瞑想世界20
欺瞞と嘘に塗れたっていいのです。私は自分の信じた愛を貫きたいと、成実ちゃんは言った。
成実ちゃんが口を開いた。
「自分を欺く事が私の愛ならば、私に愛というのは無く、私は村瀬さんを好きでは無いのかしら?」
田村が答えないので僕は慌てる風情で口を添えた。
「いや、それはないと思うよ、成実ちゃん。君は村瀬を愛しているからこそ、ここに来たのだから」
自分の不始末を歎くように成実ちゃんが続ける。
「私は村瀬さんを愛している事を、道はそれしか無いと、愛の本来あるべき姿を盲信して、自分を欺き、村瀬さんを救出しにここに来たのならば、私は本当に救いようが無い馬鹿という事になりますよね」
僕はやっきになり、成実ちゃんにアドバイスした。
「いや、君の行いは村瀬への真実の愛だし、それは偽りのものでなんか絶対に無いと、俺は思う」
田村が僕の言葉をフォローする。
「時空間に欺かれたって、心を単独の存在と考えた場合、心はその単独性故に騙されず、至高の愛を享受する事は可能だからな。俺はそう思う」
成実ちゃんが田村の言葉を否定した。
「詭弁をろうするのは止めて下さい。私は私の愛を信じるしか道は無いから、村瀬さんを救出しにここに来たのです。だから私は時空間に欺かれたっていいのです。それが嘘の愛でも、私はその愛を信じるしか道は無いのだから」
僕はしきりに頷き言った。
「そうだ。それは成実ちゃんの言う通りだと思うよ。嘘の愛でも、その愛を盲信すれば、それは本当の愛になるしな。その本当の愛を己自身が欺けば、それは心の死を意味するじゃないか」
成実ちゃんが一つ息をつき言い切った。
「欺瞞と嘘に塗れたっていいのです。私は自分の信じた愛を貫きます」




