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【書籍化】オタクガール、悪役令嬢に転生する。【web版】  作者: 富士とまと


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第330話 初めてのチュウらしい

 カバンに手が伸びたところで

「どれにする?」

 あう、うっかり現実から逃避しまくってたけれど、家電量販店の携帯スマホアクセサリーコーナーに到着したようです。

 モバイルバッテリーはとても種類がたくさんあるけど、乾電池式のは2つ並んでいるだけだ。

 どちらもそう変わらない?

「充電池も使える物と、乾電池だけの物か」

 うむうむと、説明を読みながら嘉久が考えだした。

「では、一つずつ買いましょう。それから、乾電池も」

「一つずつでいいのか?」

 おい、まさかいくつ買おうか考えてたのか?

「私のスマホも充電が心もとないですから。嘉久様の分と、私の分、2つで十分ですわよね?それから、電池も1セットずつでいいですわよね」

「本体は分かるが、電池はもう少し多めに買った方がいいんじゃないか?」

「大丈夫ですわ。電池でしたら、コンビニにも売っておりますもの。必要ならすぐに買うことができますわ。それに、あまりたくさん持ち歩くと重いですから」

 コミケ参戦中ならいざしらず、普段の旅行なんてそう準備なんて必要ない。

 は?コミケ参戦中は、予備の予備くらいまでは必要ですよ?

 だって、列に並んでいるときに電池切れしたらどうすんの?買いに行けないじゃない?

 それに、皆が必要とするものは、売り切れになってることも多いんだよ?

 だから、電池も大量に持ってく。それ常識。

 カメコさんたちは予備バッテリーと予備の予備バッテリー常備は常識だとか。

 で、何の話だっけ?

「コンビニには電池も売っているのか」

 と嘉久がつぶやいた。

 観光地の売店でも撃ってるよ。カメラは昔乾電池式が多かったからね。

 それから、使い捨てカメラも昔はよく見かけたらしい。携帯カメラ世代なんで、使ったことないけど。

 レジでお会計。

「これで、小銭もできましたし、さぁ、バスに乗りましょう」


 最初の目的地は「三十三間堂」だ。

 観光地に向かうバスだけれど、会社によっては休みかもしれないけど、平日なのでGW中とはいえさほど混んではいない。

 椅子には座れなかったけれど、押し合いへし合いするほどではない。嘉久の手を放して、手すりにつかまる。

 嘉久は、そのまま手をじっと見ている。

 まさか、その手をどうしていいのか分からないとか?いや、つかまろうね?どこかに、つかまろう!そうしないと、

 バスが発車。揺れて、体がふらつく。

 ふらついた嘉久がバランスを崩して、私の方に倒れてきた。

 とっさに、体を支えようとして、嘉久の顔が、私の頬にぶつかる。

 ほらっ、もう、つかまってないからだよっ!

 っていうか、何だこれ。

 乙女ゲームなら、普通、ふらつくヒロインを攻略対象が支えるものだろう?なんで逆転してんの?

 あ、私がヒロインじゃないからか……。

 きっと嘉久はこの経験を糧に「バスは捕まらないとダメ」を覚えて成長するわけだ。

 嘉久が、左手で口元を押え、右手でやっと吊革につかまった。

「璃々亜、お、俺……」

 変な顔してる。

「わざとじゃないんだ、その……」

「わかっておりますわ。嘉久様は、慣れていらっしゃらないのですわよね?」

 バスにのったのは初めてだろう。あ、いや。もちろん遠足などでのバスではなく、こうして路線バスに立って乗るというのがって意味で。

「キ、キ、キスなんて、慣れてるわけないだろっ」

 キス?

 バスじゃなくて、キス?

 意味が分かりません。

 じぃーっと、嘉久の目を見れば、ふいとそらされる。目が赤い?顔も赤い?

 口元押さえ続けてる?

 ん?そういえば、よろめいた嘉久の顔が、私のほっぺにぶつかったけど……。

 え?

 もしかして、唇が、私のほっぺに触れたの?

 うっひゃーっ!

 少女漫画かよっ!

 っていうか、だから、男女逆転してるってのっ!

 というか、ちょっと嘉久うろたえすぎっつ。たかがほっぺチュウでしょっ、それも事故的な!

 いや、私も慣れてないから恥ずかしいけどさ、言わなきゃ、私は気が付かなかったのにぃっ!

「いえ、バスに乗るのが慣れていないので、よろけても仕方がありませんわ。あの、キス……ではなく、単にぶつかっただけだと思いますから、気になさらないでくださいませ」

 そう。

 今のは断じてキスにあらず。

 ほっぺと唇がぶつかった、ただそれだけ。うん。よし。

 弟の犬攻撃に比べればなんてことはないっ!

「ぶつかった……だけ……ぶつかった……。そ、そうだったな。すまん、璃々亜。痛くなかったか?」

「平気ですわ。それより、降りる方をご覧になってくださいませ」

 うっかり私まで動揺して大切なことを忘れるところだった。嘉久はバス初心者。降りるときにお金を払うのに方法が分からなくて戸惑って時間をかけてしまえば、他の人の迷惑になってしまう。

「なるほど、おつりのないようにお金を事前に準備しておく必要があるわけだな」

「ええ、そうですわ。両替もできますが、千円札と小銭しか両替できません」

「今の人は?お金は入れていないようだが」

「ああ、回数券か何かでしょう」

「回数券?バスにも回数券があるのか。あ、今の人はまさか定期券か?」

「ええ、そうだと思いますわ」

 嘉久は、キス事件の動揺も忘れ、初めて知るいろいろなことに目を輝かせている。

 それこそ、子供みたいに。

 嬉しそうに、楽しそうに見ている嘉久を見てたら、こっちまで楽しい気持ちになる。

 なんだろう、この気持ち……。


ごらんいただきありがとうございます。


うっひゃー、純情すぎるキャラになっているよ、嘉久。

……(´・ω・`)えー、こんなキャラ付けでよかったかな……。

いいよね。今さら残念キャラがかっこよくなれるとは誰も思ってないはず……

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