第265話 嘉久が謝るらしい
「そうだ、璃々亜、すまない」
突然、嘉久が謝った。
卵を飛ばして私にかけたことを謝っているのか?
それとも、勝手に私の卵を無駄にしたことを謝っているのか?いや、もったいないから後で卵焼きにでもするけどさ!
そもそも、私に断りなく勝手に私のメレンゲを卵かけご飯にして食べたことを謝っているのか?
「日曜日、一緒に過ごせそうにないんだ……」
は?
日曜日は、田中くんと午前中に出掛けて、午後からは秋葉原の散策をする予定ですけど?
一緒に?
冗談じゃないっ!
って、そうか、忘れてた。
学校では話しかけないようにとお願いした分、土日はなるべく一緒にいる予定だったんだっけ?
……いや、ボッチな嘉久だから仕方がないけど……。
高校生だし、友達と遊びに行ったりしないと、家族と過ごすとか……寂しすぎるぞ!
あ、家族って、私や兄のことね。
嘉久にとっては家族認定なんだよね?
せめてな、友達と出かけなくても、趣味を持って、趣味に時間を使ったらいいと思うんだよ。
趣味を通じて友達ができることもあるんだよ?
な?
っていうか、嘉久の趣味って何だ?
「日曜日は、どうなさるのですか?」
もしかして趣味で山にでも登るのか?と思って聞いた私が馬鹿だった。
「公園のトイレの大規模掃除をするのだ」
はー、そうですか。
嘉久の現在の趣味は、清掃活動……。
うん、まぁ、それが趣味なら、それはそれでいい……んだよ、ね?
「お茶会部は頑張っているようだな。そうだ、璃々亜、図書委員も何やら動いているようだが……」
「え?ええ。よくご存じですわね?」
「色々と報告が上がってきているからな。先生たちにアンケートを取ったり、3年生はクラスでおすすめの本を聞いて回ったりしているようだ」
ああ、クラスでおすすめの本を聞いて回っているのは、寄贈組か?
ふぅーん。
一応、文芸部に寄贈する本のリストを丸投げっていう訳ではないわけか。
「そういえば、出版社関係に努めている卒業生や、在校生の家族も探しているようだったな」
え?
寄贈以外にも、もう何か考えがあるの?
意外と、色々と考えているようだ。
「相手にとって不足なし」
とか、カッコイイこと言ってみたりして~。
っていうか、そんな台詞を吐くほど相手にしたくないんだけどさ。
「は?璃々亜、今何か言ったか?」
うおっ、しまった。
今、うっかり、口に出してた?
「そういえば、璃々亜、あれは何だ?」
嘉久が、出し巻き卵を咀嚼し終えると口を開いた。
うん、流石に上品な食べ方が見についているのか、咀嚼中には口を開かないんだよね。
ってことは、黙らせたいときは、常に何かを口に放り込む?
……。
……。
うん、黙らせようとするよりも、姿を消した方が早いな。
失礼いたしますわと立ち去れば問題ない。
何?
そもそも、右の耳から左の耳に流せばいいだろうって?
そうか。
うん。
でも、上手くできるかな?ああ、漫画を読み始めれば、人の声は聞こえなくなるね。
漫画……ないっての!
読めないっての!
「あれとは?」
「敵に見つかるとかなんとかって話だよ」
あれ?
敵がどうのって、漫画の話?
私に敵なんていませんよ?
無敵という意味じゃなくて、人と争うなんてそんな無駄な労力を使うなんて……。
「敵?璃々亜、どういうことだい?」
だから、私に敵なんて……。
「もし、璃々亜に敵対するようなものがいるのなら……」
兄から黒いオーラが立ち上る。
やばい、兄、戦闘民族か!
敵は潰す!的な脳味噌なのか!
まぁ、生徒会長だし。学園の平和維持のためには色々あるのかもしれない……。
政敵みたいなやつ?
……。
うん、私には関係ないな。
璃々亜派なんて派閥も作ってないし。
っていうか、璃々亜派とか作った時点で悪役令嬢コースに乗っかったみたいなんですけど……こわいこわい……。
「敵から姿隠してたんだろ?」
あっ、そういえば……、嘉久に逆壁ドンしたときのあれか。
私、敵って言っちゃいました?
やだ、敵対する気なんて……。
うう、すいません、本音が漏れたようです。
卑怯なことするし、田中くんとか1年生の皆……仲間が頑張ってるからね。私も、1年生のために頑張ろうって気持ちが……




