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【書籍化】オタクガール、悪役令嬢に転生する。【web版】  作者: 富士とまと


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第296話 服装はオタクらしさを目指しているらしい

 そういえば、弟から明日は秋葉原に行くとかなんとかメールが来ていたような気がする。

 そっか。

 だけど、オタクショップじゃなくて普通の本屋に同じタイミングで立ち寄るなんて……。

「偶然だね」

 と、笑って見せた。とはいえ、良く考えたら今日はマスクにサングラスだし、笑ってもわからないかな。

「じゃないんだけど」

「え?」

 弟が何かぼそっとつぶやいたけれど、小さな声な上に、マスクの中からなので声がくぐもっていて聞き取れなかった。

「なんでもない。姉は、出かけるときはいつもその格好なの?」

 弟が話題を帰るように服装の話をしはじめた。

「違うよ、今日は変装。うちはイベントだけじゃなくて漫画すら買う自由がないの」

 すこしずつ漫画が好きなんだよっていうのを見せていけばそのうち自由になるかもしれないけど。

 前世を思い出してそれまでの記憶がなくなっちゃったことを知られないようにするには、いきなりオタク全開するわけにはいかないからねぇ。っていうか、上流階級なお嬢様がオタクを表明することのデメリットも知らないから……。

 もし、私が「オタクなんっすわ」、「BL大好物でしゅ」、「京様×都キャプテンはふはふっ」とか言い出したら……。白川家にどんな影響を及ぼすか……。

 うん、オタクはそれなりに社会的地位認められたような気がしないでもない。

 ほら、アイドルでもさ、アニメ好きなんですって言って人気がある子もいっぱい増えたし。

 お笑い芸人も公言する人増えたし。

 でもねぇ、まだBL好きっていう世界は理解されないというか……。

 まぁ、わからなくはないのよ。私にも理解しがたいジャンルがあるからね。

 スプラッタエロとか、グロいの。あれはさすがにわからん。ホラーとして楽しんでいるのかエロとして楽しんでいるのか……。さすがにちょいとあの世界を熱く語られても引く。……っていうか、ごめん、同じに見られたくない。

 ……。そう考えると、この世界は乙女ゲームでよかったよ。

 猟奇的な人気ゲームもあるからね。そんな世界に転生とかさせられてたら……。

 神様、ごめんなさい。乙女ゲームでまだよかったよ……。

 おっと、話がそれた。

 えーっと、つまり、オタクだってばれるだけならまだしも、BL好きな腐女子だってばれちゃうのはかなり危険。さらに、前世ではとっくに18歳すぎてたから、無意識に18禁作品に手を伸ばしそうで、それもばれたら大問題なわけで……。

 なので、どこまでばれてどこまで隠すかじゃなくてさ、まるっと隠すのです。

「そっか、そうだよね。鳳凰学園に通うお嬢様なら……」

 と、弟がふぅっとため息。

 そっか、やっぱりお嬢様はオタクだめか。隠しといてよかったよ。

「弟もいつもその格好?」

 弟はコスプレのときと変わらず、前髪垂らして汚れた大きなレンズの眼鏡にマスクをしていた。

 服装は、薄いグレーのパーカーに、ジーンズというラフな格好だ。

 オタクでも一般人でもオシャレ芸能人でも、誰でも着そうな格好なんだけど……。

 姿勢がいいから、とてもオタクには見えない。モデルっぽい。

「あー、似合わない?姉さんに会えるなら、もっとオシャレすればよかった」

 とか、恥ずかしそうに下をむいちゃった。

「弟は何着ても似合うし、モデルみたいだなーって思ったよ」

 と、褒めたつもりが、なぜか弟はすこし首を傾げた。

「オタクっぽくない?」

 ん?まさか、オタクっぽい格好を目指してこの服装を選んだの?

「姉さんは、モデルとオタクがいたら、どっちが好き?」

「オタク」

 即答。

 弟がしゅんっとする。

「どうしたら、オタクっぽい格好ができるのかな……家にある服装じゃぁ、これ以上は……」

 と、ぶつぶつと言いはじめた。

 家にある服装か。

 りりあのクローゼットを思い出す。うん、確かにオタク女子全開の服装はなか……いや、待てよ?

 別方向のオタクっぽい服はあったなぁ。ロリータ系ファッションが。

 あれ、りりあの趣味じゃなくて、お母様の趣味だよなぁ。……そういやぁ、メイドの早間さんも好きみたいだけど。お母様も早間さんもオタクっていうわけではないんだよね?

 兄や義久が普段着てる服も、オタクっぽいって思うものはない。いったいなんだろう、オタクっぽい服装って。

「アニメTシャツ」

 ふと口にする。

 誰が見てもオタクな服装といえばそれしかない。

「もったいなくてイベント以外には着られない!」

 とか弟が言った。

 へぇ、イベント以外に着られないのか。

 私は愛するキャラクターのTシャツはもったいなくて一度も袖を通したくないのにな。

 そういったら、みっきゅんは「私は家の中で着てる!荘司様に包まれてるみたいで幸せになれるから、着てみなよ!」って言われたな。

 でもさ、着ちゃったら、顔見られないじゃん。私は、飾っておいて顔を見る方が好きなんだけどさ。

 そうか、弟はイベントに着ていっちゃう派か。

「でも、姉さんが望むなら何枚か買っていつも着ようかな……」

 待て!

 私は一度も望んだ覚えはないんだが!むしろ

「何枚買おうとも、お宝は大切に保管!もったいないと思う気持ちは重視したほうがいいよ。それに、残念ながら弟は何を着てもモデルっぽくなっちゃうんじゃないかな?」

 スタイルが良くて、姿勢もいい。

 もしオタクっぽさを出すなら、だらし無い姿勢と、肉まみれの体を手に入れればいいんじゃないかと……。

 あ、オタクがデブとかそういう意味じゃないよ?モデルっぽくなくなるためにはって意味だからね!

「何を着てもモデルっぽく……。姉さん、モデルよりもオタクが好きなんだよね?」

「うん」

「姉さんは、僕のこと嫌いにならない?」

 あ?

 何言い出すの、弟よ。


ご覧いただきありがとうございます。


弟の理想は複雑だなぁ……(´・ω・`)

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