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【書籍化】オタクガール、悪役令嬢に転生する。【web版】  作者: 富士とまと


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第326話 進化らしい

「観光に行くのですわよね?目的地の散策だけが観光ではありませんわ。道中も含めて、移動時間全てが観光なのですわ。目的地に向かう場所も門前町や宿場町として発展した場所なのではありませんこと?風情の残る街並みを歩くだけでも観光になりますわ。立ち並ぶお店を覗いて、気に入ったちょっとしたものを買う……。偶然出会った素敵な物、予定にはなかった素晴らしい時間……」

 嘉久が、はっとした顔を見せる。

「街並みも観光……」

 いや、旅行くらい行ったことあるよね?

「なるほど。そうだな。ビジネスじゃないんだ。効率のよい移動方法ばかり考えていた……すまない璃々亜」

 しゅんと頭を垂れた嘉久。

 よしよしとなでようとしてしまった手をひっこめる。

 子ども扱いしては失礼だよね……。

「いいえ、ビジネスでは時間は金なりと申しますから。嘉久様のように効率の良い移動方法を考えることも大切なのでしょうね。ですけど、観光ですから、目的地と移動手段をおおざっぱに調べれば十分ですわ。親しい人と出かければ、どんな場所に出かけようと楽しめますものね」

 友達とお出かけ!

 近所の公園だって楽しいさ。

 観光じゃなくたって、食事一つとっても楽しいさ。

「し、親しい人……」

 嘉久の頬がうっすら赤くなる。

 おお、ビジネス感覚でいた嘉久にも、友達と出かける素晴らしさが伝わったのか、血の気が戻ったぞ!

「えっと、ですから、このようなスケジュールは必要ありませんわ。まだ京都まで時間がございますもの。もう一度二人で今後の予定を考えません事?」

「今後の予定を二人で……」

 嘉久が、漫画でいえば「ほわわわーん」っていう擬態語が似合いそうな顔をした。

 あれ?こういう「ほわわわーん」って芽維たんっぽいな。……もしかして、似た者同士、天然同士な攻略対象ってこと?

「まず、位置関係を確認いたしましょう。手土産を買うお店は外せませんわよね」

 移動時間で3時間とかあほな予定は却下。

 もっと現地で楽しむ時間を確保。

 そのためには、手土産を買う店周辺、もしくは通過地点を目的地とせねばなるまい。

 ……いくら、世界遺産だとか、京都に行ったからには見逃せないだとかでも……、欲張って京都の北の端から南の端まで移動するとかないからっ!

 てなわけで、スマホを駆使し、嘉久のプリントアウトした紙の裏をメモ用紙代わりに、二人で今日の予定を立てることに。

「店があるのは、ここだ」

 スマホの地図を嘉久が表示する。

 最寄駅の名前で観光検索。

 ぶほっ、あるじゃないか、世界遺産……。

 それから、京都駅からその駅までの路線上の観光地をいくつかピックアップ。

「嘉久様は、何に興味がございますか?」

「え?俺?いや、璃々亜の行きたいところで……」

 ふむ。

「せっかくですから、二人で楽しめるところがいいと思いませんこと?」

 にこっ。

 嘉久が楽しんでいれば、私は私で楽しめる。

 そう、京様×都キャプテンの聖地だから、もしかしたらどっかのオタク店員さんがいるお店が、交流ノートとかおいてあったりするかもしれないじゃない?

 嘉久が何かに夢中になってくれれば、そのすきに迷子になったふりしてちょいと見ることもできると思うのっ!

 どうだろう、この、私の、完璧な作戦っ!

 嘉久も楽しいし、私も楽しい。

 まさに、ウインウイン、いや、ウィンウィン、いや、winwinな作戦ですわ。おーっほっほっほっほっほ。

「二人で楽しむ?」

 嘉久は、スマホで「二人 楽しむ 京都」で検索開始。

 いや、そうじゃなくて、嘉久が熱中出来そうなものをですね、選んでいただければ私も楽しめるという……。

 検索結果には、「デート」「カップル」「恋人同士」って単語が並んでいる。

 あー、そうよね。そうなるわねぇ……。

「デ、デ、デ、デート……とか、り、璃々亜はそういう楽しみ方がしたいと……?」

 嘉久が明らかに動揺したように変なテンションの声を発する。

「いえ、そうではなくて」

 とはっきり言えば、嘉久が「そ、そうか……」と肩を落とした。

 なんだ?嘉久はデートみたいな楽しみ方がしたかったの?

 ……あ、まぁそうだねぇ。ヒロインとデートする将来に備えて、練習は必要かもしれないね……。

 練習したいというなら、あらかじめ言ってくれれば……。昔読んだ同人誌の知識を総動員して、男同士のデートにおすすめスポット10選を作っておいてあげるのに!

 あ、違った。

 男同士のデートスポットじゃだめだった。

 でなくって、なんだっけ?

 そうそう。

「例えば、人気者になれる神社や、必勝を祈願する神社などいろいろとございますでしょう?お掃除の技術が上がる神社とか、嘉久様が行きたい場所はありませんの?2,3カ所回るんですもの。私が行きたい場所ばかりではなく、嘉久様が行きたい場所と半分ずつ回りませんこと?」

「あ、ああ、そういう意味の、二人で楽しむってことか……ありがとう、璃々亜……でも、いいよ、どこでも……」

 あっれー?

 嘉久やる気ないなっ!

 いつもの猪突猛進はどうなったの?

「あ、これ、漫画に出てきた場所じゃないのか?」

 はい?

 漫画?

 スマホに表示されているのは「伏見稲荷」。

 うーん、神社なんて漫画やアニメに出てくることはあっても、それがどこかなんて特定、分かりません。

「たしか『いきなりとんとん恋いろは』ってタイトルで、主人公が稲荷神社の狐の神様を」

 知らないなぁ。

 っていうか、嘉久、お前いつの間にそんなにいろんな漫画の知識を蓄えてるんだ?

 はっ!

 ま、ま、まさか……。

「オタク……」

 に、嘉久は進化したのか?


ご覧いただきありがとうございます。

実際にyから始まる検索サイトで「二人 楽しむ 京都」で検索して執筆。

細かいでしょ?

なので、気になる方は調べてみてくださいね。

ただ……ラブホ的な字面を見て、嘉久大慌てっ!みたいなのをちょっと期待したんだけど、残念ながらラブホ的な単語は出てきませんでした。……いや、デートって単語でも十分大慌て!だったので、嘉久ってば純情ですね……(*'ω'*)

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