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彼氏に殺された私の七日間。  作者: 三久田ともかさ


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私の居場所


 また、あの女の人が来た。


 昨日も来ていた。

 今日も来た。

 毎日毎日、どうして私の家に来るんだろう。


 涼太は何も言わない。

 むしろ、女の人が来ると少し安心したような顔をする。

 私がいなくなって、寂しいのかな。

 だったら、仕方ないのかもしれない。


 でも。

『……そこ、私の席なのに』

 女の人は、いつも私が座っていた場所に腰を下ろした。


 涼太の隣。

 テレビを見るときも、ご飯を食べるときも、私が座っていた場所。

 女の人は当たり前みたいに座っている。

 涼太も、何も言わなかった。


『ねえ、涼太くん』

『そこ、私の場所だよ』

 もちろん、返事はない。

 テーブルの上には、お弁当が2つ並んでいた。


 コンビニで買ってきたものみたい。

 涼太はあまり食欲がないのか、箸が進んでいなかった。

 顔色も悪い。

 昨日より、少し痩せたように見えた。


『……ちゃんと食べなきゃ駄目だよ』

 涼太は仕事が忙しいと、すぐに食事を適当に済ませてしまう。

 だから、いつも私が作っていた。

 野菜もちゃんと食べてほしかったから。

 好き嫌いが多い涼太に、少しでも栄養のあるものを食べてもらいたかった。


『ねえ、ちゃんとご飯作ってあげてよ』

 女の人に話しかけてみる。

『そんなお弁当ばっかりじゃ、身体に悪いよ』

 女の人は私の声に気づかない。

 涼太の肩に寄りかかりながら、テレビを見て笑っていた。


 どうして、笑えるんだろう。

 涼太だって、こんなに苦しそうなのに。

 私は死んじゃってるのに。


 ◇


 夜になった。

 涼太はお風呂に入らなかった。

 女の人も入らなかった。

 そうだよね。

 浴槽には、私がいるんだもんね。


 2人は寝室へ向かった。

 私も、ついていった。

 そこは私の部屋だった。


 お気に入りのカーテン。

 少し奮発して買ったベッド。

 涼太と一緒に選んだ枕。

 全部、私のもの。

 女の人がベッドに腰を下ろした。


『……あれ?』

 涼太も隣に座る。

 女の人が彼の腕に触れた。

 そして、優しく抱き寄せる。


『……やめてよ』

 涼太は拒まなかった。

 女の人が笑った。

 涼太も、少しだけ笑った。


『ねえ』

『そこ、私のベッドなの』

 女の人が横になる。

 涼太も隣に横になった。


『やめてよ』

 私は何度も繰り返した。

『そこは私の場所だよ』

『私のベッドなんだよ』

『……私の涼太くんなんだよ?』


 2人には聞こえない。

 私の声は、もう誰にも届かない。

 やがて部屋の明かりが消えた。


 暗闇の中で、2人の声が聞こえる。

 私は、その声を聞いていた。

 聞きたくなかった。

 でも、耳を塞ぐこともできなかった。


『……涼太くん』

 返事はない。

『私、まだここにいるよ』

 それでも、返事はなかった。

 私は自分のベッドを見つめた。

 そこには、もう私の居場所がなかった。

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