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【書籍化】オタクガール、悪役令嬢に転生する。【web版】  作者: 富士とまと


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第245話 美術の点は金で買えるらしい

注*フィクションです。実際の美術教師のお話しではありません

 何、この、ふんわりと優しい砂糖菓子……いえ、わたあめみたいなデッサンは……。

 優しい絵。

 そうだ。単なる同級生のデッサンなのに……。

「童話みたい……」

 私のつぶやきに、相原さんがふふっと恥ずかしそうに笑った。

「よく言われます。私、何の絵を描いても童話みたいになってしまうのです……」

「私、好きですわ」

 美術の授業では、どう評価されるかは知らないけれど、素晴らしい個性なんじゃないかな?

 私が好きだと言ったのがよほどうれしかったのか、相原さんが頬を染めてもじもじした。

 自分の絵に再び視線を移す。

 ……。

 私の絵に個性はあるの?

 璃々亜前はどんな絵を描いていたの?

 ……、もし、画風が変わったと言われたら「ピカソ計画」を発動しようと思っていたけれど……。

 絵には個性が出るわけで……。わざと違う描き方をしたからといって、個性を完全に消し去ることができるものだろうか?

 ど、どうしよう。

 とりあえず、絵の専門家に見られるようなことがなければ大丈夫かな?

 何かのコンクールに出すとか、そういうことがなければ……。

 って、美術の先生も専門家と言えば、専門家?昔の璃々亜の絵とか知ってたりとか……。

 いや、待て待て。美術の先生が誰でも絵画の鑑定とかできるわけないから、大丈夫だよね?

 ……。もし、まるで別人が描いたような絵だとか思っても……わざわざ言う?私なら、言わない。うん。

 よし。大丈夫だと思っておこう……。


 2時間目が始まってしばらくたつと、手の動きが止まっている人が何人かで始めた。

「あー、終わった人もいるようだな」

 先生が声を上げる。

「美術の実技の点数について、説明しておく。他の教科のように点数化しにくい科目だ。できたかできないかで他の者にもはっきり分かるような基準がない」

 先生はそこまで言ったのち、2枚の絵のパネルを持ち、全員の目に入るようにモデルの横に立ち、一回りする。

 一つ目の絵。

 正面から見た目と、横から見た目を一つの顔に描きこんだ女性の絵。目の高さは上下にずれている。正面の顔かと思えば、鼻が横に突き出しているなど……。

 変な絵。不気味な絵。見ていると心が不安定になる絵。それが、私がもつ絵の感想だ。

 二つ目の絵。

 今度は男性の絵。1枚目と同じように、目は正面を向いているのに、鼻は左を向いている。バランスが上下に崩されているけれど……。ヘタウマにわざと描いたコミカルな絵という印象で、不気味さは感じない。

「100点満点として、どちらに何点つける?」

 先生の質問に考える。

 えーっと、技術的にはコミカルな絵の方が高い気がする。芸術性は、どうなんだろう?心をかき乱す影響力がある方が高いのかな?

 んー、難しい。もし、買うならば?

 そうだなぁ。自分が貰って嬉しいのは……。

 どちらもいらない。

 京様のイラストならば、めっちゃ欲しい!

 ああ、いっそ、コミカルな男性の絵が、京様のデフォルメ画だよと言われれば……。きゃはっ。仕方がない、受け取って差し上げてもよろしいですわ!

 女性の絵は、見てると心が不安定になるからいらない。

 見たくない。

 あ、そうだ。

 こういうの、嘉久にプレゼントしたらどうかな?

 猪突猛進、俺様パワー全開の時に、この絵を見てもらう。

 すると、あーら不思議。嘉久の心にわずかな不安感が生まれる。

 そして「あれ?俺、このまま突き進んで大丈夫かな?」と、自らの行いを内省することができるという……。

 何とすばらしいアイテムなんじゃんしょ!

「じゃぁ、こちらの方が点数が高いと思う者手を上げて」

 先生が、女性の絵を上に掲げた。半数ほどの生徒が手をあげる。

 それを見て、先生が頷く。

「じゃぁ、100点満点だと思う者は?」

 手が上がらない。

「90点以上は有ると思う者」

 パラパラと手が上がる。

「そうか、ありがとう。半数の者が、ピカソよりも先生の絵を評価してくれて嬉しいよ」

 え?

 ピカソ?

「ここにあるのはレプリカだけれど、本物は200億とも言われているが、それでも100点満点は取れないわけだな」

 にやりと教師が悪い笑みを浮かべる。

 200億?

「ずるいです、先生、ピカソだって知っていれば、100点を付けました!」

「そうだ、僕だって、ピカソの絵の価値くらい知っています!」

 生徒の何人かが声を上げ、その声に頷いている人もいる。

 おいおい、絵の価値は、名前でも値段でもないんじゃないの?

 確かに「財産として所有」する「価値」はあるかもしれないよ?でもさ、寝室に飾って毎日眺めるたくなる「価値」はまた別だと思うんだ。

 だって、やっぱり、ピカソの絵を毎日見て暮らすのは私には無理!

 精神がガリガリけずられそうだもんっ。

 私は、京様のポスターを部屋に貼りたい。

 ああ、どうせなら、京様と都キャプテンのツーショット。チューしてるのとか贅沢は言わないから、肩を抱く絵とかな。

 ぐふ、ぐふ、ぐふふ腐。

 やばい、ベッドの上の天井に貼って、寝る前に毎日眺められたら、そりゃもう、うまうまな夢が見られそうだ。

 やだ、もう。最高!

 誰か、「京都」ポスタープリーズ!

「先生は、名前で評価を決めたりはしない。いいか、どれだけ他の科目の成績がよかろうが、家柄がよかろうが、絵画コンクールで賞を取っていようが……、作品の評価を変えるようなことはしない。それとも、名前を聞いて点数を付け直した方がいいか?」

 先生の言葉に、ピカソだと教えなかった先生が悪いと言っていた生徒たちがぐっと押し黙った。

「そこでだ、皆には雅号を考えてもらいたい」

 が、が、雅号?


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