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【書籍化】オタクガール、悪役令嬢に転生する。【web版】  作者: 富士とまと


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第214話 田中くんは気持ちの切り替えが早いらしい

「先輩たちが、白川さんと田中くんの案をパクったんだ!」

 男子生徒の一人がテーブルの上をどんと強く叩いた。

「あれだけダメ出しをしておきながら、ちゃっかり自分たちでやってるなんてずるいです!」

 女子生徒の一人が目じりに涙をためた。

「案をパクった……?」

 そして、早い者勝ちと言わんばかりに、すでに昨日のうちに先生たちに話をしに言っていると……。

 田中くんと顔を見合わせ唖然とする。

 集まった図書委員1年生は悔しくて怒る者、涙する者、強く唇をかみしめて血をにじませている者もいる。

「田中くん……」

 田中くんは?と思って様子を見ていると。

 息を詰めていた。そして、それをふぅっと吐き出すと、笑った。


「こうなってくると、あのプリントに書いた他の案ももう使えないだろうなぁ」

 何で田中くんは笑ってるの?

 悔しくないの?

「真似しなくちゃいけないくらい、先輩たちもアイデアに煮詰まっているっていうことが分かって良かったな。それに、それぞれが似たようなことをして足の引っ張り合いまでしてくれるんだろう?1年生にとってはチャンスが広がったな」

 え?そう?

 そうなの?

 うん、まぁ、確かに、いい案が思い浮かばなかったから真似したっていうのは間違いないよね?

 1年生だって、話し合って結局、田中くんのデモプリントに戻ったわけだし。

「ははは。確かに、田中くんの言う通りかもしれないな。先輩方の無能さが露見しただけといえばそうなるか」

「図書室だよりよりも、いいアイデアがあれば勝てるってことか……。分かりやすいといえば分かりやすいな」

 今まで沈んでいた面々の表情が明るくなった。

 田中くんすごい。

 一緒に悔しがったり怒ったりするのは簡単だ。

 だけど、きっとそれじゃぁ前に進めないし、憎んで恨んでしても、自分が疲れるだけだもん。

 田中くんの気持ちの切り替え方……すごいなぁ。やっぱりあれかな?

 野球とかしてるからかな?

 ピッチャーとか、ホームラン打たれた後落ち込んでると次の打者にも打たれちゃうもんね。

 「気持ちを切り替えて行こう!」って、野球漫画じゃぁ定番の台詞だ。


 よし、やってやるぞ!ってみんなの士気が高まったところで、

「まぁ、なかなか別の案といってもひらめかないかもしれないけどな」

 と、田中くんが再び笑った。

「それを言っちゃぁだめだろう!」

 別の生徒が素早くツッコミを入れ、皆笑った。

「小さな案でも数を重ねたら大きな結果になるかもしれないです……」

 気持ちがリラックスしたことで、皆の口の滑りが良くなった。

「そうですわ。すごい案じゃなくても足し算すれば貢献度も増えますわよね」

「ボランティアといえば……青宇宙文庫では、入力ボランティアを募集してたと思うよ」

「入力ボランティアと言えば、本を点字翻訳するというのもありませんでした?」

「目の不自由な人へ本の朗読をするというボランティアもありましたわよね?」

「本に関係したいろいろな活動、そういった情報をまとめるのも役に立ちそうですわ!」

 うん。うん。

 なるほど。

 意外なことに、出るわ出るわ。

 なんで今まで出てこなかったんだろうね?

 え?

 もっとすごい案を出さないとダメな気がしてた?

 先輩方を前に口を開く勇気がなかった?

 そんなに頑張る気がなかった?

 他の人の話に触発されて思いついた?

「どれもこれも、大したことない活動かもしれませんが、塵も積もれば山となるですわ」

「あー、あんまり手伝えなくて申し訳ない」

「そうですわね。私も、図書委員の活動にあまり時間は当てられませんわ……」

 うん、問題はそこだね。

 ……。塵を山になるくらい集めるにはそれなりの労力がいるわけで。

 1年生10人でできることなんて……。

 あれ?

 人が足りないなら増やせばいいんじゃない?

「そういえば……2年生の先輩は、貢献度が高い人ではなく、貢献度が高い案を出した人と仰っていませんでしたか?」

 口を開くと、私に注目が集まる。

「何も、私たちが実行するところまでは関係ないのではありません?案を出して何をするか決まったら、応援委員に応援を頼みませんか?」

「応援委員!そうですわね!」

「あ、図書関係なら、文芸部にも声を掛けたらどうだ?本に詳しい人間の方がいいんじゃないか?」

「いいですわね。そうしましょう!人がいれば、できることも増やせますよね!」

 予鈴が鳴って、各自出たアイデアに関して情報を収集することから始めようということで話がまとまった。

 芽維たんって応援委員だったよね?

 ふふふ。

 芽維たんと一緒に、何かできるとか、嬉しいなぁー。

 相談しましょうとか言って、休みの日にお茶したり、学校帰りにお茶したりもできるんだよね!きゃはっ。

 そうだ、文芸部には相原さんもいたんじゃない?ってことは、私と芽維たんと相原さんの3人でお茶できるんだ。

 え?あれ?

 違う、えっと、お茶するのが目的じゃなくて、あれ?

 ま、いっか。

 楽しくて、そのうえ人のためにもなるなんて、一石二鳥だよね?

 るんるーん。


お読みいただきありがとうございます。

田中くんのポジションはまだ謎ですが、璃々亜の脳内ではピッチャーが有力候補みたいです。

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