第389話 レシピはもしかしてらしい
まぁ、なんだかんだ言ってないで食べましょうか。
料理も覚めますし。
兄がスプーンを取り、真っ黒なカレーを一口たべた。
「嘉久、これ……なんだ?」
兄が眉を寄せる。
「ブラックカレーだよ。とにかく誰も見たことのない黒さが特徴の」
ん?
黒いカレーなんて、イカスミカレーとかで結構みんな見たことあるような気がするけど?
「イカスミかと思ったら……この個性的な味は……」
イカスミじゃないの?
パクリ。
食べる。
……。
……。
かろうじてカレーの風味はするけれど……。
美味しくない。
食べられないほどではないけど……。
いや、むしろ食べられないほどまずければ残すのも致し方ない……のだが食べられる分始末が悪い。
だって、残したらもったいない神様に怒られるわけだからね?
この美味しくないのを食べないといけないんだもん。ぐずっ。
嘉久も、ブラックカレーを口に運んだ。
「あー、こういう味なのかぁ。美味しいっていう意見が少なかったのは、なるほど」
は?
美味しいっていう意見が少ない?
それ、やっぱりネットでレシピ見て作った人の感想みたいなのってことだよね?
なーんーでー、美味しいって言われてないのが食べたくなるんだよっ!
食べたくなる理由を言え!
兄も私も嘉久も、食べられるのに残すことを良しとしないため、口数少なく美味しくないブラックカレーを食べすすめた。
「嘉久、これは大丈夫なんだろうな?」
と、兄が犬用の歯磨きみたいに骨の形をした硬パンが刺さったハンバーグを指さした。拳骨つ分ほどある巨大なハンバーグだ。
「あ、ああ。この肉はこうして食べるんだ」
まて、肉じゃない、ハンバーグだろう!
嘉久が、ハンバーグから突き出た骨の部分をがっつり手に持って、がぶりとかみついた。
……おや?
庶民でも見ないようなダイナミックな食べ方。
だが、これは、見たことがある……。
こういうがぶりとかみちぎるように、でっかい「肉」を噛みちぎる絵面。
そう、絵面。
絵面。
絵で見たことあるよっ。漫画だよっ!漫画!
漫画によく出てくる「漫画肉」に見た目がそっくりだ。
はっ!
まさか……。
「こっちのケーキはマンモスイチゴのショートケーキだよ」
って、嘉久が言うが……。
「マンモスイチゴ?そんんあイチゴの銘柄あったかな?」
と、兄が首を傾げた。
「あ、イチゴは美人姫を使っている。このケーキの名前がマンモスイチゴのショートケーキだ」
わなわな……。
打ち震える私。
「美人姫か……。一粒1万以上の高級イチゴを使っているにしては、ずいぶん……ダイナミックなケーキだな」
そりゃそうだ。
スポンジに生クリームぶっかけて、その上にイチゴを載せただけだからな。
っていうか、一粒1万円?
は?
は?
はぁーーーーー?!
いや、驚いた。
いや、驚いたけど。
そんなことよりも、今私の頭にあるのは……。
ブラックカレーも肉と呼んだハンバーグも、マンモスイチゴのショートケーキも……これって、これって……。
漫画飯じゃねーかっ!
肉は、つまりは漫画肉。
くっ!漫画に出てきた料理を再現して食べたいとか、嘉久よ……。
嘉久よ……。
おまえ、すでに、「漫画って面白いよね」っていうちょっと漫画読んでて好きなところ、超えてないか?
もう、十分一線超えてるよね?
よし。ちょっとからかってやろう。
「なんだか、漫画みたいな見た目ですわね」
とつぶやく。
すると、嘉久がぎくりとしたように、今まで豪快に咀嚼していた口の動きを止めた。
「そ、そういわれれば、そうかも……しれないな……どの料理も見た目にインパクトがあるからな?」
ふっ。
その動揺した様子。
やはり、漫画飯だったか。
はぁー。
嘉久の家の料理人さんも、ごくろうさまです。まさか、漫画飯を再現させられるとは……。っていうか、レシピをどこから拾ってきたんだろう。
漫画を料理人さんに見せたのかな?
漫画飯レシピを公開してるサイトを見せたのかな?
まぁいい。とにかくわかった。
嘉久に漫画ブームが到来していることは。
……株も、すごくのめり込んでいたのにあっさりやめたりするから、このブームの間に、なんとかうまく私も乗っからないと。
なんか、今はすごく隠したい感じなので、下手につついてすっぱりやめられても困る。
どうしたものか……。
漫画に詳しい方は尊敬いたしますわとか言ってみるか。いや、遠回しの嫌味と受け取りかねない……んー。どうしたものか……。
いつもありがとうございます。
次第に璃々亜好みに染められていく方向な嘉久……になればいいけど、なるのか?




