閑話 田中くん視点
「先輩、なんか、夏におすすめのトレーニングウェアないですか?」
練習の合間の休憩時間に、水分補給しながら先輩に尋ねる。
「夏にお勧めしますめ?」
「ええ、暑い時期に……」
「あー、そろそろ暑くなってくるもんなぁ」
額に浮いた汗を拭きながら、先輩が答える。
「ほら、お前去年、着るだけでマイナス5度の~とかいうの買ってただろ、あれどうなんだ?」
話を振られた別の先輩が答える。
「あーあれねぇ、野球部には向かないぞ。ユニフォームの下に1枚でも余分に着ると余計に暑い」
豪快に笑い飛ばした先輩に、別の先輩がツッコミを入れた。
「それ、買う前に分かるだろ!」
「で、結局役に立たなかったのか?」
「いや、ユニフォーム来てないときには役だったなぁ。自主練でランニングや素振りするときはよく使ってたけど、確かに少しだけ涼しい気はしたな」
そうか。
やっぱり先輩たちは、部活での練習以外にお自主練はしてるんだ。
と、質問の答えとは別な部分で関心する。
「なんだ、いいな、それ、俺にも教えてくれ!」
先輩の話に、別の先輩がくいつく。
「どこのメーカー?」
「どこで買ったんだ?」
など、質問が飛ぶ。
「何なら、今度の土曜の練習前に皆で一緒に買いに行くか?」
え?
「おお、そりゃいいや」
「ついでにご飯一緒に食べてから練習に行くか!」
先輩たちが一致団結する。
部活の仲間というだけでなく、皆普段から中がいいんだよなぁ。
うん、1年生もこんな風に仲良くやっていけたらいいな。
「田中、お前も暇なら来いよ、口で説明するより実物があった方が分かりやすいだろ?」
うっ!
先輩の優しさはとてもありがたい。
だけど……。
「ありがとうございます。あの、その日は約束が……」
「約束?なんだ、まさか彼女か?」
にやぁーと先輩が笑う。
「ちっ、ちが、違いますよ!」
そう、彼女じゃない。
「なぁーんだ、お前モテるのに、彼女とかいないのか?」
「も、モテませんよ!先輩こそ、いつも応援に来てくれるファンがいっぱいいるじゃないですか!」
モテる?
僕のどこが?
「あはは、俺と比べれば確かにお前はまだまだだが……自覚なしか」
「お前ら、俺たちに対する配慮もしろ!」
「そうだ、お詫びに飯驕れ!」
「まて、何で俺が飯驕らなくちゃならないんだよ?」
「モテ自慢したじゃないかっ!」
「っていうお前は、中学から付き合ってる彼女いるだろ!」
「そうだった、皆裏切り者めっ!」
先輩たちが楽しそうにじゃれあい始めた。
本当にモテたらいいのに。
そうすれば、彼女の気持ちが僕に向いてくれるんだろうか?
いや、いくらモテても、好きな子の気持ちが向かなければ意味はないか……。
「そうだ、田中!お前、一緒に通学してるあのかわいい子誰だよ!」
「紹介しろ、紹介!」
「もしかして、その子と約束があるのか?そうなのか?」
「邪魔してやる、邪魔してやるっ!」
先輩たちのじゃれあいの矛先がこちらに向いた。
一緒に通学しているのは鈴木だ。
そうか、鈴木はかわいいのか。人気があるんだ。
気が付かなかったな。
妹の立花が「芽維お姉ちゃんみたいになりたい」って言っていたのは、鈴木みたいに可愛くなりたいという意味だったのかな?
御覧頂きありがとうございます。
TA・NA・KA TA・NA・KA TA・NA・KA
田中くんもまだ高1ですから。
甘酸っぱいです。




