第217話 身体測定したらしい
「り、璃々亜様、それで何をお手伝いすればよろしいのでしょうか?」
相原さんが璃々亜と呼んでくれる~。
え?お手伝い?
「あ、それはまだ、具体的には決まっておりませんの……」
「そうですか、では、文芸部で人を集めておきますわ!」
うふっと笑う相原さん。
え?人集め?
でも……それって……。
「相原さん、文芸部の方々に声を掛けていただくのは嬉しいのですが……部長に逆らうようなことを、広めるのは……」
相原さんは友達だから、友達の手伝いをすると言えるかもしれないけど……。
いくら、頼まれたら断るじゃなくて、自分たちで頼んだから言いつけは守ったと言ってもさ、それはただの言い逃れというか……。
結局、手伝うってことだから、やっぱり、あんまりいい目で見られないよね……。
「大丈夫ですわ!り、璃々亜様のお手伝いですもの!」
相原さんが自信満々な顔。
「そうですわねぇ。璃々亜様のお手伝いですものね」
皐月たんもうんうんと頷いてる。
はうっ!
まさか、私のオタク隠匿スキルの高さを知ってる?
私の隠匿スキルを使えば、部長にバレることなく粛々とことを成せるとでも……?
「さぁ、移動しましょうか。次は身体測定でしたわよね?」
皐月たんが、お弁当箱を手に立ち上がった。
ふえ?
今、何と、おっしゃい、ま、し、た?
「あー、そうだったぁ。うっかりお弁当全部食べちゃったよ!」
芽維たんが頭をぽりぽり。
身体測定が、昼食後?
おかしいよね?
変だよね?
食べて直ぐとか、ないよね?
どうなってんの!
「仕方がありませんわね。1、2時間目は、身長が一番高い時間帯だそうなので、人気がありますし、3、4時間目は食事前で体重が減る時間帯なので人気がありますもの」
相良さんの言葉に、相原さんもねーと同意してる。
「1年生は毎年5、6時間目と決まっておりますわ」
そうなのか。
身体測定は、女子たちがキャッキャ言ってみんなでわいわいするそれとは違ったよ。
病院で健康診断の時に着るような服に、まず個室で着替える。
そして、他の人に数値が聞こえないように、一人ずつあっちこっち回る。
……。
つまりな、「あー、体重増えてたぁ~」「えー、全然軽いじゃん、私なんて、二ケタ増まであと一歩だよ」「いいなぁ、身長伸びたんだぁ、私もう成長止まったみたい」「いいじゃん、胸の成長はしてるんだから」
というような、女子ならではの身体測定会話あるあるが、ないない。
数値がどうなろうが、一人であー、とかうーとか小さく唸るだけ。
これはこれで……寂しいでございます。
終わったら、着替えてラウンジのように椅子と机の並べられた場所でジュースやお菓子を食べながら他の人が終わるのを待つシステム。
何、この身体測定……。私の知ってるそれと違う!
ま、まぁいいや。
「終わりました~」
オレンジジュースを飲んでいると、皐月たんが姿を現した。
「皐月さん、お疲れさま。何か飲みますか?」
「ありがとうございます。璃々亜様は早かったのですね」
テーブルにはすでに開けて食べたお菓子の包みがいくつか置いてある。それを見て皐月たんが言った。
順番は、着替えて出て行った順だ。皆着替えるのが遅いのかな?
まさか!
お嬢様は普段、自分で着替えたりしないとか!……いや、ないない。流石に中世の貴族の娘じゃないんだから。そこそこの家と思われる白川璃々亜もメイドさんに着替えさせてもらったりしないからね。風呂も一人で入ってるからね。
「皐月さんも早い方ではありませんこと?」
「おかげさまで、更衣室のロッカーの使い方がすぐに分かりましたので」
ぬ?
そこか!あの、数字を合わせてなんとかっていうそれに戸惑ったのか?……まぁいい。深く考えるのはやめよう。
「このお菓子おいしいですわよ?」
とりあえず、今食べておいしかったお菓子を皐月たんにすすめる。
もちろん私ももう一つ食べるよ。
「あら、これは、小川圏のレーズンウィッチですわね。私も大好きですわ」
ほうほう、これ、レーズンウィッチっていうのか。有名なんだね。
ぱくり。
ふわぁー。
外側のクッキーはさっくり。そして、少し堅めの生クリームを元にした特製クリームが口の中に広がります。
そして、なんといっても洋酒をしみ込ませたふっくらしたレーズンがこれでもかと旨みを出します。
「あら、2組の皆さまはずいぶん余裕がございますのね?それとも、すでにK3は御諦めになったのかしら?」
あー美味しい。
もぐもぐ。これで2個目だけど、3個目も食べてもいいかなぁ?
テーブルの上には、あと4つほどレーズンウィッチは載っている。
「私たちは、すでに2つの案を実行に移し始めていますわよ?こんなところで優雅にお菓子を食べていらっしゃる場合じゃないのではなくて?」
へ?お菓子を食べている場合じゃない?
やっぱり、一人で食べ過ぎ?
ごめん。
3つめのレーズンウィッチに伸ばしかけていた手を慌ててひっこめる。
皐月たんの顔を見ると、皐月たんの視線は私の後ろにあった。
ん?
振り返ると、そこには須賀さんだっけ?
えっと、須藤さん?須田?
忘れた。とにかく、そんなような名前の人が立っていた。




