#93 Einen Freund, geprüft im Tod;
全てをゼロにする魔法と聖なる業炎は魔導皇帝に直撃した。リン・シャオランは確実な手応えを感じていた。この攻撃で立ち上がれた存在など過去誰もいない。もし、この攻撃で立ち上がる存在がいたのであれば白旗ものかも知れない。
『ジース・ド・ラパーレ』
リンは油断は一瞬もしていなかった。意識を魔導皇帝だけに持てる全てを全力で注いでいた。この世界に転生して数百億年、王に座して数億年、幾億の死線を越えてきて今、俺の攻撃は確かに直撃したが、魔導皇帝には届かないらしい。
ゼロがゼロじゃなくなる瞬間に、自身の体が貫かれているのに気づくまで数秒かかった。正直な話、何をされたのかすら俺はわからない。自身の体は最硬度の防御魔法で幾重も固め、存在する全てをゼロにし、対象は完全に無力化できた筈だったのだ。
何が起きた、と思ったときは全てが終わっていた。
意識が遠のく、死ぬ感覚は転生する前の遠く遠い記憶が知っているような気がした。
「リン!!!!」
到着したハザマが声を上げる。
ゼロの魔法が消えて逝く、リンの命が消えて逝く。
「蘇生魔法を!」
「俺の蘇生魔法が効かない。こんなこと有り得ない」
エヴナが蘇生魔法をハザマに促す。
だが、俺の蘇生魔法が発動しない。魔気ではなくて自身の魔力で発動しているのにも関わらずのにだ。
「魔導皇帝!貴様何をしたぁぁぁああ!!!」
「魔気消失の対応は見事なり。だが、それだけでは我の魔導には遠く及ばぬ、蘇生に掛かる全ての魔法は我の手中にあり」
「クソッ!!!」
ハザマは自分の手の中で冷たくなるリンを抱きしめながら、魔導皇帝を睨みつけた。リンは一撃で死ぬような存在では本来無いのだ。
万が一自分が死んだ場合でも緊急時には即座に蘇生が出来るように準備はしているのに発動しないのだ。魔法もアイテムも。全て無効化されている。この戦場ではアイテムもただのガラクタにしか過ぎないというわけか。
怒りと同時に次は自分が死ぬ番だと悟った。
ポラリスの仲間であるリノという女性は皆に言った。私たちは死線の上を歩いていると。
冷たくなったリンを見て現実が追いついた。
「ハザマ..」
「ああ、エヴナすまない。少し取り乱したようだ。もう大丈夫」
「ハザマさん」
この世界で最強の一角が今死んだ。ソラがリンの死亡を観測した。出会う形が違えば互いに楽しい関係になれたのかも知れない。同じ同郷の者同士として。
「強き者らよ、もう終わりか?」
魔導皇帝という存在がリンの死に目を吹き飛ばすぐらい圧倒的に空間を震えさせた。
「お姉さま!全員で行きましょう」
「策はあるのか?」
「いえ、策はあの魔導皇帝には力でねじ伏せられてしまいます。あれは次元を超えた存在です、悔しいですが」
リノが悔しそうに魔導皇帝を睨んでいる。
「私が先行するわ」
「エヴナ、危険だぞ」
「危険?ここに来た時点で危険は承知よ。それにあのリンを一撃で殺した存在なのよ。次は私たちの誰かかも知れないし、自分かも知れないことぐらい覚悟は出来ているわ」
冷たい瞳の奥に燃えるような意思を感じた。
「わかった、エヴナ先攻後、リノ、僕とハザマさんとで攻める」
「下らぬ一撃で屠ろう」
「やってみろ!!ソラ、虚数空間を展開!」
《虚之神:虚数空間を展開》
この星全域を虚数空間へ強制的に展開して、強制的に全員をMultiverseの権限で虚数空間へこの世界にいる観測した全員を跳躍させた。魔導皇帝の力を吸収したおかげでこの世界全域の個人を観測するまで精度を上げたソラには造作も無いことだった。
魔導皇帝も僕のMultiverseや虚数空間に対応出来ていないようだ。
「強き少女よ、余興か?」
「いや、余興は無い。全力でお前を倒す舞台を整えたところだ!!」
