第365話 人形らしい
適当な駅で下車して百貨店の化粧室で変装解除。ああ、もちろん化粧室だけ使うということはせずに、ちゃんと買い物もいたしました。何を買おうか悩むのもなんなので、ネクタイ何本か買って、1本ずつ包んでもらった。急にプレゼントが必要になったら、使えるはずだ。
兄や嘉久や父の誕生日とか。あ、そうすると母親の誕生日に渡せそうなものも用意しないと。
えーっと、母親が好きなもので思い浮かぶのは、洋装……。なんかゴスロリ的なものが好きってイメージしかないけど。
母親本人はビジネスウーマンっていう感じの服装だった。娘の私に着せるのが好きなのかな?
……遠慮したい。
となると、身に着ける物じゃなくて……あ。
人形売り場に、ゴスロリな衣装を身にまとった人形が。
これ、イベントでも人気の人形だ。
人形じゃなくてドールと言った方がいいね。
ドールフェスみたいなのもコミケとは別にあったりするんだよね。ハンドメイドの衣装とかサークルだとか、お迎えしたドールの写真集を出していたりとか。そうそう、カスタマイズパーツを売っていたりとかもするんだよね?
って、そんなオタク路線ではなく……百貨店にも並んでいるってことは、オタク以外の人も買うってこと?
フランス人形や日本人形みたいに、飾って使うのかな?それとも、リカちゃん人形みたいに着せ替えしたりして遊ぶ子供用?
まぁ、なんでもいいけど……。
目の前にある1体の人形に目が釘付けになりました。
そこには10体くらいの人形が飾ってあるんだけど、そのうちの1体が、まるで他人とは思えない……。
それはもう、立派な……とても立派な縦ロールをしてまして。
メイクも濃いめでばっちりでございまして。
この世界に来て初めて鏡の中を見たときにいた、璃々亜のような人形が……。
よし、これを買おう。母親に「私だと思って」って言うのも恥ずかしいか。
まぁ、中身の人形はさておき、めっちゃ服がゴスロリだから、服だけでも心が浮き立ってくれるといいけど……。
あ、買って帰ったら、兄に聞いてみようかな。母親にあげたら喜ぶかなぁって……。もし、人形は怖くて近づけないタイプの人だったりするとまずいし。
帰宅。
家に着いたのは夕飯の30分前。
急がないと。えーっと、人形は箱に入ったままだと窮屈そうなので、出してあげないと。
おっと、兄に、母親に渡しても大丈夫なのか聞かないといけないから、ダイニングのテーブルに置いておこう。
それから、ネクタイは見つからないようにしておかないと。あらかじめ誕生日などの時のためにプレゼントをいくつも用意してあるのはあやしいもんね。……例年がどんな風に準備していたのかわからないけど……。
隠す場所は自室だよな。
……なんだか、自室には隠してあるものが増えてくなぁ……。うーん、どうしようかな。
両親はめったに家にいないし、さすがに兄も妹の部屋を家探しすることはないだろうから……大丈夫だとしても。
問題はお手伝いさんだよね。机や本棚などの引き出しを開けるようなことはしないだろうけど、ベッドの下とかクローゼットとかは開けるわけだし……。
うーん。ベッド下用の引き出し付き収納みたいなの買う?中は見ないでくださいねと言えば見ないんじゃないかな。
お手伝いの早間さんともう一人の人、二人ともいい人そうだし。……家政婦が見たみたいに、いろんな事柄のぞき見して言いふらすような感じではなさそうだけど……。
いや、でも、分からないよねぇ。掃除していてうっかり引き出しが空いちゃうみたいなこともないわけじゃないし。
うーん。鍵付きのベッド下収納か……。
そんなもの売ってるのかな?
前世では、オタクグッズ入れるためにあらゆる収納できる場所に収納してきた私。
もちろんベッドしたスペースだって有効活用していたから、ベッド下用の収納も買ってたけど……。
鍵付きとか売ってるの見たことないなぁ。
っていうか、むしろ中身はすぐに取り出せるように、何が入っているのか見やすい透明プラケースなベッドした収納を使っていた。
……。うん、鍵どころか、中身丸見えでな、物を隠す気ゼロなんじゃよ。
だってさ、一人暮らししてたけど、部屋に来るのって、みっきゅんくらいなんだもん。何も隠す必要ないよね?
あ、隠すといえば唯一……。
玄関ドアから部屋の中とか見えないように、丈の長い暖簾をつるしてたよ。暖簾って言うよりも、カーテン?
普段は邪魔だからとめて開いていたけれど、必要なときだけ部屋の中を隠すために……。そう、唯一必要な瞬間ってのは、「ピンポーン、お届けものでーす」ってアレなのじゃ。もちろん、業者の人を中に入れるようなことはないけれど、半開きのドアから中見えるじゃん。
って、隠す必要あるのかって言われれば……。
あのな、宅急便を配達してもらう頻度も、普通の人の何倍もあるのよっ!わかんないかもしれないけど、一日にいくつも届くこともあるし。
通販するじゃろ?
漫画とか漫画とか漫画とか。
BL漫画は通販じゃないと入手しにくいものがいっぱいあるんじゃ。大きな本屋に行かないと並んでないんじゃ。
並んでたとしても、売り切れたらそれっきり入ってこないんじゃ。
……あと、BLドラマCDとかな。
通販するものがいっぱいあってな……。
なわけで、顔を合わす回数が多いんじゃよ。宅急便の配達員とは……。なので、えーっと、部屋の中見えるとさ「あー、いつもこういうの注文してんのか」って思われてるかもと思うと……。ちょっとね。
社会に出てからは、日常生活ではオタクは隠してたし。いや、隠すっていうか、表に出さないようにしてたし。
いわゆるアニメグッズ持ち歩くとかも、分かる人だけが分かる程度の物しか使ってなかった。
もろキャラクターが印刷されたバッジとかは、カバンの外じゃなくて、内側につける。鞄を開けて除いたときしか見えないので、自分一人の癒しだ。
ん?なんの話だっけ?
ああ、そうそう、ベッド下の鍵付きの収納……
「うわぁーーーーっ!」
へ?
唐突に、京様の悲鳴が!
な、何、何が起きたの?はっ!
ま、まさか、敵につかまってロープを巻かれて……。やだ、ちょっと、今日読んだばかりの同人誌的な内容なの?
なんていうサービス!
「た、た、た、大変だ、敦也兄、璃々亜が……」
え?私?
ちょっと、京様妄想に私は不要だって。もう。
ちぇっ。嘉久め。もうちょっと妄想が楽しくなることをしゃべってくれよ。
あー、しゃぁない。
そのまま部屋を出てダイニングに顔を出す。
「え?あれ?璃々亜?」
嘉久が、人形と私の顔を交互に見比べている。
「そ、そうだよな、あ、ははは……」
なんだ、そうだよなって。私が悪い魔女に人形にされたとでも思ったか。
ご覧いただきありがとうございます。
嘉久……|д゜)
純粋だからな、やつ。
へたしたら、サンタクロースとか信じてるんじゃね?




