第246話 雅号を決めるらしい
それって、ペンネームみたいなやつだよね!
本名と違う名前で、絵とかにサインいれたりする……。
うわー、やだ、この年でペンネームを考えることになるとは……。
って、まだ高校生だったよ!
「今後、授業での提出物やテストには雅号を記入するように。それから、こちらの用紙に考えた雅号と本名を書いてこの箱に入れて欲しい。先生は、雅号を元に成績を付ける。雅号と本名の管理は学年主任にお願いしてあるから、先生は、卒業まで君たちを本名で呼ぶことは無い。いいね?」
って、何でそこまでするんだろう?
「何故、そんなことをするのかと思う者もいるだろう」
ひゃっ。
先生に心を読まれた!
「例年、一人二人いるんだよ。成績に満足せず『私は画家の何々先生に認められた腕だ、先生は絵を見る目がない』と抗議してくる者がな。時には親が出てきて『娘は、何とかの絵画コンクールで特別賞をもらった、才能があるはずだ』と怒鳴りこんでくる。親の会社がスポンサーになっている、あまり人に知られていない絵画コンクールの特別賞だからそれこそ「特別」に賞をもらえたのは明らかなんだけどね。親も本人も本気で才能が有ると思い込む……。そこで、前任の先生は、家柄順に絵を見ずに評価するようになった。そこを私は改善する方法を考え、雅号を用いることにしたのだ。もちろん、私の感性と合わないからという批判を受けないために、各分野、専門の先生にご協力をいただくようにしている。公平に評価は下される。親の地位に気を使っておべっちゃらで褒められたり賞を取ったりして、自分には才能があると思い込んで、現実を知り落ち込みたくない者は、音楽か書道を選択することを勧める」
あうー、先生も色々と苦労してるのね……。
確かにペーパーテストは点数はつけやすいし、つけた基準を示せと言われれば答案用紙をはじめ、平均点その他、成績を付けた基準が分かりやすい。
モンスターペアレンツとか最近多いらしいしなぁ。
うちの子は美術の才能あること間違いありませんわ!こんな成績おかしいですわ!
先生が悪いんですわ!ぷぎゃぁーっ、辞めさせろ、ぴぎゃぁーっ!
って、確かにねぇ。言う親もいるかもねぇ。
うん、才能あると思ったらそうでもないなんて、世の中いっぱいあるのにね。
弱小サークルの同人作家さんも言ってた。初めて同人誌出した時には、絶対売れる、私には才能がある、すぐに大手だ!と思って、同人誌500部作ったけれど……。現実は厳しかったって。
私は好きなんだよね。
京様の態度にじれじれもにょもにょする都キャプテンの描写とか、きゃふぅっってなるの。うん。でも、大手サークルに比べたら、なんていうかにゅれ場描写に色気がないんだよねぇ。だから、キャラクターの心理描写よりも、美麗な絵さえあればよい!派には人気が出ないわけで……。
ん?
何の話だっけ?
そうそう、そのサークルの同人作家さん、部数を決めるときに友達から「オヌシ上手だから1000とかも行けちゃうんじゃない?」「100部で在庫はけちゃって増刷するよりも、一度に刷った方がいいよ。絶対売れるって!面白いもんっ」とか散々おだてられてその気になっちゃったとかなんとか……。
まぁ、なんだ。
友達もおだてていい気にさせて裏で笑ってやろうっていうわけじゃなく、本気でそう思っていたんだとは思う。
友達の間では上手で……。もしかして、部数とかも、大手サークルの同人誌の発行部数がどうだっていう聞きかじりの知識で良く知らないまま数を口にしたとか……。
だから、才能があると思い込んじゃうのって、うぬぼれ以外の要素も少なからずあるし、若いころはそれくらい自信を持って才能を伸ばすのもありだし。
つまり「○○ちゃん上手いね~」で今まで来た高校生は有りだ。美術の成績が悪くて才能がないと言われたようでショックを受けるのもまぁ、有りだ。
だが、凡人には俺様の才能は理解できないんだな。ゴッホの絵が生きている間は身内が1枚買ってくれただけで、全然売れなかったっていうのは有名な話だ!って先生に見る目がないとディスるのも有りだ。
だが、クレームをつけて成績を操作するのは無しでしょ。
うんうん。
いくら、金持ちの子供だからってね~。絵の才能はお金では買えないんだよぉ。いや、スポンサーしてるコンクールで賞を買うことができるようなこと言ってたな……。
……。
芸能人が、才能+アルファで評価されるって話も聞いたことがあるしなぁ。ニュースになってくれると、コンクールの知名度が上がるし、入賞作品の展示会に人が集まってくれるからって。プラスアルファが、どの程度かは知らないけれど……。
なんとか展入賞とかいう芸能人結構いるもんなぁ。
……。
あれ?
もしかして……。
璃々亜もそのパターン?
白川家がスポンサーだったり、協賛してたりする絵画コンクールとかで入賞とかしてたとか?
いっぱい賞もらったらしいけれど……。
もしかして……、璃々亜、誰かに指摘されたのかな?「才能がなくても金があると賞が貰えていいね!」とか……。
それで、受験を言い訳にして筆を折っていた?
ありゃ?
おや?
真相は分かんないし、璃々亜に才能があったのかなかったのかも分からないけれど……。
うん、もし、家族や嘉久に「もうコンクールに絵は出さないのか?」と尋ねられたら、言い訳に使えそうだ。ふふふ。
おっと、こうしちゃいられない。
生徒の半数近くがデッサンを終えて先生に提出している。
ちらりと相原さんを見ると、キャンパスを裏に向けて手を止めている。
もしかして、雅号を何にしようか悩んでいる?絵は描き終えた?
うわー、やばい。最後はやだ。目立つもん。
急ごう。
えーっと、あ、このあたりにもう少し影入れて、うん、そうすると、ここがこうで、ああ、よしよし。いいんじゃない?
やばい!あと4人だ!
最後はいやだ!
裏に雅号を書いて提出。
ぎゃー、雅号、雅号、何にしよう。
堕天使。
マリアーヌ姫。
邪悪なる剣。
とまとまと。
やばいっ、なんだかちょっと痛い名前しか出てこない!違うよ、違う、雅号ってもっと優雅な感じよ、優雅な!
って、あと残り3人になっちゃった。
えっと、ペンネームじゃなくて雅号っていうくらいだから、漢字がいい。
和風な感じ。
御覧いただきありがとうございます。
何らかのフラグが長引いています。次回、フラグこうご期待。
いや、もう、バレバレですが、あれです。




