第426話 違和感らしい
なんだか、違う。
何が違うんだって言われると……。
私と田中くんの距離感。
休日に一緒に出掛けた時と、なんか違う。
……べ、別に手をつないでないとかそういう話じゃなくて、微妙にその、距離がある。心のじゃなくて物理的な。
えーっと。
誘ってもらったんだから、嫌われているわけじゃないと思うんだけど……。
いや、待てよ?
もしかすると、図書委員の集まりがしたかったのに、それができなくなったから仕方なく私を誘っただけで、実は二人でなんて出かけたくなかった……とか?
それで、田中くんはそんなそぶりを見せるほど子供じゃないけど、でも、その心が、この微妙な距離感となって表れたとか……?
「失敗したな」
田中くんの口から小さな声が聞こえてきたーーーーーっ!
はっ?!
や、や、や、やっぱり失敗ですか!
じゃ、私、帰ります、ううう、ごめんなさーいっ!
でも、今は電車の中なんで、すぐに姿を消すことができません。
電車が次の駅に着くまで一緒にいさせてください。ううう。
ううう。
いや、今すぐに別の車両に移った方がいいですよね……。
今の時間帯はラッシュアワーではないので移動は問題ない。
席は探さないと開いてない感じだけど人にぶつからずに立っていられる程度の乗車率だ。
じりりと後ずさると、電車が揺れてよろめいた。
「白川っ!」
とっさに田中くんが腕を掴んで倒れるのを防いでくれた。
「いや、マジ失敗。ごめんな」
ん?
いや、だから、何が失敗なの?
謝るのは私の方じゃないの?
田中くんが、私の手を電車のドア近くの棒に捕まらせる。
「電車なんて慣れてないよな。しっかりつかまってないと危ないよ」
ふお?
電車なんて慣れっこですよ。
ラッシュアワーもなんのその。立ちっぱなしだって平気だし。
まぁ、今ちょっとぐらついたけど、それは後ずさったからで……。
っていうか、今までに二人で電車乗ったことありましたよね?
えーっと、その時の記憶……は。ああ、いつも席には座ってたか。こうして立って電車に乗るのは初めてのことか。
「大丈夫?もうあと1駅だから……」
田中くんが心配そうに私の顔を見ています。
もしかして、失敗したっていうのは、私を電車で立たせてしまった状況を失敗したって言っているの?
いや、だから、慣れっこだし。
って言おうとして、ふと制服のスカートが目に入った。
ああ、鳳凰学園の制服。
そうだった。私は璃々亜。
鳳凰学園の生徒で、それもかなりのお嬢様で。
普段は、蜂川さんの運転する車で移動していて……。
そっか。うん。電車に乗ることさえ稀で、きっと指定席が買える電車は必ず指定席で。
嘉久と京都に行った時も、当然指定席なうえに、グリーン車だった。
だから、田中くんは立って電車に乗っている私の心配をしてくれているんだ。
「大丈夫ですわ。これでもバランス感覚はいいんですのよ?」
にこっと笑って、田中くんを安心させようと試みる。
「白川……」
田中くんが切なそうな顔を浮かべた。
え?
えっと、気を使ったと思われたかな?違うよ、本当に平気なんだよー!
むしろ、懐かしい、よく前世では電車でみっきゅんと立ち話しながら会場に向かったわ!って思い出したりして、幸せ感じるくらいだよ?
「それに、ぐらついても田中くんが助けてくれるのでしょう?」
さっきとっさに私の腕を掴んでくれたように。
「あ、うん……」
田中くんが頬を染める。
ん?今の言葉のどこに照れる要素が?
もしかして、野球部で鍛えてるから、人の一人や二人を支えるのは余裕だよね、さっすが野球部!みたいな誉め言葉として受け取ってくれたとか?
まぁいいや。
……っていうか、そう、距離を感じるのって……。
これだ。
ドア近くの棒をつかんでいる私。
田中くんはきっと私がつかまっても、ぐらついて一緒によろけたりしないと思う。
危ないからつかまっていなって、自分じゃなくて、棒を握らせた田中くん。このあたりがなんとなく、今の距離感だなぁ……。
あ、いや、別に田中くんにつかまりたいとか、そういうことじゃないけど。
なんていうの、よそよそしい気がして。
私と田中くんって、もうちょっと仲良しじゃなかった?
とかさ……。ずうずうしいかな。仲のいい友達だと思ってたの。
ただの図書委員仲間とか、ただのクラスメートとかそんなのはやだ。
ボッチはやだ。
ただの友達もやだ。
……友達がやだ?
ん?仲のいい友達がいいなんて贅沢なのかな。
いつもありがとうございます。
なぜか、田中推しコメントいっぱいもらっちゃいましたので、が、頑張らないと。
田中くん、がんばれー。なんで、距離とってんの?何があったのぉぉぉ?




