#94 Such' ihn über'm Sternenzelt!
エヴナが死んだ?
リノが重大な損傷を?
ソラからの一言の報告から頭がうまく回らない。そして、僕の目の前には探していた世界最強の大魔法使いのパルム・エノカさんがいる。エノカさんがいれば、この状況を変えてくれるかも知れない。あの魔導皇帝を倒してくれるかも知れない。
「ステラマリス、君が考えていることは出来ない」
「え?どうしてですか?」
「君の本来の目的は何だ?どうしてこの魔法の特異界へ来た。大きな目的のためだろう。この旅は始まったばかりじゃないのか、リノ・ノノのことは事前に聞いている。二人組という様子を見るに察するには材料は充分だ。それに私だ」
「そうです!パルム・エノカさんはこの世界で最強の大魔法使いなんですよね!それなら僕らと協力してあの魔導皇帝を倒しましょうよ。どうしてダメなんですか、どうして出来ないんですか?」
「ポラリス・ステラマリス、よく私の話を聞いて欲しい。この世界はもうじき終わる。あの魔導皇帝は単なる小さい機会にしか過ぎない」
「僕の質問の回答になっていませんよ」
「時間が無い。手短に端的に言おう。ポラリス・ステラマリスが死んでも世界は終わる。そして、私が死んでも世界は終わる。そして、確実なことは今あの魔導皇帝を倒すことが君の本来の目的じゃないということ」
「僕やエノカさんが死んだって蘇生魔法を使えばいいじゃないですか!」
「残念ながら蘇生魔法は私やステラマリスには効かないんだ。私はこの世界で魔法には長けてはいるが全能の神ではない。効かないというのは語弊がある、私を蘇生させるためには私と同等の魔法使いかまたは上位の存在しか蘇生が出来ないのが現実なんだ。ステラマリスの場合は特別でね、他の他世界から来た存在へには蘇生魔法は無効化されてしまうんだ。そうしたらこの世界も他の特異界も終わってしまう。そして、あの魔導皇帝にも私以外にも充分に立ち向かえる存在はこの世界にはいる」
「それなら、エヴナを!エヴナはこの特異界へ転生してきた存在です。きっと戦力になると思います。どうにか蘇生をしてください」
「実はもう蘇生の魔法は掛けているのだが、蘇生されないのだ。恐らくあの魔導皇帝の力だろう。蘇生魔法すらにも干渉してくるとは化け物の域を超えている」
「それじゃ、エヴナは」
「残念だが、私や他の者でも蘇生は不可能だ」
全身の力が一気に抜けた感じがした。これが絶望、これが放心状態というのか。僕のことをライバルと呼んでくれたのは彼女だけだった。気は強かったが嫌みがないむしろ清々しいぐらいの冷気を纏った女性だった。もはや過去形でしか彼女を語れない自分がとても悔しい。
「ポラリス・ステラマリス、その悔しさをバネにしなさい。この状況で気を保てただけでも貴女は充分立派だわ」
パルム・エノカさんの手が少し震えている。そうか、彼女も悔しいのか。それはそうだ、リンやハザマという同じ大魔法使いの仲間を失ったのだから。
「お姉さま...」
「リノ!大丈夫か?!」
「ええ、油断したつもりは無かったんですが、あの敵はとても強かったです。私の真核で周辺の原子を組み替えて再生しているので修復にはそんなに時間は掛からず修理が出来そうです。あと、そちらの方はどなたですか?」
「パルム・エノカさん!僕らが探していた人だよ、リノ」
「流石はお姉さま、ようやく私たちの目的がようやく達成されましたね。初めましてパルム・エノカさん、リノ・ノノと申します。リノとお呼びください。貴女を迎えに来ました」
「初めまして、リノ・ノノ、そして改めてまして、ポラリス・ステラマリス。対等でいこう、私のことはパルムでいいわ」
「早速ですが、パルムこれからどうする」
リノが真剣な目でパルムの目を見る。
「あの魔導皇帝の攻撃はこの星全域に及ぶから次の攻撃が来るまでに次の世界に渡ろう」
「僕の能力をご存じだったんですか」
「この世界にポラリスやリノが来る前に未来魔法で私に来訪することはある程度予測していたからね。そして、私の未来予知魔法でも今の状況は読めない状態だ。この魔法の特異界においては今が正念場なのかも知れないな」
「戦うという選択肢は本当に無いのですね」
「ああ、あの魔導皇帝でポラリスか私のどちらかが死ねばそれで他の特異界もこの特異界も守れずに破壊尽くされるだろう。これはこの世界だけの問題だけでは無くなってきている」
《主、パルムの言う通りです。即死耐性はありますが、敵の未知の攻撃を受けて主が死ぬ可能性が99%の確率と演算結果が出ました。リノと共有した情報からもこの戦闘を避けることが最適解と結論されています》
