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【書籍化】オタクガール、悪役令嬢に転生する。【web版】  作者: 富士とまと


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第234話 ドア越しらしい

 田中くんが出て行ってから、資料室で時間をつぶす。

 んー、時間よ経てと思っていると全然時間は立たないものだ。

 ドアにもたれて、スマホで時間を確認する。

 ガチャッ。

「あっ」

 ドアを誰かが開こうとして、持たれていた背中が押される。

「誰かいるのか?」

 え?

 この声っ!

「弟?!」

 思わず上げた声に、息を飲む音が聞こえた。

「姉?姉なの?」

 やっぱり弟なんだ1

 うわー、やばい。まさか、学校で遭遇しちゃうなんて……。

 幸いにして、私はドアの内側。弟はドアの外側。顔を合わせてはいない。

 少し開きかけていたドアは元の位置に戻っている。

「姉……会いたかった」

 ドアの外から声が掛けられる。

 弟の声を聴くと、あの日のことが脳裏にはっきりと思い浮かぶ。

 ピッグサイトの建物。空気。

 同人誌の臭い。

 そして、久しぶりに目にしたBL!

 はぁー。

 うっとり。

 そういえば、思わず買ってしまった同人誌たち。弟に預けたの、どうなったんだろう?

 弟に、どうなったか尋ねそうになって、口を両手でふさぐ。

 やばっ。

 思わず気が緩んで、同人誌ロッカーに預けた?とか何とか聞こうとしちゃった。

 学校で同人誌なんて単語を口にするなんて……危険極まりない。だめだ!やっぱり弟と学校で接触するのは、すんごく危険だ!

「弟、学校では、会えないよ?」

 改めて、私たちのルールを口にする。

 ドアの外で、身じろぎした音がかすかに聞こえる。

「うん……」

 小さな弟の声が届く。

「少しだけ、このままでいていい?」

「うん。……あ、でも弟は、資料室に何か取りに来たんじゃないの?」

 授業に必要な物を取りに来たんだとすると、私が内側に居たんじゃ、邪魔だよね?

「違うよ……。一人になりたかったから……時々、資料室を利用してるんだ」

「一人に……、なりたい?」

 何だ!

 私なんて、ボッチにならないように必死だというのに、弟は逆に、一人になりたくてもなれないほど友達がたくさんいると言うのか!

 おうう、ちょっと嫉妬。

 いや、私だって、ボッチじゃないんだから!

 し、し、嫉妬なんてしませんわっ!

 ブルルっとスマホが鳴って、メールの受信を知らせる。

 弟からだ。

『姉とはずっと一緒に居ても疲れないのに……』

 分かる。

 オタクってさ、オタクを隠して普通にふるまってると、時々疲れることあるんだよね。

 前世でさ、オタクな私だけど、彼氏とか作らないとまずいだろうか?って思ったこともあった。

 んで、ちょいと知り合いに紹介してもらった人と2~3回会ったんだけど……。

 一緒に出掛けて、大好きなアニメのポスターを発見んして、もうちょっと見たいと思っても言えないし。

 どこかの店内で、懐かしいアニメソングが流れだして「あっ!」って思っても言えないし。

 そういうことが重なると、ちょっと疲れちゃうんだよね。……。紹介してもらった男の人が悪いわけじゃない。ただ、オタクを隠して付き合うのはできないんだって思ったんだよねぇ。

 やっぱり、付き合うならオタク!と思った。うん、でも結局前世で、誰かと付き合うことはなかったけどね!

 彼氏よりBL!ん?何か問題でも?

 今は……。

 彼氏どころか友達にも家族にもオタク隠してる生活。……。疲れるかと言えば……。

 そうでもないな?

 あれ?

 んじゃぁ、何だ?やっぱり紹介してもらった男の人が疲れる相手だっただけなの?

 あれ?あれ?

 いや、待て。

 今は、生活の中に、ふとアニメのポスター見かけるとか、ふとアニメソングが聞こえるとか、そんなのがないじゃないか。

 ……。隠すもなにも、そもそも……。アニメや漫画やゲームとの接点が、少なすぎだ!

 なんだかいろいろなことがありすぎて忘れかけてたけど……。

 今日は帰って、シアタールームでアニメ見るぞ!

 兄はどうせ今日も帰りが遅いに違いないんだから!


 そんでもって、ぜーったい、またイベント行くんだもんね!

「早く一緒にイベント行きたいね……」

 と言うと、弟から「うん」と返事が聞こえた。

「いつまでもこうしていたいけど……。そろそろ教室に戻るね……その前に……」

 ん?

「顔は見ないから、元気……分けて……」

 ドアが少しだけ開いて、弟の手が差し込まれた。

 元気を分ける?

 そんなに疲れてるの?

 元気を分けるなんて、どうしたらいいの?

 とりあえず、差し込まれた手を、ぎゅって握る。

 すぐに、弟は、ぎゅっと握った私の手を一度引き離すと、恋人つなぎに握りなおした。

 ああ、弟の手。

「えへっ、姉、ありがとう!」

 元気のいい弟の声が聞こえて来た。

 良かった。元気出たのかな?

「じゃぁ、行くね」

 と言いつつも、なかなか手を放さない弟。3回くらいじゃぁ行くねを繰り返し、最後にぎゅっと手に力が入った。

 離れた手。

 遠ざかる足音。

 1分ほど時間が経過するのを待って、足音が遠ざかって行ったのと逆に廊下を進んだ。

 万が一にも弟と顔を合わすわけにもいかない。


いつもありがとうございます。


きゃはっ。弟と遭遇でーす。

弟の裏側を想像しながら書いとります。

それにしても、弟登場シーンは、漫画で、絵で見たいって思うの。なぜなら、璃々亜サイドからしか一人称だと表現できないから。扉の向こう側の弟の様子も見せたい!

漫画なら、扉越しに真横カメラで、簡単に表現できるのにっ!

内側は、ドアに背中で持たれる璃々亜。外側は、ドアを愛おしそうに手と額とぴったりつけてる弟……。

的な、あれだ。少女漫画やのぉ。

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