第157話 やましくはないらしい
んぎゃーーーーーっ!
犯人は誰だってなったら、私じゃないか!私がヒロインである芽維たんを剃刀の刃をピアノに仕込んで傷つけた悪役令嬢になるじゃないか!
何それ、怖い!
私はそんなつもりじゃなかったのよーーーーっ!
破滅、破滅ですか?
破滅ですね?
うううっ。分かりました。ピアノを習っていたというのなら、習い事を再開して頑張りますよ……。ぐずっ。ぐずっ。
そういえば、バスケの王子様でもピアノを習っている東先輩が、指を怪我するといけないからと親にバスケを反対される話があったな。
隠れて、東先輩はバスケを続けていたんだけど……。ある日、親にバスケをしているのがばれて、やめなさいと言われる。
それを、京様が「東先輩が、隠れてバスケをしていたのは自分のためじゃないんです!大好きな親に心配を掛けたくないから、だから、隠してたんです!先輩は、バスケもピアノも家族のことも、全部全部大切で捨てられない……。バスケを捨てろと言うのは、大好きな家族を捨てろと言っているのと同じなんです。だから、どうか、バスケをするのを許してあげてくださいっ!」って雨の中土下座する名シーンが。
その後、他のメンバーも全員雨の中土下座だよ。
東先輩の心ズギューンイベントだったな。うむ。
「璃々亜様は、家庭教師よりも優秀なお兄様がいらっしゃいますものね」
皐月たんの言葉に、他の子が頷いた。
「そうですね。生徒会長様がいますもんね」
あ、生徒会長に「様」がついてるよ芽維たん。それ、どういう意味あいが……。
まさか、優秀な頭脳に崇拝するタイプなの、芽維たんっ!
でもね、兄はね、シスコンだし、変なフランス映画マニアなんだよっ!
荷物を片づけ、皆で一緒に昇降口まで歩いていく。
「ごきげんよう」
相原さんと相良さんが仲良く二人で帰っていく。そういえば、いつも朝も一緒みたいだけれど、二人は家も近いのかな?一緒の電車とか?
それとも車?徒歩?
「あ、田中くんっ、お待たせ!」
芽維たんが、田中くんの姿を見つけて駆け寄って行く。
今日も、二人は一緒に帰るんだ……。
「じゃぁ、また月曜日に!」
芽維たんが振り返って、私と皐月たんに手を振った。
「ごきげんよう、芽維さん、田中くん」
二人に私も手を振ると、田中くんと目が合った。
田中くんの口が、声もなく動くのが見える。
何を言ってるんだろう?首をかしげる。そうすると、田中君が、今度は指を日本立てて、そばをすするようなジェスチャーをした。
そして、再び口を動かす。
あっ。
ラーメンって言ってる!
そうだ。明日田中くんとラーメンを食べに行く約束してたんだ!
違った、えっと、K3の見本プリントを作る約束してたんだ。ラーメンはおまけ!
田中くんに、分かりやすいように大きく頷いて、振っている手を一段と大きく左右に振った。
「田中様、何か仰っていたようですけれど、璃々亜様には分かりましたか?」
ぎくっ。
「え、えっと、」
あれ?
何で私、ぎくってなってんの?
K3のために図書委員として、田中くんと計画を話し合うって言えばいいのに……。
それが、口に出せない。
ええ、何で、秘密にしたいとか思ってるの?
……。友達に隠しごとなんて……。
はっ、別に秘密にしたいとか思ってないから!違う、えっと、そう、田中くんがジェスチャーと口パクだけで伝えようとしてたからだ!
声に出して言わなかったから、だから、私も、内緒にしないとダメなのかって気分になっただけで。隠す必要なんてないんだからね?
やましいことなんて何にもないんだよっ。
だって、K3のために、頑張ろうって話なんだもんっ。
「田中様、何か食べるようなしぐさをしていらっしゃいましたが……」
はうっ。
ラーメン!
我が愛しのジャンクフードラーメン!
白川家のお嬢様がずずずっとラーメンに浮かれまくるなんて……。や、やばい!
田中くんは、だからわざわざ内緒にしてくれたのか。そうですね。お嬢様がずずずっとラーメンすするなんて……。
や、やましくなんか……
やましくなんかなくもないこともないかんじもしなくも……。
「お腹が空いたとか、おっしゃりたかったのでは?運動部ですから……」
は、ははは、はは。
「ああ、なるほど、そうかもしれませんわね」
ほっ。
何とか誤魔化せたようです。
や、やましくなんかないんだからね!
夕飯の時間となりました。
「璃々亜、明日なんだが、」
やっ、やましくない!だから堂々と宣言してやるんだ!
「明日は、昼から図書委員の方と一緒にK3の資料を作るお約束をしていますが、何か?」
と、言う私に、嘉久が爆弾発言をした。
いつもありがとうございます。
明日はエイプリルフールですが、通常営業です。




