第425話 スターらしい
「星を見に行かないか?」
は?
4時前ですけど、夕飯の時間ですらないのに、星を見るとはこれいかに?
「確か、割引券があったはず……」
がさがさと鞄の中に手を入れる田中くん。
割引券!まさか、この学園でその単語を耳にしようとは。
「いやだわ、貧乏くさい」とか、言いそうだよ、みんな。
割引券は貧乏くさいという癖に、どっかのお得意様特別割引セールご招待とかには喜んで行くくせに。同じ割引なのに、貧乏もくそもないだろうが!って思うよ。
「嫌いじゃなければどうかな?」
田中くんが鞄から取り出したのはA4サイズの1枚のチラシだった。一番下に切り取り式の割引券が付いてる。
「あ……」
星って、プラネタリウム……!
プラネタリウムなんて、高校生のころ星座をテーマにした少年たちが聖なる闘士になって戦うアニメが流行ったときに見に行ったきりだよ!
懐かしい!
星座の説明が出るたびに、むきゃー、〇〇様だぁ~とか、心の中で叫びまくっていた。
もちろん、一緒に行ったのはみっきゅん。
チラシには、上映プログラムが書いてある。
なぬ?今はアニメコラボとかあるのか!
名探偵コサンコラボのプラネタリウムってなんじゃ!
妖怪ウォッチュとコラボのプラネタリウムってなんじゃ!
全然星空とか関係ないアニメじゃないか!っていうか、こんなアニメコラボとかする時代に少年たちが聖なる闘士になったアニメが流行ってたら、絶対コラボしたよね……!くっ!時代が早すぎたのだよ……。
と、アニメコラボのところをじぃーっと見てたら。
「これ、立花が学校でもらってきたんだ……その、べ、つに、白川を誘うために割引券とかそういうんじゃなくて……」
ああ、なるほど。
こういう科学館的な施設の催し物のチラシとか小学校や幼稚園で配布したりするんだったよね。
そうか、だからアニメコラボチラシ。田中くんが見たくてチラシを持っていたわけじゃないのかぁ。そりゃそうか。
「今から行けば、4時40分の上映に間に合いそうですわね?急ぎましょう」
「え?あ?いいのか?」
田中くんがちょっと驚いた顔を見せる。
ん?
どの部分に驚きがあったというのだろう?
私って、プラネタリウムに行きそうもないような雰囲気ある?
それとも、見せられたチラシがアニメっぽいのに行こうって決めたところがまずかった?いや、でも4時40分上映は初夏の星座っていう普通のプログラムだし……。残念ながら……。アニメコラボは休日の午前だけだし……。
あ、このアニメコラボがあること知らないふりして、休日の午前にプラネタリウムに出かけようかな。
嘉久と行動しなくちゃいけないなら、プラネタリウムに行こうとか提案しちゃえばいいんじゃない?
「早く行きましょう!」
ふふふ。楽しくなってきたぁ。
さすがにコラボアニメでBLったことはないけど……。声優さんでレギュラーキャラで一人出てるんだよね。あのお方が……。運がよければ、聞けるかもしれないのでぇーす!
るんるんるーん。
思わず楽しみすぎて、田中くんそっちのけで、ずんずんと校舎を出て門もくぐり、最寄りの駅まで歩いて行った。
田中くんはそんな私の後を慌てて追ってくれたわけだが。
「あら?白川様、あのように肩で風を切って歩くなんて、どうかなさったのかしら?」
って声が。
え?違うよ、肩で風なんて切ってないし。
「うわー、見ろよあれ、男を従えて堂々と歩いていく姿……さすが白川家のお嬢様だぜ」
って声が、
は?何言ってんの、別に従えてないよっ!誤解だ!
ちょっと、田中くん、私の後ろを歩くんじゃなくて、隣、隣を歩いてくれなくちゃっ!
田中くんの姿を探して、振り返ると、女生徒に囲まれたすんごいイケメンと目があった。
ぐほっ!
誰だ?にらまれてる?
怖っ。
まさか、自分の魅力に抗う女子は敵みたいなんじゃないよね?すべての女生徒は僕の虜にしなければ気が済まないとか……。
……ははは。
そんな壊れたキャラ……。
いるだろうなぁ。ヤンデレとかもさ。病んでりゃ病んでるほど愛おしいっていうファンもいるしなぁ。
そうか、あのイケメンはヤンデレ系攻略対象っていうわけか。
クワバラクワバラ。近づくものか。
「きゃぁー、三笠蔵様が、こちらをご覧あそばせていらっしゃいますわ!」
通りすがりの女子が黄色い声をあげた。
ん?
あの私をにらみつけていたヤンデレイケメンの名前は三笠蔵なのか!
っていうか、あれか!
未遭遇だった、1年の攻略対象キャラと思われる、家柄よし、頭よし、顔よしの……。
よしよし尽くしでヤンデレとは……。くっ。
わかってるな!
ゲーム作ってる人間!
きっと、他の女の子たちのように自分を見てくれないヒロインに興味が湧いて、自分のものにしたくなるっていうやつだよねぇ。
あーあ。
そりゃ、ヒロインが芽維たんや皐月たんだったら、興味ないよねぇ。
彼女たちは、顔だとか家柄だとかで人を好きになるとは思えないもん。
むしろ、芽維たんは田中くんのような、優しくて頼りがいのある……。
ちろりと田中くんの姿を見る。
……私も、三笠蔵が病んでなくたって、やっぱり田中くんみたいな人の方がいい。
……だって、私は、璃々亜だけど、芭琉だから……庶民だから……だから、庶民といた方が気が休まる……。
うん。きっとそれだけ。
別に、芽維たんが田中くんルートだからって、「友達と同じ人を好きになっちゃった」とかそんなことは……。
……。
そうだ。そもそも私、破滅ルートに乗らないためには、誰も好きになったりなんかしないんだ。
高校3年間……とにかく、誰かの恋敵になったら悪役令嬢ルートに知らない間に乗っかったりしたら怖いもん。
お読みくださり感謝でございます。
璃々亜、おまえ、意外と鋭いな!
ヤンデレか、ヤンデレ……ぐはははっ。
ぐははははーーーーっ!
っていうか、田中くん、色々準備してたのね、きっと。さりげなく誘う方法をめっちゃ考えてたのね、きっと。すんごい緊張して声かけたのね、きっと……とか想像すると「アオハルかよ!」って言いたいよね。
……一方弟は準備を入念にすればするほど、アオハルから遠ざかっていく気がするのはなぜだろう……
誰か、教えてプリーズ!