「そうか」
特異界は平行世界が存在しない唯一無二の特別な要の世界。無限数多の世界の核を担っている世界だから決まっている未来は絶対というわけか。
敵は大魔法使いを圧倒し、倒し、今も蹂躙しようと他の魔法使いと戦闘している。
「パルム、ここは任せて」
「リリアン!生きていたか」
「当たり前よ、さてあの魔導皇帝には言いたいこととこの国をボコボコにした代償を支払ってもらうわ。ポラリス・ステラマリス、聞きなさい!あなたはパルムと世界を跳躍して次の未来へ行きなさい。次の世界にもあの魔導皇帝並の実力者やそれ以上の存在と会うかも知れないけれども、貴女なら初対面だけど不思議と大丈夫な気がするわ」
「確かこの国の国王のリリアンシュナーベル陛下」
「こんな状況になって立場なんてどうでもいいわ。貴女にもリリアンと呼ばせてあげる」
「リリアン、頼めるか!」
「パルム、任せて。あの円卓会議は無駄じゃない。むしろ先日の円卓会議通りの体勢になってきている。今、援軍で大魔法連盟の序列1位を含むこの世界の実力者がここに集結しようと集まってきているから何とかなるわよ」
「リリアン、すま..ッ」
「パルム、貴女は貴女の務めを果たして」
「ああ」
「リリアン、ありがとうございます!」
「早く次の世界に行きなさい、そして、生きなさい」
これが一国の国王の覇気か。凄い圧力だが神々しいように見えたのは気のせいじゃない。きっと彼女自身の器の大きさだろう。
「リリアン、後は頼んだ。死ぬなよ」
「早くこの世界へ戻って来いよ。そのときは沢山奢ってもらうからな!」
「ああ!!」
上空では巨大な閃光が幾つも広がる。衝撃波も凄い。
大気が不安定になり大きな竜巻も出来ている。これは天変地異が起きているみたいだ。
「ポラリス、私たちを次の世界へ」
「お姉さま、私も準備OKです!」
リノから次ぎの特異界の情報が流れ込んでくる。座標を確定。
「皆さん、これ以上絶対に死なないでください!」
大魔法使いや本戦の冒険者も僕の声に耳を傾ける。
無言の頷き後、魔導皇帝へ向かって行った。
「させぬ!」
『クラウース・リ・ウーガ・オージ』
今まで以上に巨大な魔法陣が全天を覆い尽くした。もはや驚かない。
「そんな程度の大技、私と力比べしたいと」
「ニコラ・エヴァノヴァ!!」
「じゃあね、パルム。後はこのお姉さんに任せなさい」
「パルム様、後のこの世界はお任せを」
「ニコラ、スイスイ...頼むッ」
《リノとの回廊経由での情報を基に次特異界座標確定完了、多世界跳躍を開始》
パルムはこの世界に転生する前に経験したような懐かしい感覚に全身を覆われていた。これが、多世界跳躍。頭に声が聞こえる。そして、跳躍する瞬間にニコラの声と姿が一瞬見えた。
『無限魔法:超限螺線:突量』
シュパン!!
「行ったか!」
「行きました」
「行ったようね」
ニコラ、スイスイ、リリアンが口を揃えて言う。
「さぁ、勝負はこれからだ!魔導皇帝!!」
「不届き」
未知の異次元魔法と無限の魔法が上空で衝突した。パルムたちが消えてから虚数空間が解除される。星への被害を最小限にするためにキミが全力を挙げて結界を星全域に行き渡らせている。これで先程と同じ規模の戦闘が出来るというもの。
巨大な光の閃光が上空で弾けた。威力は互角、まさか無限の魔法に対抗できる力技の魔法があるなんてね。とは言っても、相手が本当に魔法を使っているのかは疑問だけれども、あの魔法陣の言語といい、配列といい何かしらの魔術的何かということは確かだ。
こちらの攻撃も一応は耐性があるとは予測はつくが、全くのダメージを負っていないわけでは無さそうだ。これなら勝算はある。
今この場に集っているのはこの世界で実力と名声と力が指折りの存在ばかりだからだ。
ニコラは確信する、私たちは諦めない限り負けることは無いと。
「パルム、ポラリス、リノ後は頼んだわよ」
その日、特異界が割れる規模の創世級の戦闘があった。
◇
Ihr stürzt nieder, Millionen?
Ahnest du den Schöpfer, Welt?
Such' ihn über'm Sternenzelt!
Über Sternen muß er wohnen.
ひざまずくか、諸人よ?
創造主を感じるか、世界中の者どもよ
星空の上に神を求めよ
星の彼方に必ず神は住みたもう
Die Symphonie1 Nr. 9 in d-Moll Opus.125,
次は新章に入ります。
数日間更新できないので様子を見て更新始めます。




