閑話 そのころ部活中の田中くんは……
部室に入ったとたん、着替えていた1年生部員たちが鋭い目つきでこちらを見た。
「田中、おまえだけずるいぞ」
ずるい?
まさか……!
部室の奥にいた○○を見ると、あからさまに顔を背けられた。
「○○……まさか、みんなにばれたのか?」
あれだけ内緒にと言っておいたのに……。
「ばれたも何も、○○は自慢げに言い触らしてたぞ!」
なんてことだ……。
確かに、わからなくはないよ?
みんなのひそかなアイドルである鈴木が作ったお菓子をもらったんだからな。いいだろうって言いたい気持ちはわかる。
だが、それを知った皆がどういう反応をするかくらい想像つくだろう……。
「田中は○○より前からもらっていたらしいな?彼女か?」
「い、いや、違う……」
着替え途中の部員たちが、手を止めて周りに集まってきた。
「そうか、彼女なら仕方がないと諦めたが、そうじゃないなら……分けてくれるよな?」
ほらきた。
「いや、さすがに見ず知らずの人間にほいほい配るようなことはしないと思う……」
「ふぅーん、知り合いになればくれるってことか?」
しまった!
「いや、その、彼女じゃないけど幼なじみという特別な関係だから……知り合いになった程度じゃもらえないと思うぞ」
本当は、幼なじみの親友からもらっているんだけど。
言い訳するために鈴木の名前を借りる。
「うわー、特別な関係とか、くそ、リア充発言来た!」
「幼なじみ、かわいい幼なじみ、ほしいっ!」
「せめて、幼なじみには無理でもお菓子は欲しい!」
「女子の手作りお菓子!うおー!」
「もう、いっそ、真っ黒焦げすけでもいいっ!真っ黒焦げすけ出ておいでー!」
ああ、変なテンションで盛り上がり始めた。こうなると厄介なんだよなぁ。
恨めしげな目で○○を見る。
お前のせいだぞ!
○○が、スマンと、顔の前で手を合わせた。
思った通り、この変なテンションのまま部活の時間が始まり、終わるころには、このテンションが先輩たちにまで伝染した。
「わかったな、田中」
わかりたくない。
だけれど、白川からもらったお菓子を他の奴らに奪われるくらいなら、この方が増しなのかもしれない。
「はい、わかりました。伝えるだけは伝えて見ます。返事は期待しないでください」
作ったお菓子を持て余している部員が他にもいるはずだ。飢えた野球部員に愛の手をと……幼なじみに伝えてくれ……か。
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嘉久ターンまで、たぶん、あともう少し……




