第325話 嘉久の予定表らしい
東京駅のタクシー昇降口……八重洲口!
こっから、ピッグサイトまでタクシーに乗るんだと、地方の作家様がおっしゃってた!
って、そのタクシー昇降口の片隅にリムジンが止まる。
で、降りる。ぐあー、なんだかすごい視線を感じる。
仕方ないよなぁ。リムジンだよ?
私だって、リムジンいたら「何?誰?石油王?」とか思ってガン見しちゃうし……。
すみません、こんな若造二人降りてきて。
降りたら、スーツ姿の女性と男性が立っていた。
「高円寺様、このたびはご利用ありがとうございます」
は?
何をご利用したの、嘉久?
昨日、京都行を決めてから、何を利用したというの?わざわざこんな朝っぱらから待ってもらって……。
「こちらが、チケットとなります。ホームまでご案内させていただきます」
え?
チケット?
ホーム?
連れてこられたのは、普通の新幹線ホーム。
……。乗るのは、まぁグリーン車で、普通よりは少しいいけれど、貸し切りとか全然そんな特別な感じではない。
えー、まさかと思うけど、たかが新幹線に乗るのに、何を利用したの?この人たち何?
なんだか、申し訳ない気持ちになった。
いや、彼らも仕事なんだし、そこに金銭的な報酬が支払われているのであれば構わないんだけど……。
新幹線に乗り込む。窓の外には先ほどの二人。新幹線が動き出すと丁寧に頭を下げた。
って、あの人たち、ツアーとかの案内じゃなくて、マジで新幹線のチケット渡してホームに案内するためだけにわざわざ2人で来たの?
……。新幹線くらい、自分でチケット買って乗ろうか?ホームくらい自分で移動しようか?
こんなんで、京都旅行とかできるの?
はっ、まさか、新幹線が到着するとまた、こういう人が待ってて、案内とかしてくれるわけ?
……。まぁ、個人でツアーガイドとかも雇えるし……。
確か、秋葉原にはメイドの格好したツアーガイドとかもいるんだよね……。そっか。そういう人を頼んであるのかな?
と、思っていたら……。
ガサゴソ。
嘉久がポケットから取り出した紙を広げて、私に手渡した。
ん?
A4サイズのプリントアウトされた紙にはびっしり細かい文字が並んでいる。
「今、ここな」
と指さされた部分には「新幹線乗車、移動、京都駅到着」とある。左側には時間が書き込まれている。
よく見れば、白川家出発、東京駅到着とかの文字もある。
「この時刻に京都駅に到着予定だ。移動時間10分でこの時間発の電車に乗り換える。乗車時間17分。駅に到着して徒歩15分で目的地に到着だ。散策時間は、ホームページの基本ルート通りであれば、およそ80分。トイレ休憩などの余裕をみて10分余分に時間を取った。散策終了後は再び徒歩15分で駅に戻り、この時間の次の目的地息の電車に乗る。乗車時間36分。そこからは7分で移動してバスに乗り換える。バスで移動すること48分。ああ、もちろんここのバスの部分はタクシーに切り替えることも可能だ。その場合、到着予定時刻は15分ほど早くなると予想される。それから」
ちょっと待って……。
「何ですの……これ……」
分刻みのスケジュール……初めてみたよ。
何分の電車に乗るとか……そのために移動に使える時間がどうとか……。
嘉久、お前……殺人事件でも起こす気か?そんなぎゅーっと凝縮した分刻みのスケジュール、なんたら特急殺人事件でしか見たことない。
……っていうか、さすがにチケットを購入済の時間が決まっている新幹線とか飛行機にのる場合は、間に合うように時間を逆算しなくちゃいけないけど……。
10分に1本くらい走ってる電車なんて、駅に着いた時に次の電車は何時に来るのかな?って見て乗ればいいじゃん。もし30分とかすごく間があいちゃっても、お茶飲んだりして時間つぶすとか。旅先なんだから、土産物売り場見て時間つぶすとか……。
っていう部分にも突っ込み入れたいけど……。
2,3カ所巡るっていう私の話を考慮して予定を組んだんだろうけど……。
移動時間が片道1時間半とかの場所で、散策時間30分とか、何このスケジュール……。移動だけで往復3時間。なんで、わざわざそんな遠くの場所へ?
京都だよ?2,3カ所が、もっと近場にあるでしょっ!
ビリビリ。
あっ、しまった。
思わず、嘉久が作った予定表を衝動的に破いてしまった。
「りっ、璃々亜っ!」
当然、嘉久が驚いて声を上げる。
「ごめんなさい、嘉久様……。私のためにいろいろと調べて予定を組んでくださったのですわね?」
っていうか、そもそも移動時間何分ってあるけど、駅の乗り換えとか時間内にこなせるわけ?
また、案内人がいて案内してくれるの?土地勘のない場所なんて、券売機で切符買うのだってそこそこ時間かかるんだよ?
現在地から目的地までの案内板見て値段確認したり……。切符じゃなくてチャージ式のカード使えばいいのかな?そうか。
suicaじゃなくて、こっちの世界ではなんだっけ?そんでもって、京都の路線では何が使えるんだろう?駅に置いてあるから確認すればいいかな……。
「ゴールデンウィークですし、きっと普段より混んでいて予定通りに移動できないことも多いと思いますわ。ほら、何キロの渋滞とかニュースになっていますでしょう?」
電車移動では問題ないが、バス移動が途中で入る場合は渋滞にはまったら予定が全部狂うよねぇ。だから、嘘は言っていない。
「混んでる……混んでるよな。うん。うん、そうか。渋滞……そこまで考慮していなかった」
「それに、徒歩何分の場所へ歩いて向かう途中、例えば素敵なカフェを見つけたら立ち寄りたくなりませんこと?」
「大丈夫だ、お茶を飲む場所も時間に組み込んである」
がくっ。
「いえ、そうではなくて……。移動途中に、おいしそうなにおいがする串焼きを売っていたら立ち止まって見たりしませんこと?」
「おいしそうな串焼きか……。そういえば、おすすめグルメとやらに載っているものがあったが。璃々亜に立ち食いをさせるわけは行かないと予定には入れてない」
はー。そうですか。
私への気遣いで、串焼きの予定はなくなったんですね……。心遣い感謝いたしま……なんて言うわけないっしょっ!
「嘉久様、いろいろと私のために気を使っていただいて嬉しいのですが……」
「そ、そうか。喜んでもらえて何よりだ」
いや、喜んでないっての。
いつもありがとうございます。
嘉久の努力を璃々亜はあっさりと玉砕。
……分刻みのスケジュールはねぇ、さすがにねぇ、トイレの時間まで指定されてもねぇ……げっそり




