第390話 イチゴは高いらしい
「ま、漫画みたいって……、そ、そうだな、そう言われればそうかもしれないな。その、こういうインパクトのある料理を扱ったレストランが……その……」
動揺しながら、嘉久が口を開く。
隠しきれるとでも思っているのか。なんだ、そのレストランって。漫画飯レストランとか、そういうところでもあるのか?
「なんだ、嘉久、お前将来的に、レストラン事業に手を出そうとしているのか?いや、もしかして将来じゃなく株で手に入れた資金を元手に始める気か?この料理たちはそのための試作品?」
ぶほっ。
兄はごまかされたようだ。
だが、私はごまかされないぞ。
漫画飯がたべたかっただけだろう。ふははははっ。
「違いますわよね?嘉久様。レストランで出すメニューとしては、1粒1万もするイチゴをつかったケーキなど、どれほどの値段で提供すればよいのかわかりませんもの。いくら高級レストランを経営するにしても度がすぎますわよね?それに、カレーは高級レストランで出すには味の方がなんというか……とてもお客様を満足させられるものののようには思えませんもの」
「ああ、そういわれればそうだな」
兄も、うんうんとうなずいている。
「さすが璃々亜だ。ということは、どういうことだ、嘉久?」
ふふ、兄も味方に付きました。
さぁ、吐け。吐いてしまえば楽になるぞ。
漫画を読んでたら、出てくる料理が食べてみたくなったって。ふふふ。
そうしたら、私「漫画に出てきた料理ですの?ぜひとも私も漫画を読んでみたいですわ」とかいうから。
お、そうだ、ほら「お菓子部の活動の参考になればと思いますの」って言えば、完璧じゃない?
完璧すぎるっ!我ながら、天才!天才ですわ、おーっほっほっほ。
……。
あ、いや、頭のゆるぅい悪役令嬢みたいな笑い方しちゃった。げふげふ。反省。
「そ、その、株で手に入れた資金は自由にしてよいと父にも言われているが、特に企業などは考えていない。親の跡を継げば、嫌でも経営のことを考えないといけないからな……。今は別のことに……うーん、そうだな、投資に使うのもいいかもしれない」
凍死?……に、資金は不要だな。雪に埋もれるだけでできそうだ。
闘志?……何に闘志を燃やす気だ。掃除か?金かけるのか?
透視?……まさか、夢の道具の開発機にお金を費やすつもりじゃないだろうな?
やめろ、やめとけ!財産食いつぶしたって、そんなもんできやしない。
ああ、昔、赤外線カメラだっけ?えーっと、暗いところでも赤ちゃんの寝顔とか写せるよっていうビデオカメラがあったな。
……白い薄い服だと透けて撮影できるらしい。つまりな、夏場とか白い水着来てる人とかビデオカメラで盗撮みたいなのが問題になったわけで。
で、いつの間にか赤外線暗視ビデオカメラみたいなの売られなくなったよねぇ……。
なんで知ってるかって?
イベントで、コスプレの人が騒いでた。
まぁつまりだ、夢の道具を開発できたとしても、問題が噴出して闇世界に葬られるというか、真っ当な商売はできないわけよ。
これ、また暴走する嘉久を止めるの、私の役割とか言わない?
やだよっ!兄、止めろ。
「は?もう株はやめたんだろう?投資って、どうする気だ?」
あ!とうしって、投資か!
「今度は株じゃなくて、人に投資するといえばいいのかな。例えば……璃々亜は、将来何かしたいことはないのか?」
え?
将来したいこと?
……そういえば、私……。
高校3年間、破滅フラグを回避することばかり考えていて、将来について考えたことなかった。
……っていうか、破滅フラグ回避すること以上に、オタ活動したいとかボッチはいやーとか考えてたりもしたけど……。
まぁ、それはさておき……。
そうか。そういえば、破滅フラグを回避して高校を無事に卒業できたとして……一人暮らししつつオタ活動がしたいとかそういうことではなく、私は将来何になりたいのか、何がしたいのかとか考えたことなかったなぁ……。
仕事はするつもり。
もしかすると、お嬢様は労働とかしなくていいみたいなのあるのかもしれないけど……。
そうすると、どこかに嫁にでも行くための花嫁修業中って立場になるのかな……。
適当な年齢になればお見合いみたいな……。
自分で好きな人見つけない限り、お見合い結婚コース?それこそ、一生食うに困らない家に嫁がせられるみたいな……。
例えば、嘉久とか……。
は?
はぁ?
「嘉久様のお嫁さんとか……」
それは……。
「え?」
「まさか!」
兄と嘉久が対照的な表情を見せる。
おっと、ごめんごめん。
言葉を途中で切ってはだめでした。
「になりたいとは申しませんのでご安心ください」
はい。
言いません。
嘉久が無事に漫画好きでオタクになったら少しだけ考えてみるけれど、全く今は、そんな気ないです。
だって、あの猪突猛進の相手は疲れるからね。
なんていうの?2歳児が走り回るのを「ダメよ、待ちなさい、こらっ!」っていう母親みたいな気持ちになると言えばいいだろうか……。
あれ?それって、母性本能くすぐられてるってこと?
あー、あー、ははは……。
「そ、そうだよな、璃々亜。嘉久の元に嫁ぎたいなんて思わないよな」
「り、璃々亜、それは別に誰か、す、す、好きな人がいるとかっ!」
またもや、二人が対照的な顔をした。
なんか、オセロみたいだね。黒と白みたいな。
今は、兄が黒い表情して、嘉久が真っ白になってる。
「いえ、その、……結婚願望がございませんの。今は、まだ新しく始まった高校生活になれるのに必死で、将来の夢も……その、考えておりませんし……」
そうなのだ。
将来の夢は、ない。
いつもありがとうございます。
それにしても、嘉久かわいそう派が最近増えてきたので、えーっと、頑張らせようとは思っているのですが、乙女ゲーの攻略対象というよりも、自分好みの男に育てる育成シミュレーションみたいなキャラになってきてしまった不思議……。




