第232話 璃々亜はカッコイイらしい
「図書委員の先輩たちに、聞かれたら、また先を越されてしまう可能性がある」
あ、ああ、図書委員。
うん、まぁ、先輩たちのやり方はちょっと必死すぎて引くよね。
他の人のアイデアパクって横取りとか……。
「だから、人に聞かれないようにと……、ごめん、こんなところに連れ込むみたいな形で……」
田中くんが、頭を下げた。
スパイか。なるほど。
もしかすると、図書委員の先輩は、図書委員以外の1年生とかに情報を持ってくるようにとか言っている人もいるかもしれない。妹や弟がいる委員とかもいるかもしれないし……。
「よく考えたら、学校外で相談すれば済んだのに……すぐに話がしたくて……」
「構いませんわ。学校外で相談しようとすれば、週末とか先の話になりますものね?少しでも早い方がよろしいでしょう?」
と、言っているのに、田中くんはさらに頭を下げた。
「あ、いや、でも、流石にちょっとまずいかな……」
え?何がまずいの?
さっぱりわからなくて首をかしげる。
「何か、その、そんなつもりはないんだけど、狭い部屋に男女で人目を忍んでいるのって……あー、うん……」
しどろもどろな田中くん。
ん?何言ってんの?
「そんなつもりでここへ来たのですわよね?」
「えっ、し、白川?」
「人目を忍んで、スパイへ情報を与えないつもりで、ここへ来たんですわよね?」
私の言葉に、田中くんはなぜかずるずると、ドアの前にしゃがみこんだ。
「あー、うん、そう。ごめん。僕が、その、意識しすぎた。ごめん、本当……」
いや、だから、何を謝っているのか。
「いいえ、意識しすぎっていうことはありませんわ。スパイの目はどこに光っているのか分かりませんもの!田中くんは正しいです!」
スパイなんて大げさだったかなぁーって、反省してるのかな?
ちょっと厨2っぽくって恥ずかしいとか羞恥心でもだえてる?
大丈夫。
私、厨2はどちらかといえば、得意分野です。
「ふふふ、正直、ちょっと楽しいですわ。スパイから身を隠すなんて、映画みたいですわね?」
映画っていうよりも、漫画だけどねぇ。そういうサスペンス漫画とかいっぱいあるからね。
頭脳戦みたいな漫画もあったなぁ。
部屋に隠しカメラを設置されたり、逆にそれに気が付いた主人公が、隠しカメラを利用して敵を欺いたり……。
うん、主人公は見た目は明るいけど根は陰湿なんだよね。逆に敵は根暗だけど、根は明るかったりして……。
ぐふふ。だから、スイッチ入ると、受け攻め変わるパターンの同人誌が流行ったなぁ。
表面が出ているときは主人公受けなんだけど、スイッチ入ると、主人公が鬼畜攻めになるんだよなぁ。ぐふ腐。
おっと、行けない。
「映画か……。そうだな、うん。そうだ。映画の主人公みたいにカッコよく決められたらいいんだけどな……」
あれ?落ち込むところじゃないよね?
田中くんは、頭を抱えた。
えーっと。
「田中くんは、カッコイイですよ?」
悪者からも助けてくれたし。
図書委員の陰湿な行動も笑い飛ばして、こうして新しい行動にも出てるんだもん。
田中くんの耳が赤くなった。
あ、素でカッコイイって言うとか、もしかしてやっちまった。
私も可愛いとか言われたら照れるわ。ごめん、田中くん。
「し、ら、か、わ、り、り、あ」
うえっ?!
「は、はいっ!」
苗字じゃなくて、下の名前まで呼ばれるなんて、な、何?
ちょっとドキッとするんですけど!
「カッコイイってのは、白川みたいな人間のことだと、僕は思うよ」
ふえっ!
な、な、何を……。
田中君が顔を上げて、ニヤッと笑った。
「ごめん、冷静になった」
そして、ふぅーっと大きくため息を一つ付くと、田中くんが立ち上がる。
「図書委員として、K3……の社会貢献の案、思いついたんだ」
そうそう、本題はそれでした。
「いや、思いついたんじゃないな。白川がやってたことを見つけただけだ」
え?
私がやっていたこと?
「何か、私、社会貢献なんてしてましたか?」
してない。
……。何を田中くんに見つけられたというんだ。
雨に濡れる捨て猫に傘をさしかけることすらしてないのに……。
あ、いや、捨て猫見たら、傘をさしかけるくらいはするけどさ。そんで、ごめんね、うちでは飼えないのって傘を置いて立ち去る。
そこに、田中くんがやってきて、猫を拾っていく……とか、そんな出来事もなかったはずだ。
って、何の話だ。違う。
そうじゃなくって、えーっと。
いつもありがとうございます。
田中ターン。
田中くんノックアウトです。




