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【書籍化】オタクガール、悪役令嬢に転生する。【web版】  作者: 富士とまと


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第342話 鶏味らしい

 おっと、話がえっと、なんだっけ?

 そうそう。

「プレゼントされる本は、相手の顔を思い浮かべ、どの本なら喜んでもらえるだろうかといろいろ考え悩んで選んでくださるものです。その日、その時出会った本……たとえ内容が同じ本だからと、新しい本ではだめなのです。本が背負った歴史は戻りません。小さな子供であれば、小さな手の汚れ、よだれの跡……大きくなったら、大好きな場面の開き癖、涙の跡……。いつ、どこで、誰にもらったのか。いつから手元にあるのか、どれほど繰り返し読んだのか。どこで本を開き、何を思って読んだのか……。誰に貸したか。何回読んだか……。思い出が詰まっているはずです。自分の手元に来た時点から、その本は、世界で一冊の本になるのです」

 うーん。分かるかな、この感じ。

「そうか……思い出……。思い出が価値を上げることがあるということか。新しい物が良いというわけではないんだ……」

「そう言えば、祖父は曾祖母の形見だという古い本を大切にしていた。……形見とまではいかなくても、そういう大切な本があるってことなんだな?」

 形見……。

 私の残した本は、形見ってことになっちゃったんだ。……ま、まさか、形見だからってBL本を両親は大切にしたりしてないよね?

 形見の品として大切にするなら、もっと別の物にしてくれーっ!みっきゅん、みっきゅん、聞こえていますか!

 BL関係の品はすべてみっきゅんに差し上げます。1品たりとも回収し忘れないようにお願いします……涙目。「これ、娘の形見なの……」って、京×都どスケベ本見せられても、見せられた方も反応に困るってのっ!

「ええ。修復してまで手元に置こうと思う本は、他の人にとってはただの本かもしれません。ですが、持ち主にとっては世界でただ一つの大切な品なのです」

「聞いたことがございますわ!確か、某大手ゲーム会社が、お客様から修理依頼を受けたゲーム。結局新品への交換になったけれど、ゲームに貼ってあったシールを同じように貼って返したという話を……」

「へぇ、なるほど。それも新品よりも価値があるという例なわけだ。……そうか。なるほど」

 なんか、いい感じにまとまってきたと思ったら、藤吉さんが両手で顔を覆ってしまった。

「無理ですっ。私、形見とか……そんな大切な本を修復するなんて……」

 藤吉さんの言葉に、他のメンバーもハッとした顔をする。

「……そうか……。いくら修復の技術を学ぶとしても……確かに、そうだな……」

「うん、もし失敗して責任を取れと言われても……」

 ぐおっ。

 た、確かに。大切な同人誌が破れたからって修復を頼んだら、京様の顔が1ミリずれて張り付けられてたらショックだ。

 ……ショックだ……。

 クレーム……は、さすがにつけないけど……。もし、それが、形見だったりしたら……。

 クレームはつけなくとも、鳳凰補学園最悪です的なことをついSNSで拡散しちゃうかもしれない……。

 そうすると、KHTで社会貢献するどころか、学校の悪評につながってマイナス効果になるという……。そ、そこまで考えてなかったわ。

 そうか。大切なものを扱うというのは、確かに怖いことだ。そう考えると……。

 私たちはきっと

「修行中の板前さん」

 みたいな立場ってことになるんだよねぇ。

「そうですわ!白川様のおっしゃるとおりですわ!」

 え?

 私、何を言った?

「一人前の板前になるには長い修行が必要です。基本を身に着けた程度ではお客様にお出しする料理は作れません。まずは、賄い。そして、小さな1品から……。店の顔となるような料理を任されるようになるまでには非常に長い年月がかかります」

 料亭娘が熱く語りだした。

「ですから、講座で基本を学んだあとは、賄い……まずは自分たちの本で腕を磨きましょう」

 うん。

 同人誌の修復で腕を……って、手元にないから!1冊も!

 ……ぐすっ。

「その後、図書委員として本の病院をするとしても……。簡単な修復からスタートするべきですわね」

 ふむ。

 ん?そうすると、簡単な修復承ります的なことを告知するの?でも、簡単かどうかの判断は誰がするのかな?

「トリアージ」

 はい?鶏味?

 好きですけどね。鶏のうま味が溶け込んだスープとかめっちゃうまい。

「そうですわね。まずはトリアージできる目を養う必要がございますわね」

 え?鶏味の目?いや、養うのは、舌だりょね?

「患者の治療の緊急性を判断するトリアージの場合は、黒が手遅れ、赤が最優先、黄色が次、緑は緊急性が低いということになりますが……」

 あ、聞いたことある。

 大量に患者が運び込まれたときに、先着順じゃなくて緊急性の高い低いで治療の順番を決めていくとかそういうやつだ。

 鶏味って、全然関係ないわっ!だれだ、食べ物の話にすり替えたのは!嘉久か?

 ……すまん。嘉久、流れ弾だ。

「本の病院では、緑が、私たちでも修復できる本という分類になるでしょうか。黒の手遅れは必要ありませんね。私達では修復困難な黄色や赤はどう対応すればいいでしょうか……」

 うーん。

 「ごめんね無理」で終わらせてはせっかく修復にと持って来た方に申し訳ないよねぇ……。

「総合病院への紹介状でも渡しましょうか」

「私達はボランティアですが、プロの方々は仕事として請け負うわけですわよね?」

「あー、そうすると、本の紹介ですらステマと言われるくらいだからなぁ……」

「無料の卵で集客して、高い健康食品を買わせる店みたいだと思われかねないな」

 ん?よくそんな店のこと知ってるね?彼は、庶民の出?

「あまり大切じゃない本の修復だけ請け負えればいいんですが……」

「形見は流石に荷が重い」

「逆に、あまり大切でなければ修復してもらおうとは思わないのではありませんか?」

「形見でもなく、大切な本……」

「何かあったときにクレームを受けない方法」

 ……。

 良いアイデアだと思っていた本の病院も、細かく話合ううちにいろいろな問題が出てきた。

 こりゃどうしたものか……。

 っていうか、このまま本の病院案が流れてしまうと……。本の修復技術を我が物に!そして、その技術で同人誌を修復するという我が野望が!

「皆さま、私たちが、どれほどの修復の技術を身に着けられるかもまだ分かりませんわ。できることできないことも、分からない状態ですもの。まずは、この講座を受けて、受けながら考えればよろしいのではありませんこと?」

 秘儀。問題は後回し。


ご覧いただきありがとうございます。


もうすぐ冬コミですね。

準備は万端でしょうか。

寒さ対策しっかりとして風邪をひかないように!

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