「ポラリスありがとう!行くわ!」
発動後、エヴナがタイミングよく先攻した。
「お姉さま、行きましょう!」
「ああ」
「俺もエヴナとともに先攻する。後方からの援護期待しているぞ。間もなく他の奴らもここに来る筈だ」
「ハザマさん、この空間は僕が造りだした虚数空間です。全力を出してもこれ以上街や星への被害は最小限に済む筈です」
「あはは、少女にまさか舞台を用意されて、言われるとはな。ああ、ポラリスさん、アンタは凄いよ。全力で力を解放させてもらう」
ハザマさんはリンをそっと地面に横になさせると、エヴナの後を猛スピードで追っていった。
直後、魔導皇帝の先から巨大な閃光が衝撃と轟音が轟いた。おそらくこの感じはエヴナの究極特異技能だ。
《敵、未だ健在》
また、巨大な閃光の直後に巨大な閃光が弾けた。轟音と衝撃で大地が抉れて消えていく。恐らくハザマさんの力だろう。
二人の攻撃が魔導皇帝に隙を与える暇を与えるまでもなく、轟音と閃光が交互に連続していく。
リノが『百万鏡』を発動させた。多分、虚数空間で仮想空間を構築はしているが、今この空間にいる敵も味方も含めて全員が本気を出して何かの大魔法か力を発動させたら、虚数空間とはいえ保てる自身は無いが無理や無茶は最初から承知。
ようやく発動できたこの虚数空間内で決着がつけば御の字だからだ。
全天に巨大なレンズが広がり敷き詰められている。
これから大魔法使いが見たことのない、リノという存在の攻撃を目の辺りにする。
「行きます!」
『外成神』
巨大過ぎるその閃光の柱らが全天から降り注ぐ。
僕は星が蜂の巣にならないように地面ギリギリでMultiverseを発動させる。
今は模擬戦では無いので最初の制限やら条件やらは全て解除してある。だから、吸収できる分、死ぬときは誰か死ぬ。
制限をつければ、誰も死ぬことは無いが、同時に魔導皇帝は倒すことは出来ない。
これはジレンマだ。
この戦場において何故か生殺与奪を自分が握っているような感覚になる。これは明らかに実践経験不足から来る感情だ。人が死ぬ、誰かが死ぬ、それは僕かも知れないし、リノかも知れない。もしかしたら、リンさんみたいに大魔法使いの誰かかも知れない。ライバルと言ってくれたエヴナかも知れない。
色々な感情が湧き上がってくる。
死線の上を歩いているんです、リノの言葉が頭に響く。
そして、眩い光と轟音が太陽が鳴くように空間全体を揺らした。
虚数空間に莫大な力が還元されていく。全ての力が僕の進化に自動的に還元される。
リノが放った収束したあの光が魔導皇帝に直撃する。
《敵、未だ健在》
「時間切れだ」
「え?」
「君が、ポラリス・ステラマリスだね、私はパルム・エノカ」
時間切れ?どういう意味だ?
加速した思考が完結しない。探していたパルム・エノカさんが目の前にいる。もの凄い存在感を感じたと同時に終わりの鐘が鳴ったような気がした。
「彼奴の狙いは、君だ。ポラリス・ステラマリス」
今までみた閃光のなかで一番巨大な閃光と轟音と衝撃波がこちらまで届いてきた。踏ん張らないと気を少し緩めただけで消し飛ばされそうだ。
そして、ソラの報告が聞こえてきた。
《エヴナ、ハザマ死亡を観測。同時にリノへの重大な損傷を観測》
「え?」
視界も頭も真っ白になった。
◇
Küsse gab sie uns und Reben,
Einen Freund, geprüft im Tod;
Wollust ward dem Wurm gegeben,
und der Cherub steht vor Gott.
自然は口づけと葡萄の木と
死の試練を受けた友を与えてくれた
快楽は虫けらのような者にも与えられ
智天使ケルビムは神の前に立つ
Die Symphonie1 Nr. 9 in d-Moll Opus.125,




