第281話 待ち合わせは時間より早くついたらしい
うん。張り切りすぎた。
待ち合わせよりも、30分も早く付いちゃうよ。
どうしよう、どこかで時間つぶしてから待ち合わせの場所に行くべきか、待ち合わせの場所で待つべきか。
とりあえず、待ち合わせした場所の確認をして、周りに何か時間がつぶせそうな場所がないか見て決めようかな。
「あっ!」
あれ?
私、待ち合わせの時間間違えた?
田中くんが、スマホの画面を見ながら立ってる!
もしかして、来ない私にメールしようとしてるとか……!
あわわっ!
急いで田中くんの元に駆け寄る。
「ご、ごめんなさい、お待たせいたしましたっ」
はー、ふー、はー、ふー。
スマホを覗き込んだままの田中くんの正面に立ち、声をかける。顔を上げた田中くんは、驚いた表情をしていた。
「え?あ、いや、待ってないっていうか、ずいぶん早いね?まだ30分前だよ?」
はい?
ってことは、あれ?時間は間違えてなかった?
30分前にすでに何で、田中くんが?
「田中くんこそ、いついらしたのですか?」
「あ、ああ、さっき来たところ……まさか、白川がこんなに早く来てくれるなんて思わなかったな……」
田中くんが、スマホをポケットにしまいながら笑った。
「えっと、もしかして女性は支度に時間がかかると?」
早く来ちゃったけど、支度に時間をもう少しかけた方がよかったかな?
やだ、秋葉原のことで頭いっぱいだったけど……。学校の外で田中くんに会うのに、服装とかあんまり考えてなかった。
今更だけど、私、変な恰好してないよね?
「いや、違うんだ、遅れてくるとは思ってなかったけど、僕と同じ理由で早く来てくれたって想像したら嬉しくなっただけだから……」
「え?」
「何でもない。さぁ、行こうか」
私と同じ理由?
私が早く着いたのは、秋葉原が楽しみだったから。あ、田中くんも楽しみだった?
……そっか。
きっと、スポーツ用品店って、私にとって本屋みたいなもんなんだね!
などと考えていたら、すっと伸びた田中くんの手が、私の手を握った。
「!」
おおう、手を繋いじゃったっ!
そうだった、田中くんは、立花ちゃんのように私が迷子になるのを心配してくれるんだった。
あううっ、私、迷子になるほど子供じゃないよ?
……いや、迷子になったけどね、ネズニーで。
「チラッと田中くんの顔を見上げる」
目が合った田中くんがつないだ手をすっと持ち上げた。
「また、変なのに絡まれるといけないから……」
ふおっ!
そうか、そうだったんだ。迷子防止ってわけじゃなかったんだね。
うん、確かに、あの時怖かった。
「嫌だったら……」
田中くんが少し困った顔というか、不安そうな顔をする。
「ううん、ありがとう」
私の安全を考えてくれてるのに、嫌なわけがない。
田中くんに引かれて、手をつないで歩く。
ドキドキ。
嫌じゃないけど……。
田中くんはただの親切なのに、私は、異性と手をつなぐのに慣れてなくてすごくドキドキしてる。
「ずるい」
田中くんに聞こえないように小さくつぶやいた。
通り過ぎる道にも、スポーツ用品店がいくつかあった。
「えっと」
田中くんがスマホを取り出して、地図を確認している。
あれ?もしかして、待ち合わせた時見てたのも地図なのかな?
普段よく使うお店に連れて行ってくれるんじゃないのかな??
田中くんの横顔を見ると、ふと顔を上げた。
「ああ、店は2階かぁ」
ん?やっぱり初めて来るみたいな言い方だよね?
「ここさ、スポーツ用品店の中でも、レディースが中心らしくてさ」
田中くんがエレベーターの中で説明してくれた。
「わざわざ調べてくださったのですか?」
「あー、いや、自分の調べもののついでに、目に付いたから……。あ、実際来るの初めてだから、期待外れだったらごめん」
田中くんが頭をかいた。
結論から言おう。
田中くん、ごめん。
なんていうか、スポーツ用品店だよね?ってくらい、乙女チックです。
まずは、テニスウェアのフリフリフワフワフェアリー度といったら……本当に運動する気ある?と疑うくらい。
テニスのラケットや卓球のラケットこそ割と普通だけど、そのカバーといったら、ピンクのハートに天使の羽。キュートな品揃え。
競泳水着も、練習用ともなればお花にひよこにかわいくてカラフルな模様がびっちり。
もちろん、スポーツ用の下着なんてのもいっぱいならんでいまして、ですね……。
男性客は当然一人もいません。
店員も女性ばかりです。
まじ、ごめん、田中くんにとって、完全なアウェーだ。
そして、私にとっても……居心地が悪い。
だって、いくら乙女チック店内とはいえ、スポーツ用品店。コスプレ用にげふんげふん……な私としては、唯一の味方である田中くんがギブ状態では戦えません。
いや、戦わなくてもいいけど。場違い感が半端なくてね……。
だからと言って、せっかく調べて連れてきてもらったのに、すぐに店を出るのも悪いので……えーっと、10分くらい、店内ウロウロしました。
あ、田中くんは流石に付き合わせるのが申し訳ないので、入り口付近で待っていてもらいました。
いつもありがとうございます。
田中ターン突入です。
田中くんの心情を考えながら読むと、甘ずっぱいです。頑張れ!




