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【書籍化】オタクガール、悪役令嬢に転生する。【web版】  作者: 富士とまと


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第275話 夕飯がゆっくり食べられないらしい

「そっか。うん、じゃぁいいよ。男子って、甘い物苦手なイメージだったけど、そうじゃない人もいるんだね」

 芽維たんが、男子生徒にケーキの箱を手渡した。

「マジ?本当に、もらっていいの?」

 男子生徒が目を見開いて箱を受け取る。

「やった!嬉しい!やった!ひゃほーっ!」

 めっちゃ喜んでます。

 芽維たんが、私の顔を見る。

「よっぽど甘い物に飢えてたのかな?野球部員同志でケーキ屋とか行きにくそうだもんね」

 ぼそっと私だけに聞こえるように芽維たんがつぶやいた。

 いかにもスポーツマンの日焼けしてがっしり体系の男子高校生が集団でケーキ屋……。

 うん、確かに違和感。

 いや、待て待て。甘い物が本当にそんなに好きなのか?

 彼は、甘い物が好きなんじゃなくて、芽維たんが好きで、芽維たんから手作りお菓子が貰えたことに喜んでいるんじゃないだろうか?

 それとも、田中くんのように、運動した後でお腹が空くので嬉しいのかもしれない。

 ほら、田中くんは空腹に耐えられなくなったのか、今渡したばかりのケーキの箱から、シフォンケーキを一切れ取り出して口に運んでいる。

「流石白川」

 おいしそうに頬張り、笑顔を私に向けた。

「あ、ありがとう」

 先輩の支持通りに作っただけだけど……泡立ては練習して頑張ったから、素直に嬉しい。

 えへへと照れ笑いを浮かべる。

 それから、野球部の男子高生も、田中くんの真似して芽維たんからもらった箱からケーキを出してガブリ。

「マジ、うまいっすぅ~!最高っす!」

 がっつき方が半端なくて、やっぱりお腹が空いていただけなのかもしれない……と、改めて思うのであった。

「えへっ、そう?ありがと!」

 芽維たんもおいしそうに食べてもらえて嬉しそうだ。

 うん、まぁよかった。

 と、この時は単純に思ったんだけど……。

 ことはそう、簡単な話ではなかったと、後で思い知るのだが、その時の私も芽維たんも何も気が付かなかった。


 帰ったら、すでに夕飯の時間だったよ。

 はて?

 料理の名前が分からない。

 ラザニアっぽい。

 ミートソースが間に挟まっていて一番上にはチーズがのっているところはラザニア風。だけど、はさんでいるのはパスタではなくて、ジャガイモと茄子だ。

 あ、茄子のグラタンでいいのかな?

 とか思ってたら、嘉久が

「おお、今日はムサカか」

 ムサカ?

 流石グルメ番長!名前をご存じでしたかっ!ムサカね。ムサカ。覚えた。

 いっただきまーす。

 うまっ!

 茄子とミートソースってなんでこんなに合うの?オリーブオイルで炒めた茄子が、少し揚げ茄子っぽくってこれまた茄子だけ口に入れても美味しい!

 チーズもうまい!

 やだ、何で私、今までの人生で一度もムサカを食べたことなかったんだろう!人生の0.2%くらい損してた!

 ……いや、流石に0.2%は損しすぎか?

 ……。

 でも、食は大事。うん。

 美味しい物は正義!

「今日は、ずいぶん遅くまで部活をしていたようだね」

「時間がかかるお菓子を作ったのか?その箱に入ってるんだろ?食べていいか?」

 嘉久がテーブルの隅に置いた箱に手を伸ばす。

 は?

 まだムサカ食べてますけど。

 って、嘉久、お前、いつの間に夕飯を空にしたっ!

「嘉久、璃々亜も一緒に食べるんだ。勝手に触るなよ!」

 兄が、嘉久を止める。

 うん。そうそう、一緒に食べるんだ。夕飯食べ終わるまで待てよっ!

 って、兄の皿も空だよ!

 早く食べ終われみたいな目でこちらを見ないでくださいっ!

 むきゅーっ!

「早間さん、食事の後のお茶の準備は?」

 兄ぃーっ!せかすな!

 ってか、二人とも甘い物に目がないのか?

 男のくせにっ!

 いや、男でも甘い物好きな人間は多いと、今日、学んだではないか。

 なんだか、2人のソワソワに落ち着いて食事ができずに終わった。ったくもぉーっ!こんなことなら、来週からお菓子を持って帰るのやめようかな。

 そうだ、ちょうど、田中くんの野球部仲間の男子高生がお菓子食べたそうだったし。今まで通り、立花ちゃんの分に芽維たんのお菓子を上げてもらって、野球部仲間には、兄と嘉久の分を回そうかな。

 おっと、私の分だけは持って帰って、部屋で一人で食べるかな。

 ……。

 一人で部屋で食べれるかな?

 なんだか、兄や嘉久に食べられちゃいそうな気がしないでもない……ああ、ううっ。


 シフォンケーキは、半分がプレーン。4分の1がココナッツ。もうあと4分の1が芽維たんと交換したオレンジだ。

 それぞれ8分の1サイズにカットしてある。

 私は、ココナッツとオレンジを皿にのせた。

 兄と嘉久は、プレーンと

「おお、どっちもおいしそうだ、両方じゃダメか?」

 嘉久の言葉に、兄が睨み付ける。

「こちらがココナッツ味ですわ。こちらのオレンジ味は、芽維さんが作ったものです。いろいろな味が食べたかったので交換していただいたのですわ」

 説明が終わるかどうかの時に、兄と嘉久が同時にココナッツ味に手を伸ばした。


御覧頂きありがとうございます。

ツイッター上のタイムラインに流れてくる料理で、メニューを決めることもしばしば。

今回は、ムサカというギリシャ名物を取り入れました。食べたことないけどさ。

ツイッターは料理上手な方が多くて勉強になります。

芽維たんの作ったのもおいしいよ?( ;∀;)



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