第206話 抜け道があるらしい
「申し訳ありません、白川様……」
相原さんが、本当にすまなそうに頭を下げる。
まーまー、頭をお上げください。相原さんが先輩に逆らって睨まれるようなこと、私も望んでないから。仕方ないよ。部の方針ならね。
相原さんのせいじゃないよ。悪いのは、裏で手を回したその3年生なんだから。
「相原さんは、璃々亜さんの手伝いがしたいの?」
芽維たんが頭を下げ続ける相原さんに問うた。
「ええ、もちろんですわ!私にできることがあれば、白川様のお役に立てることができれば……どんなにうれしいか……」
「そっか。じゃぁ、手伝わせてって頼んだらどうかな?」
え?
芽維たん、何言ってんの?
「ふふっ、芽維様、名案ですわね!」
皐月たんがぱちんと手を打った。
あ、いや、だから、話を聞いてた?
私のじゃないな、図書委員1年生の手伝いとかしたら、相原さんの部活での立ち位置が不味くなるんだよ?
相原さんも相良さんもきょとん顔。
「あ、ねぇ、相原様、部長に、3年の図書委員の方は確かにそう言ったのですか?」
相良さんが何か思いついたようで、相原さんに話しかけた。
「”別の図書委員から頼まれごとをしても断るように”と」
「ええ。細かい言葉のニュアンスまではあれですが、確かに、図書委員に何か頼まれても……あ!」
相良さんに答えている途中に、相原さんも気が付いたようだ。
え?
まだ分かんないの私だけ?
ちょ、まって、まって、考える、えっと……。
「確かに、そう言われましたわ!頼まれても断れと!」
「協力してはいけないとは?」
「言われてませんわ!ええ。そうです!頼まれたら断ります。だけれど……図書委員に頼みごとをしてはいけないとは言われてませんわ!」
ふおっ!
何!
そういうことか!
「白川様、お願いします。どうか、白川様の案に協力させてください!」
にやっと、思わず笑いが漏れる。
「ふふっ」
「ふふふふふっ」
芽維たんも皐月たんも、楽しそうに笑っている。
「そうですか、そんなに私の手伝いをしたいというのですね?」
「ええ、白川様、ぜひ、お手伝いさせてくださいませ」
「いいでしょう、そこまで言うのでしたら、この私、白川璃々亜の手足として働かせてあげても良くってよ?」
なんちゃって。
「ぷぅー。璃々亜さん、それ、何ごっこ?」
芽維たんが噴出した。
「ふふふっ。璃々亜様、どうせなら、もう少しふんぞり返った方がらしく見えますわよ」
皐月たんが演技指導してくれて、
「ははー、この相原、誠心誠意璃々亜様にお仕え申し上げまする」
相原さんがノリでごっこを続けてくれた。
こういう冗談が言い合えるのって素敵!
じゃない、ちょっと待って……今、相原さん……。
「璃々亜様?」
白川様じゃなくて、璃々亜様って言ったよね?
「あ、つい……皆につられて璃々亜様と……」
相原さんが両手を口で押える。
「嬉しい!そのまま璃々亜って呼んでね!相良さんも私のことは璃々亜って呼んでくださいませ!」
苗字じゃなくて名前呼び。うん、友達っぽいのです!
「あの、よろしいのでしょうか、り、り、璃々亜様……」
きゃほーっ、恥ずかしそうに私の名前を呼ぶ相良さん。
やだ、かわいい。
私も、相原さんと相良さんじゃなくて、二人とも下の名前で呼びたい!
えっと、何て名前だったっけ?ごめん。知らなくて……。
「二人も下の名前で呼んでもいいかな?」
私の心を呼んだかのように、芽維たん。
「ええ、もちろんですわ。ですが……」
ん?問題あり?
あ、そうか。そうすると、皐月たんだけ苗字呼びになっちゃう!皐月たんの名前、皐月幸子だからね!
ボスだからね!大ボスだからね!さっちゃーん!だからね!
「あ、そうか、相原さんも相良さんも、下の名前「ユリ」だったよね?」
なぬ?
百合だとぉ~!
そ、そ、それは……GLって意味の、アレ?
私はBL専門なので、GL属性は無いけど……。でも「百合さん」って普通の顔して言う自信がない!
あああ、どうしよう!
下の名前で呼び合うって、めちゃ仲良し友達っぽくって理想なのに……。
百合……って言葉の持つ響きが……。
ぐぬぬっ。
「ええ、私が、理由の由に里で由里。相良様が友達の友に利口で友利です」
ふえー、そうだったのか。
相原由里に、相良友利か。
字は違うんだね。字は。
「音が同じだとややこしいね……。下の名前で呼びたいけど、今まで通りの方がいいのかな?」
と芽維たんが言ったので、で、今まで通りになりました。
うん。下の名前で呼び合うって夢はついえたけど、それでも前より少し仲良しさんになれたよね?
ごらんいただきありがとうございます。
ま、白川家の言うことの方が優先されちゃったりするんだけどね。
そんなの屁理屈ですって言われても、大丈夫って皐月たんはそこまで考えてますよ。




