第158話 サザエがダメなんて聞いてないらしい
「実は、チケットのことでは漫画が参考になったから、社会貢献についても漫画に参考になることがないかと思って、明日また漫画が大量に届くんだ。目を通さないといけないから、璃々亜に悪いなと思ってたんだが、予定があるなら別行動で問題ないな。」
「午前と、帰ってから、手伝いますわ!」
力説する私。
漫画ですとぉ!
漫画が大量に届くですとぉ!
また、同じ書店に注文したのだろうか。
だとしたら「バスケの王子様」も混ざっている可能性は高い。社会貢献的な話があった。ライバル校の一人。貧しかった彼が、バスケを続けていくために恩を受けた的な話があったはず。あ、もちろん、こっちの世界じゃ「バスケの玉子様」だから、まったく同じってわけではないだろうけど。
「いや、大丈夫だよ。図書委員としてK3にどうかかわっていくかで、頭がいっぱいだろう?」
って、こんな時だけ気を遣う嘉久。
何と、空気が読めない男なんだ。
そもそも、私の頭はK3のことなんてからっぽだ。
この空っぽの頭に、たっぷりと漫画を詰め込ませてくれ!
いくらでも入るよ!漫画なら、あれだ、空間魔法とかかかってる、マジックアイテム並にどんどん入っていくよ。
違う、ブラックホールかもしれない。
漫画を読んでも読んでも読んでも、頭がいっぱいになることはないのだ。
心がいっぱいになることはあるけどね。
胸がドキドキして、眠れないくらい膨らむの。うふふっ。
「そうだぞ、璃々亜。手伝いなど必要ないよ。テスト勉強もしなければならないだろう?」
くっそ、兄め!
お前も、嘉久動揺、空気の読めない人間に格下げだ!
がおー、がおー、がおー!
恋愛に対しては草食動物でもな、漫画が相手なら肉食、それも相当獰猛な肉食動物に変身する私をなめるな!
がおおおおおーーーーーっ!
「お兄様も嘉久様も、毎日遅くまで生徒会の仕事を頑張っていらっしゃってるんですもの。私、少しでも力になりたいのですわ!」
兄と嘉久の目が、ちょいと見開かれた。
よし、もうひと押し。
「それとも、璃々亜が手伝うのは、お邪魔でしょうか?」
おっと、一人称を名前で言ってしもうた。
ぼふんっ。
どぼんっ。
嘉久が口に入れていた卵焼きを吹き出し、兄が、手に持っていた箸を味噌汁の中に落とした。
あ、やっぱり驚くよね。
突然一人称を自分の名前で言うのとか。
「じゃ、じゃ、じゃ、じゃ、邪魔なわけないだろっ」
何だよ、そのうろたえよう。
逆に、本当は邪魔だと思われてるみたいじゃないか。
……。そ、そりゃ、手伝う気なんて、本当はこれっぽちもなくて、漫画が読みたいだけだけどさっ。
「ありがとう、璃々亜。じゃぁ、無理しない程度に手伝ってもらえるかな?前回のように、役立ちそうな情報箇所に付箋を付けてくれればいいから」
「はいっ!」
元気よくお返事。
わーい。
わーい。
わぁぁぁーーーーい!
明日は一日漫画三昧。
……じゃなかった。
ラーメン食べに行くんだった。
……じゃないな。
田中くんとラーメンを食べながら図書室だよりのデモプリントを作るんだった。
いや、それも違うな。ラーメンを食べながらじゃぁ、プリントが肉の背油だらけになっちゃうよ。……。よし、明日は豚骨だ!
豚骨ラーメン。背油。ニンニクは……帰ってから何を食べたか聞かれても困るので控えよう。
で?なんだっけ?
そうそう、明日は、漫画を読むのに熱中するあまり、ラーメンを食べに行くのを忘れるといけないので、しっかりタイマーを3重にかけておかなければ。
えっと、その1、スマホのアラーム。
その2、兄と嘉久に何時に出掛ける準備を始めると伝える。嘉久はあてにならないが、兄なら「そろそろ準備しなくてもいいのか?」と言ってくれるだろう。
その3、早間さんと蜂川さんに出発時刻を伝えておく。「お車の準備が整いました」と声を掛けてもらうように朝言っておこう。
よし。これだけ、タイマーかけておけば、漫画に熱中しすぎてラーメンを食べに行くのを忘れるなんてことはないよね?
あ、やばい。紙とか筆記用具とか持っていくの忘れそうだわ。
メモしておかなくっちゃ。
豚骨背あ……違う、そんなメモじゃないんだよ!うわー、やばい。本格的に、明日の漫画が楽しみ過ぎて、浮かれすぎて、頭がパニックになってる。
ふわふわして、今、目の前にある食事も喉を通らな……。
「おいしいですわ」
通りました。
はい。
今日のメニューは、玉子焼き。出し巻じゃないですよ。甘めの玉子焼き。味噌汁。具は、大根とわかめと豆腐といたってシンプル。だが、味噌の香りがとても芳醇。シンプルゆえに、香り引き立つという感じで、味噌を楽しめる一品。
メインは、サザエのつぼ焼き。まさか、自宅でサザエを食べる日が来るとは!
テーブルの中央に卓上七輪があり、そこで焼きながら食べます。
うん、まだ焼きあがるまでに少しかかりますね。
その間に、五目御飯をパクり。
うわー、何これ!鶏の出汁使ってる?くどすぎず、かといって、あっさりしすぎてない絶妙な味付け。
さぁ、サザエがぐつぐつしてきました。そろそろ、食べごろかしら?と思って見ていたら、兄がひょいとサザエを取り、パクり。
次に、嘉久が4つ取り、パクり。ちょっと、食べ過ぎでしょ!
全部で6つ乗ってたんだから、一人2つずつでしょ?なんで4つも食べるんだよっ!
仕方がありません。最後の一つを……。
と、思っていたら、兄がひょいっと皿に乗せ、パクり。
え?
あれ?
私のサザエは?
「こんなに美味しいのに、見た目が気持ち悪いって食べない璃々亜は、人生損してるぞ」
もぐもぐ。
本気でおいしそうにサザエを口に運ぶ嘉久。もうすでに3つ目を食べ終えるところだ。
なんだと?
私、サザエが嫌いだったのか!なんてことだ!
芭琉には好き嫌いがないと言うのに!
璃々亜、悪い子!好き嫌いはメッ!
あああ、私の、サーザーエーーーーーッ。
お読みいただきありがとうございます。
璃々亜さん、食事内容に触れないとダメなわけじゃないんですが、さらっと飛ばすと、何だかもやっとしちゃったので、後ろにつけておきました。




