第322話 毎日が楽しいらしい
「急に、時間が取れたら連絡して。どこでいつ何があるのか調べておいたから。どの日でも案内できるよ」
え?
えーっと、具体的な単語はかかれてないけど……。
どこでいつ何があるのかって、イベントのことだよね?
ゴールデンウィーク中のイベントを、調べてくれたってこと?
まぁ、東京にいれば、大小の差はあれど、休日ならどこかで同人誌即売会やコスプレイベントはあるだろう。
「ありがとう。明日は京都に行くことになりました。明後日は」
図書委員の打ち合わせですと書こうとして、手を止める。
危ない!
図書委員なんて書いたら、身バレするってのっ!
委員会の打ち合わせもやばいよね。その日打ち合わせをしてる委員会なんて、それほど多くないだろうから……。
えーっと、なんて書けばいいかな。
「明後日は、ちょっとした会食があります」
よし、これで嘘ではないよね。
お嬢様お坊ちゃまなら、会食も日常的にある……よね?
「京都に行くんだ。姉みたいに反物見に行くの?」
すぐに弟からメールが帰ってきた。
NARUKOの姉は、衣装係をしていて、鳴子踊りの衣装に使うための反物を探すって話があったんだよね。
割と普段は無口なんだけど、衣装へのこだわりはとにかくすごくて、踊りの動きを一番綺麗に見せるデザイン、それに合う模様の反物を求めて、京都まで行くのだ。もちろん、弟も一緒に。
「おいしいもの食べに行くの」
あと、ついでに観光。まだどこへ行くのかは知らないけど。
「そっか。食べたいな……おいしそうだ」
と弟から返事。何を食べると書かなかったけど、弟も想像だけでおいしそうって思うの?
ふふふ。案外食いしん坊かもね。
そういえば、私の口についたクリームまで舐めるくらいの食いしん坊っぷりだったなぁ……。
……あ、やばい。変なこと思い出して赤面っ。
よく考えたら、明後日も料亭での打ち合わせだからおいしい物食べるんだなぁと、意識を別のところに移す。
あはー。よだれたらり。
おっと、いけない。
えーっと、弟への返信は……。
「食べ物は、賞味期限があって無理だけど、何かお土産買ってくるね!」
そうだよ。せっかく、ついでとはいえ京都観光するんだもんっ!
お土産とか買ったり、楽しもう!
えっと、お土産を渡したい人は……。
田中くんと、芽維たんと、皐月たんと……それから、一緒にネズニーにいく、相原さんや轟くんたちの分もかわなくちゃっ!
あと、図書委員のメンバーにも!
うふふっ。
すごいよ、すごいね、私!
お土産を買っていく相手がすごくいっぱいいる……。
あはは。ちょっとだけ、目頭が熱くなった。
もう、ボッチじゃないよね……。私……。
突然、全然知らない乙女ゲームの世界にきちゃったけど……。今は、全然知らないことはないよね……。
友達がいて、家族がいて、……ここが、今の私の世界。
……いや、ゲームの内容はいまだに全然知らないことには変わりないか?
本当に、私には破滅する未来が待っているかどうかは知らない。
でも、今は楽しいし、うれしいこといっぱいある。
幸せなんだよ?
……まぁ、BLとの接点が少なくてその点においてはあんまり幸せじゃないけど……逆に考えれば、制限されているからこそ、ほんの少し接することができたら、その時の幸せ度合いは昔の比じゃないんだけどさ。
イベントも、毎月当たり前のように「次はいつ行く?」ってんじゃなくて、それこそ年に何度か、特別な日!という方が気持ちも盛り上がるし。
……。
そうだなぁ。夏と冬の2回行ければ幸せなのかも。
あ、まって、春かGWのどちらかはせめて……。年に3回!3回は死守したい!
ん?なんの話だっけ?
スマホがメールの着信を告げる。
「幸せ」
と、短いメールが届いてた。
そっか。弟も、今が幸せなんだね。
変装したりめんどくさいけど、年に何度かイベント行けるようになったなら、幸せだよねー。ふふふ。
そうだよね。オタクの幸せハードルって意外と低い。……。
だってさ、恋愛で幸せ感じようと思えば、相手の態度や気持ちに左右されちゃったりもする。思い通りになることって少ないし、思い通りにしようとすればするほど、相手が離れていったりするわけで……。
その点、オタカツはさ、お金さえあればある程度何とかなるわけで……。
あ、もちろん、お金じゃなんともならないこともあるよ?
押しキャラ死亡とか……。京様と東くんのラブイチャ回だとか……。がしかし、いっぱしのオタクならば、そのすべての不幸の種を、同人誌なり妄想なり、何かで補完するのだっ!
……。
って、なんの話?
そうそう、私も弟も幸せって話だったっけ。
やっぱり、恋愛脳よりも、オタク脳のが幸せってことね。うん。うん。
……あれ?そういうこと?なんの話?
と、スマホがメールの着信を告げた。
「緑寿庵青水の金平糖ですか?それは素敵です!よろしくお願いいたしますわ!」
おお、知ってるの?緑寿庵青水の金平糖って書くと、分かるの?すごいなぁ。
ってメールが次々に届く。
いや、本当、なんでみんな知ってるの?
あ、知らなかったら、ネットとかで調べて「おお、これかぁ」と思ってからメールしてるのかな?
でもまぁ、これだけ有名ならば、料亭娘さんのご両親も「金平糖なんて駄菓子じゃないの、なにこの手土産」とは思わないよね?
よしよし。
そして、メールにはいくつか「京都にお出かけになるのですね」と、京都行に関してのメッセージもあった。
前にどこどこ行ってよかったよとか。すかさず、返信。時間が取れればぜひ行ってみたいですわ的な。
……こうして、図書委員の仕事以外の雑談メールしてたら、仲良くなれそうじゃない?
どうしよう。毎日が楽しすぎる。
ご覧いただきありがとうございます。
弟の幸せは、璃々亜とは違うと思う(´・ω・`)




