閑話 嘉久のお買い物
璃々亜の欲しい財布の情報は手に入れた。
白くてふわふわだ。
財布がふわふわっていったいどういう意味なんだ?
まぁいい。早速買いに出かけるか。
いつもの百貨店に足を運ぶ。
「高円寺様、いらっしゃいませ。本日は何をお探しで?」
長い付き合いの……といっても、こうして一人で買い物に出るようになってまだ5年ほどだからな。5年の付き合いのといった方がいいだろうか。
5年の付き合いになる百貨店の副店長が出迎えてくれる。
「財布だ」
「財布でございますか?」
「ああ、白くてふわふわした財布を探している」
50代半ばと思しき副店長は、少しだけまぶたをピクリと動かした。
表情をうまく隠すように訓練されているが、目元周辺はまだ修行が足りていないようだ。
しかし、その反応を見るに、白くてふわふわした財布というのはあまり一般的ではないようだ。
「少々お待ちいただけますでしょうか?」
VIPルームに通され、ソファに腰かけた。
薫り高い紅茶が運ばれてくる。
商品ではなく、飲み物が運ばれるということは、すぐに案内できる商品がそろっていないということだ。
「白くてふわふわの財布は、高円寺様がご自身でお使いになるものでしょうか?」
「いや、違う。プレゼントだ」
「プレゼントでございますか。どのようなお相手に?」
どのようなって。
璃々亜にだよ。
……何て説明すればいいんだ?
説明の仕方が思い浮かばないでいると、副店長が質問を口にした。
「女性ですか?」
「ああ」
「お若い方ですか?」
「ああ」
「かわいらしい方ですか?」
「ああ」
「大切な方ですか?」
「ああ」
「お付き合いしている方ですか?」
「ああ……い、いや、ち、違う。つ、つ、付き合ってはいない」
副店長の目じりが少し下がった。笑った?
「分かりました。お付き合いはなさっていらっしゃらない、大切なかわいい女性へのプレゼントですね。お任せください。若い女性が必ず気に入るような素晴らしい財布をご用意いたします」
30分ほど待っただろうか。
白い猫のぬいぐるみとしか思えない財布が机に置かれた。
「いかがでしょうか。白くてふわふわな財布です」
いかがでしょうかって……。
「このキュートな子猫。くりくりの目。とても人気のある財布です。可愛い物が大好きな女性にこの財布を送れば、高円寺様の株もぐっとあがるでしょう」
株が上がる!
いい言葉だ。
「よし、これをもらおう!」




