第331話 また、二人でらしい
そう、あれだ。親が子供の「あれ何?」を微笑ましく見ている感じ。
「ふわぁっ!」
「ん?どうした、璃々亜?」
「い、いえ、何でもありませんわ」
気がついちゃった。
そうだったんだ。
嘉久は「母性本能くすぐり枠」ってやつだ!きっとそうだ!
残念枠なんて乙女ゲームにあるわけないもんな。だけど、見方を変えると「母性本能くすぐる」ってやつで……それなら、有りだ。
乙女ゲームにはそういうキャラもいるはずだ。
ってことは、やっぱり、嘉久も攻略対象でほぼ間違いないんだろうなぁ。
で、あれでしょ?
子供っぽいと思っていたら、ある日突然”大人の男”な部分が見えて、ギャップにきゅぅーんとか、そういうやつじゃないの?
……。まぁ、まだ高1だし。高3になるころまでにはもっと、男らしい一面が出てくるだろうし……。
うーむ。
ヒロインが芽維たんだとすると、あんまり想像できないんだよなぁ。皐月たんなら、面倒見のいいお姉さんっぽさがあるから、嘉久との組み合わせも想像できる。
っていうことは、ヒロインは芽維たんじゃなくて、皐月たんなのかな?
分からない。
本当に、せめて、ヒロインと攻略対象だけでもはっきりさせてくれよ!
もしかすると、全然見当違いなことしてるかももしれないと思うと……。
同学年じゃない可能性だってあるわけでしょ?来年入ってくる子がヒロインかもしれないし。
あ、そうすると、神様の「高校三年間」って言葉が当てはまらなくなる?三年間悪役令嬢として高校生活を過ごすなら、やっぱり上級生でも下級生でもなく、同級生にヒロインがいるんだよね?
うーん。
ヒントが少なすぎるわっ!
何かないのかなぁ。
……こっちの世界に、このゲームのパロディみたいなの、ないわけ?
乙女ゲーム内、乙女ゲーム……。
「次、降りるんだよな。ボタンを押すんだよな」
嘉久、バスのボタンを押したいって顔に書いてある。
プィー。
無情にも、別の誰かが先にボタンを押した。
うむ。落ち込むでないぞ。よくあることだ。
バスの料金を握りしめ、無事にバスを降りる。
嘉久は満足げな表情。
なんだか、もうすでに旅行を満喫したって顔にまってますが、えっと、今目的地の一つ目についたところですからね?
ぞろぞろと一緒に降りた人たちと入り口まで歩いていく。徒歩数分ですぐに到着。
拝観料払ってパンフレットもらって中へ。
嘉久はパンフレットの説明をすぐさま読み込んでいる。
すごいなぁ。どこでも全力で勉強なんだねぇ。
うっ。
風神、雷神……。
風神×雷神とかいう罰当たりなBL同人誌とかあったな……とか、煩悩にとらわれまくっている私の目に、観音様の微笑みが飛び込んできた。
無数の観音様の微笑みは、圧巻。
きらきら輝いてます。あ、それは金ぴかだからか?
ごめんなさい。腐女子脳みそちょっと奥にしまっておきます。
「ここには千一体の観音像が並んでいるが、顔が一つづつ違って、どれかが自分に似ているそうだ」
嘉久がパンフレットから得た知識を教えてくれる。
へぇー。
よし、探してみよう。
「あ、あれ、お兄様に似ていると思いませんこと?」
きりりとした男前な観音様を発見して思わず指をさす。
おっと。指をさしちゃ失礼だっけ。
「えっと、後ろから2段目の右から……」
って、数えるのも大変だよっ。
「ああ、あれか。似てるといえば似てなくもないか?どちらかと言えば、こっちの方が怒った時の敦也兄にそっくりだ」
と、嘉久は顔をゆがませて風神像を見た。
ああ、怒らせると怖そうだもんねぇ。兄。
「これが、璃々亜に似てるな」
嘉久が私に似てるといったのは、まさに観音様というようなとっても柔和で優しそうな表情をした像だった。
こんなに素敵じゃないよ、私。腹黒だし。
頭の中は腐ってて、お腹の中は真っ黒で。うわー、つくづくいいとこないわ。私……。
嘉久に似てる顔を探そうとしたんだけど、見つからない。あ、あれ、皐月たんに似てるっ!
あっちは相原さんだ。おお、あれは轟くん顔!
むふっ。次々と友達の顔を見つけて「私って、友達が多いわぁ」と嬉しくなっていて、嘉久の顔を探すのを途中で忘れたとは言わない。
「このあたりは、秋になると紅葉も綺麗らしい」
嘉久が建物の外を歩きながらそんなことを言った。
へぇー。
「秋にも来られるといいですねぇ」
今度は、お友達とみんなで。あれは誰々に似てるねーなんて話をしながら盛り上がるのだ。
「そ、そうだな。また、二人で来たいな」
嘉久、悪いことは言わない。秋までには友達作れよ。
……また二人でとか、悲しいこと言うなよ……。
さて、次は……。
ご覧いただきありがとうございます。
今から予告しておきます。
年末年始に更新を少しお休みしようと思っております。
冬休みです。何日くらい休むかはまだ未定です。




