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Part.21 男の過去(9)


「悪い最後が聞き取れなかった」

「アイリが好きだ、戻ってきたら付き合ってくれ」

「はああああ、ばっかじゃないのあんた!」


アイリは思ってもいない言葉に驚き、混乱する頭を落ち着かせるために大声で罵倒した。

それを受けても自信満々といった体で受け流すジロウをきつく睨みつける。


「オレは本気だ」

「いやいやいやいやいや、意味分かんない。なんでそうなるの」

「最初に言っておかなきゃ不安になる、お前は良い女だからな」

「清々しい顔して言ってんのこんの馬鹿は!」


親指を立ててこちらへ向いている手をはたき落とし、彼女は顔を真っ赤にさせる。


自分がそこそこの容姿をしているのは理解していてそれを利用もしている。

それを意識している間は余裕で対処が出来ていた。

しかし真面目な場面で身構えもしていない状態からの告白は誰だって恥ずかしくなるものだ。


「だからなそのときはオレを選んでくれ、ユウキでも他の仲間でもなくオレを選んでくれ」


頬に手を当て悶える彼女の肩を掴み、ジロウは真正面からぶつかっていく。


過ごした時間はユウキや他の仲間達に叶わない。

自分では手に入らない絆だってあるだろう。


だからこそ自分のことを考えてくれている今しかない。

ここで落とさなければ次にいつ言えるのか分からないのだ。


「え、選ぶってそんな…なんでそんな話しになるんだよ」

「オレはこれからユウキに宣戦布告をして、その手紙を持って貴族のとこに行かなきゃならない」

「ユウキに…ってなんであいつが出てくるんだ」

「もう面倒だからばらすけど、あいつもお前が好きなんだぞ」

「はあああ!?」

「もしオレが居ない間にユウキとくっついたなんてことになったら死にたくなるからな。いや死ぬからな絶対」

「いきなり物騒な話しにするな!」


さらに顔を真っ赤にさせて彼女は吠える。

ジロウはそれが彼女らしいと笑って少しでも楔を打ち付けれたことを喜んだ。


最初の出逢いを考えれば十分な進歩である。


「アイリ聞いてくれ。オレは君を護る。だからもう大丈夫だ」

「ジロウ…」

「もう誰からも君を傷つけさせたりしない、絶対に護り抜くから期待して待っててくれ」


黒髪の少年は赤髪の少女を力いっぱい抱き締める。


彼女からの返答はなかったが何にせよ待っててくれるだろう、そんな確信が彼の中に浮かんだ。








まだ真っ赤になったままのアイリを残して部屋から出ると、ジロウはそのまま彼の元へと足を運ぶ。


起きているような気がする。


彼が横になっている部屋の前に立つと深呼吸を行った。


「ユウキ、起きてるか」

「入ってこいよ」


起きて、待っていた。


ユウキはベットに腰かけてこちらを見つめている。


「…アイリから聞いたのか」

「聞いて、答えも伝えてきたよ」

「はっ、あの根性なしが良い面構えになったもんだ」

「お陰様でな、いまなら誰にも負ける気がしない」

「よく言うぜ………まあ、座れよ」


ジロウは椅子に腰かけ、2人は向かい合ったまま静かに時間を共有していく。


ただ見つめ合っているだけだったがお互いの伝えたいことは分かる。


不思議と2人の間では言いたいことは分かり合えるのだった。


それもユウキの咳で途切れられる。


「ごほごほ…こんな風に起き上がってお前と話せるなんてな」

「ああ、不思議だ」

「オレのことも暴露しやがって、ばかやろう」

「お前が言うのが遅いんだ、あんぽんたん」


『『クク、アハハハハハハ!』』


「はあぁぁ、それでいつから行くんだ」

「明日の昼に向こうに連絡を取って、早ければ明後日から居なくなるつもりだ」

「そうか…早いな」

「遅すぎるぐらいだ」


ユウキには恐らく時間が少ない。

病名までは分からないけれど、記憶を頼りに症状を当てはめていけばそれくらいは分かった。


「行ってこい、そんで戻ってきたらアイリがオレのモノになってることに絶望しろ」

「行ってくるよ、戻ってきたらアイリがオレに泣きついてくるのを黙って見てろ」



『『言ってろ!』』





「それじゃ今日はもう寝るわ、下手に起きてて余計体調崩したくないしな」

「ああ、オレも寝る。明日はやることが一杯だからな」





「すまん、オレが居ない間はアイリのこと頼む」

「頼まれた、すぐ帰ってこい親友」

「ありがとう親友」






翌日の昼にジロウは荷物をまとめて貴族に会いに行き、明後日にはアイリ達の元から離れていった。




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