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【書籍化】オタクガール、悪役令嬢に転生する。【web版】  作者: 富士とまと


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第378話 内緒話らしい

 座れる場所を探して腰かける。優先チケットで入って、ライドに乗って、帰ってくるのに20分くらいかな。

「ごめんね」

 ん?

「もっと、上手にファストチケット取って並ばなくても乗れるって思ってたの……」

 高校生か大学生くらいの女の子が隣に座っていた。

「ううん、いいんだよ。私の方こそごめんね。膝がどうしても痛くて、走るどころか歩いて移動するのにも時間がかかってしまって……。立って並ぶのも……」

 その隣には、60代か70代の女性。

「私はここで待ってるから、よっちゃん乗っておいで」

「ううん、いいよ。おばあちゃんと一緒にいる。せっかくおばあちゃん九州から出てきたんだもん。私はまた来ればいいんだ」

「そうかい?……ありがとうね。乗り物には乗れないけど、こうしてネズニーにいるだけで楽しいよ。連れてきてくれてありがとう」

「……人形が好きなおばあちゃんに、イッツアリトルワールド見せたかったけど……」

 人形か。

 そういえば、兄と嘉久が人形への食いつき方がすごかったよな。

 あの二人もイッツアリトルワールドとか好きなのかな?

 大量の人形が世界の民族衣装でお出迎えしてくれるんだよな。

「ごめん、白川」

 田中くんが急に頭を寄せて、私の耳元で囁いた。

「ふえっ!」

 息がかかる距離でいきなり謝罪とか、何?

 ビックリして、ドキドキ。し、心臓が。

「わがまま言っていい?」

 ひそひそと田中くんの言葉が続く。

 わがまま?

 耳元に息がかかってくすぐったい。でも、それよりも、田中くんがわがままって……?

「午後は優先チケット使わずに、一緒に並んで欲しいんだ……。せっかくみんなで来たけれど……」

 ふ、二人で?

 それは、えっと、なんで?

 まさか……。

 あの、田中くんは……私のこと……す、す、す……。

 ぐおーーーーっ!そ、そんな、どうしたら、だって、私、田中くんなら、いや、でも攻略対象は……あ、でも、田中くんは攻略対象じゃないかもしれないし、ううん、待って、その前に、本当に私のこと?

 パニックになっている私の隣から田中くんは腰を浮かせた。

「チケット交換しませんか?」

 私の隣に座っていた祖母と孫の二人に声をかける田中くん。

 チケット交換?

「僕達の持ってるチケット、並ばなくても入れる優先チケットなんです」

「え?」

 急に声をかけられた二人が驚いた顔で田中くんを見ている。

 っていうか、ぎゃーーーーっ!

 わ、わ、わ、わぁーーーーっ!

 恥ずかしすぎる!

 私ってば、勘違いも甚だしいっ!

 田中くんは、チケットを二人に譲ろうとしてただけなんだよね!

 自分の分のチケットだけじゃ足りないから、私にもごめんって頼んだんだよっ!それで、優先チケットがなくなるから、他の人と一緒には回れなくなるから、午後からは一緒に二人で回らないといけなくなるってそれだけのことで……。

 ぐあああーーーっ!

 ちょっと、穴、穴、穴、穴!

 穴があったら入りたいとはこのことだ!

 ちょ、誰が穴があったら入れたいだ!それは今一子先生の得意とするBL攻めキャラの決め台詞だ!

 そうじゃなくって、もー、恥ずかしくて、逃げ出したい。

 何、田中くんはもしかして私のこと……だから二人で回りたいのかな?とか勘違いしてるんだよっ!

 そうだよ!田中くんが私のこと好きとか、ないから!

 ……!

 もし好きになるとしても、ヒロインの芽維たんとか……ぐおっ。

 ぐおっ!

 それはそれで、破滅フラグ立ちそうで複雑な気持ちだけど、複雑な気持ち、複雑っ!

 いろいろな気持ちで悶絶してる間に、田中くんは話を進めていた。

「いいんですか?でも……」

 と遠慮しようとする二人に、

「僕たち、午前中にたくさん回って、ちょっと疲れて今休んでいたところなんですよ」

 嘘じゃない。うん、それは本当の話だ。

 って、疲れたのは主に私だけどね!田中くんはスポーツマンなんだし、これくらいで疲れるはずないんだよね……。

 うう、やっぱりダイエットも兼ねて少し運動しなくちゃいけないっ!

 イベントの時は、火事場の馬鹿力じゃないけど、広い会場を歩き回ったって、長時間立ちっぱなしで並んだって全然平気なんだけどなぁ……。

 なんだろう……。

 そうそう、普段は運動してなさそうな体系のオタたちも、皆、あの時ばかりは体力あるよね……徹夜明けでも走る走る。

 ……って、徹夜で並んではいけません!会場を走ってもいけません!戦利品手に入れ終わったからって、通路で座り込んで読んではいけません!

 帰るまでがイベントですっ!

「本当に、いいんですか?」

 孫の方が私の顔色を伺うように視線を向けてきた。

「はい。午後はのんびり回ります」

 急いでポケットから優先チケットを取り出して差し出す。

「あ、ありがとうございますっ!」

 チケットを交換すると、孫は何度も何度も頭を下げた。

 それから、祖母が思い出したように鞄から小さな袋を取り出した。

「お礼に。太宰府天満宮で買ったお守りだよ」

 田中くんと私に、白い小さな紙袋に入ったお守りをくれた。

「ありがとうございます!」

 大宰府天満宮といえば、勉強の神様だよね!

 これはいい。

「おばあちゃん、あれって正確には太宰府天満宮の楼門の脇の……」

 ん?

 正確には?

 何?太宰府天満宮には色々あるの?

 竈戸神社……あれ?白い袋に印刷してある名前が太宰府天満宮じゃないよ?

 そういえば、伊勢神宮もいろんな神社が集まってたりするし、そういう感じ?


ありがとうございますです。


……あううう、田中ターンは何の山場もないまま……げふんげふん。

あいつらの個性が強すぎて、田中くんがうもれる

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