第264話 優雅な朝食ではないらしい
金曜日の朝。
うっかり忘れていたけれど、卵かけご飯にするんだった!
何時もよりも少しだけ早くダイニングに向かい、そのままキッチンに立つ。泡立て開始!
むふー、むふーっ。
シャカシャカ。
シャカシャカシャカ。
おうっ!
コツをつかんだ私、偉い!
食事が運ばれてきたころには、しっかり泡立て終了しました!わーい。
「朝から、何を作るんだい璃々亜?」
「食事が始まるぞ、後にしろ」
兄と嘉久の言葉を右耳から左耳に聞き流しつつ、運ばれてきた茶碗に入ったご飯を、キッチンから持ってきた丼に移し替える。
そこに、泡立てた白身を卵1個分。つまり、泡立てたのは2個だから半分投入。
そして、分けてあった黄身を一つのせる。
さらに、卵と一緒に購入した「卵かけご飯用の醤油」を少し垂らす。
おっと、これ箸じゃ食べられないな。スプーンを取ってこないと。
テーブルから離れて、スプーンをキッチンに取りに行く。
えーっと、確かこの引き出しに。あ、違った。
こっちか。
あったあった。
「おーい、璃々亜、俺の分も」
はい?
何か言いましたか?
顔を上げてテーブルを見る。
ぬあっ!
嘉久が、残りのメレンゲと黄身を自分の茶碗に乗せて、卵かけご飯用醤油を垂らしているところが目に飛び込んできた。
だ、誰が食べていいと、言いました!
まぁ、余ったんだから、いいけど……、けど、一言断ってからにしろっ!
お前の物は俺の物じゃないぞ!
っていうか、家族、うん、嘉久は我儘な弟……うん、だったら仕方がない。
テーブルの上に置いておいた私が悪いのだ。
……。
ふぅ。
少し心を落ち着けてから、テーブルに戻る。
「どうぞ」
スプーンを嘉久に渡すと、すでに箸でかき混ぜられていた卵かけご飯をスプーンですくって口に運んだ。
うん、いくらなんでも、茶碗を口につけて掻っ込んだりしないんだね……。
よかった。スプーンを取りに行って。
グルグル、混ぜ混ぜ。
では、いただき
「おかわりっ!」
はい?
私が一口目を食べようとスプーンを口に運んだ瞬間、有ろうことか嘉久が茶碗を空にした。
早すぎるだろーっ!
いくら、卵かけご飯が、飲み物のようにするすると喉を通って行くとはいえ……。
っていうか、おかわりって何だ!
いい。
聞かなかったことにしよう。
グルグル、混ぜ混ぜ。
いただきまーす。
うっ……。
うっわーっ!
ちょっと、これ、何?
私が今まで食べていた卵かけご飯って、いったいなんだったの?
あ、いや、むしろ、私が今まで食べていた卵かけご飯を、卵かけご飯っていうならば、今食べてるこれは何?
メレンゲ状にした卵が米粒一つ一つを包み込んで、あの白身のどろっとした食感がない。
ふわふわ。
グシャッ。
「うわっ、カラが入った!黄身が分けられない……いいか、どうせ茶碗で混ぜるんだから」
卵の旨みを口当たりよく味わうことができる。この卵かけご飯用醤油お美味しい!塩味だけでなく、出汁の味もあって……。
うわー、ちょっと……。
これ、スーパーの卵じゃなくて、なんとかお取り寄せの濃厚な味わいの卵とか使ったら、もっと美味しくなるんじゃない?
ビチャッ。
「あれ?おかしいな、卵がボールから飛び出してくんだけど……??」
……。何やら、頬っぺたにぴちゃりと冷たい物が……。
よーしーひーさーっ!
「璃々亜、どうやったら、卵が泡立つんだ?」
自分でおかわりを作ろうとしたんですね。
そこまでは立派な心掛けです。
だが……。
卵の飛び散ったこの台所を、いったい誰が掃除すると思ってるんだ!
ああ、早間さんが眉尻を下げて悲しそうな顔になっている。
「すぐにシェフに用意させますわ」
うう、ごめんよ。とんだとばっちりですね。
兄、嘉久にガツンといってやって!
「早間さん、私の分も頼んでもらえるかな?」
……兄……。
ええそうですか。
今まで卵かけご飯を食べたことがなくて、羨ましかったんですか。
いつもありがとうございます。
無駄描写ばかりで申し訳ない気持ちがいっぱい。
……といいつつ、残念嘉久をかかずにはいられない業が・・・




