第383話 食べ物の恨みらしい
でも、まって。
こんなに大きなサイズのアジの開き、このペースでご飯食べてたら……。
「お代わりを頼む」
うっ、嘉久め、もう茶わん1杯食べたのか。
私も、お代わりが必要になりそうだ。そんな朝から茶わん何杯も食べるわけには……。
と、思ったら、嘉久はアジの開きを口に入れ、白飯じゃなくて大根サラダを食べた。
!
それだ!
大根おろしとサンマみたいな感じだよ!
アジの開きを口に入れ、ご飯の代わりに大根サラダをパクリ。
ふわぁっ!これあいます!
「いいんだよ。璃々亜はいつまでも子供で。ベッドには私が運ぶから」
「敦也兄!璃々亜を子供扱いできるのも、今のうちだからなっ!すぐに、恋人に運ばれるようになるさっ」
「は?誰が、璃々亜をベッドに運ぶって?」
「だから、それは、……」
「誰が?」
ん?
京様ボイスと都キャプテンボイスが、ベッドとか、ベッドとか、ベッドとか言ってませんか?
ベッドに運ぶ?
や、や、やだーっ!
ちょっと、待って、えーっと、それはお姫様抱っこ的な?
そうだ。熱があってふらふらしてる京様を、都キャプテンが抱っこしてベッドに運ぶ……シチュエーションがとっさに浮かんだ。
だめだ、熱があってふらふらしてたら、BL展開しにくいっ!風邪が移るよみたいな展開もありかもしれないが、風邪じゃなくてインフルエンザとかじゃ洒落にならん。
そもそも、熱がある人間に対して発情するようなダメ人間じゃないんだよっ!都キャプテンは紳士!そこ、大事。
キャラ崩壊しちゃうからね!
えーっと、熱はだめ。あ、捻挫ならいけるか?
お、おおう、捻挫なら……。
って、ダメだ。捻挫とかになったら、バスケの試合に響くじゃないかっ!えーっと、何かいいシチュエーションはないものか?
そうだ、お腹が痛いという京様。
ただの食べ過ぎだと言われる。
これならどうだ!
「璃々亜は、どう思う?」
ん?
「食べ過ぎ」
シチュエーションがいいと思う。
あ、しまった。
絶対、また、話聞いてなくて別のことを、私は言ったよね?
「あ、そうか。そうだな、いつもこのアジは大きくて食べきれなかったんだったな」
嘉久が、私のアジの開きの半分を、ひょいっとつまんで自分の皿にのせた。
ぎゃーーーーーーっ!
アジ、私のアジ!
くっそ、嘉久め、嘉久め、嘉久め!
「ああ、ちゃんと半分に切ってもらえていたか。いつも璃々亜が残したものを嘉久が欲しがるから、箸をつけないように半分切り分けておいてくれと頼んでおいたのだ」
え?
私の味の開きだけ真ん中で切れてると思ったら……。
兄が切るように料理人に頼んであったの?
だから、嘉久がひょいっと取っていった?
くそっ、兄め!兄め!兄め!余計なことを
「3か月の予約待ちだろう、そりゃめったに食べられないからもっと食べたいと思うだろう?」
と、嘉久。
何?3か月の予約待ちだとぉ?
その貴重な美味しいアジの開き……私だって、腹いっぱい食べたい!
返せ!返せ!と念を送るも、自分の分をとっくに平らげていた嘉久は私から奪ったアジをすでに口に運んでいた。
ぎゃーーーっ!
ひどいっ!
兄も嘉久も、ひどすぎる……。
「そうだ、璃々亜、今日は何も予定なかったよな?」
あるよ。勉強するんだから。
「じゃぁ、一緒に出掛けよう?」
じゅあぁじゃねぇ。
アジ返せ。
予定があるって言ってんだろ。……心の中で。
やさぐれ中。
「嘉久、璃々亜は疲れた顔をしているだろう?今日は一日家でゆっくりしなさい。そうだ、私と一緒にシアタールームで映画でも見るか?」
は?
兄とシアタールーム?
また退屈で意味が分からない謎の映画を見せられるとか?
冗談じゃない。
アジ返せ。共犯者め!
二人の顔が見たくなくて、部屋に籠った。
うん、おかげで、すんごく勉強はかどったよ。
だって、部屋にこもったって、テレビもネットもなーんもないんだもん。
隠し持っている漫画をこっそり読みたかったけど、読み始めると周りが見えない自覚がある。
急に部屋に来られたら隠し通せる自信がない。
兄と嘉久は、今日に限って生徒会の仕事とかで学校に行かないとか……。
くっそ!
アジ返せ!
いつもありがとうございます。




