第231話 まさか、告白! らしい
そういえば、私……。
相原さんの絵本を渡し忘れてたよっ!
うぐぬぅ。
朝、教室に入ると早速相原さんの元に向かった。
「ごきげんよう、相原さん」
「ごきげんよう、璃々亜様」
鞄から、司書さんに直してもらった絵本を取り出す。
「遅くなりましたわ。司書さんが直してくださいました絵本です」
「あっ……」
相原さん、まさかという顔。
そして、震える手で絵本を受け取りページをめくる。
どうやら、相原さんにしか分からない思い出の傷やらなんやら見つけたようだ。そっと、そこに手を置いた相原さんの目に、涙が浮かんだ。
「ありがとう、ございま……す。まさか、これほど、綺麗に直してくださるなんて……」
「本当ですわね。司書さんの腕はすごいと私も思います」
感激で涙する相原さんに笑いかけた。
ん?殺気?
何やら廊下から殺気を感じる。
振り返って廊下を見たけれど、女子生徒が数名きゃぁきゃぁいって通り過ぎて行っただけで……。
何?今の殺気?
「本当に、嬉しい、ありがとう……」
「いえいえ、私は何もしていませんわ。今度、一緒に司書さんにお礼を言いに行きましょうか?」
「はいっ!」
うんうん。喜んでもらえて良かった良かった。
「白川!」
え?
田中くんが、私の二の腕をつかんだ。
きゃっ!
二の腕つかむとか、ダメだから!たぷたぷたぷた……。
あ、女子高生璃々亜は、そこまでたぷたぷしてないから大丈夫でした。はい。
「ご、ごきげんよう?田中くん」
急いで朝のご挨拶。
田中くんは、私の腕をつかんだまま、教室の外へと引っ張っていく。
ええ?何?何?
「ちょっと、ついてきてほしいんだ」
田中くんの並々ならぬ真剣な表情に、黙ってついていくことにした。
「ええ、構いませんわ」
私の返事を聞いて、田中くんが、二の腕をつかむ手を放してくれた。
幸いにして、まだ生徒の数はそれほど多くない。
突然腕をつかんだ田中くんを不審な目で見ている人はいなかった。
田中くんの後ろについて、歩いていく。
きょろきょろ。
ん?何やら田中くん、時々辺りの様子を窺うようにきょろきょろしています。何?どこかに、田中くんを狙う刺客でもいるの?
きょろきょろ。
思わず、同じようにきょろきょろしてしまったよ。
だんだん人のいない方を選んで田中くんは進んでいった。
移動教室に使う教室が並ぶ校舎へ足を進める。授業で使わないときは、こっちの校舎は人が本当にいない。
って、何で田中くんこんなとこに?
くるっと、振り返って、ドアの一つを開けて、私の背中を押した。
おっと。
少しふらつきながら部屋の中に入る。田中くんは、廊下で左右を確認してから部屋に入り、急いでドアを閉める。
あ、ここ。
社会科資料室だ。
大きな地図とかそういうのが色々置いてあるところ。
あれ?田中くんって社会係だった?
何を取りに来たんだろう?一人じゃ持ち運べないものかな?手伝うのは構わないけど、それにしてはちょっと様子がおかしかったような……。
「やっと、二人きりだ」
え?
「二人きり?」
ウォークインクローゼットを思わせる狭い部屋。確かに、資料以外人の姿はない。
コツコツと人の足音に、田中君はしぃーっと、指を立てた。
資料室の部屋のドアはうち開きだ。田中くんは背中で、ドアが開かないように抑えている。
「田中くん?」
人の足音が遠ざかってから、声を潜めて田中君の名前を呼ぶ。
「ごめん、急に……。どうしても、二人きりになりたかったんだ」
私と、二人きりに……?
いったい何?
も、もしかして、このシチュエーションは……。
こ、こ、こ、
告白とか?!
うええーーーーっ。
た、た、た、たにゃかく……が、わたしのこと……。
あ、あわわ、待って、待って、心の準備っ。
「どこにスパイが紛れ込んでいるか分からないからな」
は、はいーーーーっ?
スパイ?
いったい何のことなの?
いつもありがとうございます。
田中パート。
ちょこっとだけ。




