第428話 舌らしい
「うわー、まじかぁ」
って、今度は私たちの後ろに並んでいた人の声が耳に入ってきました。
「あれって、鳳凰学園の制服だろう?」
「金持ち学校の生徒が割引券とか」
あ、そっちか。それでスタッフさんが驚いた顔したのか。
料金変わりましていくらになりますってすぐに我に返ってスタッフは処理してくれた。
「デートで割引券とか引くわー」
は?
後ろに並んでいた別の女性の声が耳に届く。
デ、デ、デ、デート?
いや、違いますからね?
「わかる。割り勘も引くけど、割引券とかポイントとか使われるのも引くよねー」
は?
「普段は節約してもさぁ、女の前くらいは見栄はれよって」
「それそれ。なんか割引価格な女扱いされてるみたいで一気に覚める」
へ?
えーっと、デートじゃないけど……。
男の見栄?
もしかして、田中くんの面子をつぶしちゃった?
青ざめる。
でも、だって、……高校生が手元に割引券持ってたら使うの普通だよね?
私の感覚だと普通なんだけど……?
えーっと、でも、今ので田中くんがケチな男だと思われたんなら申し訳ない。
田中くんの名誉を回復するには……。
ケチじゃないところを見せればいいんだよね。
「田中くん、割り引かれた分で、アイスが食べられますわね!」
ふと目に入ったフード売り場を指さす。ソフトアイスののぼりを指さす。
「ふっ。そうだな。アイス食べるか」
おっと、一つ200円だ。割り引かれたお金は一人100円。二人で200円。
「割り引かれた分じゃ一つしか買えませんわね」
「遠慮することはないよ、おごるよ」
おごるってことばいただきましたー。
どうだ、田中くんはケチじゃないだろう?
むしろ私がケチなんだよっ!
これで、田中くんの名誉挽回できたかな?ああ、でも、私、別に田中くんにお金を使わせようと思ったわけじゃないからね?アイスも食べたいわけじゃ……いや、ちょっと食べたいけど……。
「ありがとうございます。ですがよく考えると、今は食べきれる自信がございませんわ……また今度にいたしましょう」
田中くんがふっと微笑んだ。
「じゃぁ、半分こするか?」
え?
「バニラでいい?」
は、まぁ。
田中くんがさっさと買いに行ってしまいました。
「うっわー、仲良く一つのものを半分ことか!」
「アオハル」
「やっば、制服デートやっば!」
え?
いや、だから、デートじゃないってば!
っていうか、制服デート?
何、その甘酸っぱい単語!
前世の私には一度も登場しなかった単語ですよっ!
って、でも違うから。誤解だから、制服デートじゃないから!
学校帰りだから制服なだけで!
他の図書委員に用事があったから二人になったわけで!
仲良く半分こは……うん、仲良く?
あれ?田中くんとちょっと距離を感じていたけど、気のせいだったのかなぁ?
えへへ。
そうか、私と田中くんは、仲の良い友達。
えへへへへ。
田中くんが、ソフトアイスのバニラを買って戻ってきた。
コーンじゃなくて、カップに入れられていた。
でもって、スプーンが二つ付いてた。
ん?
あ、そうだよね。両脇から二人でアイスを一緒に舐めるとか、そんなことできるわけないもんね。
って、その図を想像して赤面。
やっ、田中くんと一つのアイスを両脇から舐めるなんて……。
ぽ、ぽ、ポッキーゲームよりもエロいよっ!
っていうか、田中くんがアイスを舐めてる姿を想像するだけで、それ、めっちゃエロい!
やばい、やばい、やばい、やばいっ!
舌とか、舌とか、ダメだって。想像するべきアイテムじゃない。
思わず田中くんの顔を見たら、舌ばっかり注目しそうだ。
お、ち、つ、け、じ、ぶ、ん。
そ、そうだ。
冷静になるためには、頭を冷やそう。
おお、こんなところにちょうどいい具合に冷たいアイスがあるではないか。
いっただきまーす。
ふおうっ、バニラのソフトアイスうまいっす。
あ、ちょっと待って、これ、二人で分けて食べるって言ってたやつだよね?
「た、田中くん……ごめんなさい。おいしくてつい……」
全部ひとりで食べちゃいました。
ご覧いただきありがとうございます。
うん、たぶんみんな思ったよね。両脇から食べるの、弟なら積極的にするはずだって。
ってか、璃々亜は何を想像したのでしょうね。ふふふふ。
腐女子は耳年増ならぬ、目年増だったりするよね。同人誌知識は時として……げふげふっ。
注:この作品は、全年齢を対象としております。みなさま、想像は控えめに。




