと、アイリ達の身の保証と秘密裏に支援して貰えるように約束を取り付けることができた。


これが大きな失敗だった。


孤児に条件を付けられるなんてことを黙っていられる貴族なんて居るだろうか。

しかもその孤児から魔法を教えて貰わねばならないという屈辱の上にだ。


だが何人もの貴族子息を相手に、見たことも聞いたこともない魔法を教えられるという切り札を手に入れたことで何とか我慢できていた。


その貴族子息の親とはどういう話し合いがあったのかは理解できないが、相当な利益を生んだのだろう。

魔法を教えるということはそれほどの価値があるのだから。


ジロウも先生と呼ばれ表面だけでも慕われているのは気分が良かったのもあった。


ここで動いていればジロウにとって最悪の結末にはならなかったのだろう。




貴族に魔法を教え終わった後に、アイリ達は貴族に狙われることになった。


密命を受けた私兵達は、朽ちた教会を取り囲み誰も逃がさないようにした。


誰一人生かしてはならぬ。

奴等は私の自尊心を踏みにじったのだ。


貴族はそう言ったのだという。


間もなく虐殺が行われ、私兵が居なくなった直後にジロウが辿り着いたのだ。


そして変わり果てた仲間と、更に朽ちた様相となった教会の中を進み、倒れていたアイリを抱き起したのだった。






「ジロウ、自分を…責めるなよ」


背中の大きな切り傷から血が…止まらない。


「貴族に関わろうとしたあた…げふっ…がわるか…たんだ」


あんなに勉強したじゃないか!

あいつの死を知って、それを克服するため勉強し続けてここまでの力を手に入れたじゃないか!


…なのに…なんで助けられない。


「泣く…なって……はっ…はっ……うぐっ、図体ばっかり大きくなったのか?」


ああ、ああそうだよ。だからオレを置いていこうとしないでくれ。


「最後だからさ…っ…言えるうちに…てくれ」

「聞くから…全部オレが全部叶えてやるから!もう約束を破ったりしないから!」

「はは…そんなかなし…そうな顔すんな、ばか」


もう目が霞み掛けているのか。

勝気なお前の目が好きだったのに、そんな弱々しくオレを見るなよ。


「…っ…はあ、いいかあたしはあんたのこと………………」


目をつむるな、息をしろよ!


「わる…い、意識が飛んでた」

「気に、するな」

「あたしはジ…ロウのことが……だいす…きだぞ」


「あたしを…護るって約束したあんたは……さいっ…こうに…か…こよか…た」




「……なあ、よか…たらキスしてよ。夢だっ…んだ」


「幾らでも、これから幾らでもしてやるよ!」




「はは…も…かい、あの約束もきか…て」


オレは…オレ、は。




『もう大丈夫だ。君はオレが護るから。だから、もう大丈夫だ。』




「あたし…もジロウを、護るよ。愛してる」

「愛してる、アイリ」





彼女の唇は冷たかった。


…オレの言葉は、最後まで聞こえていたのかな。




これでジロウの過去話は終わりになります。

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